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ON THE STREET BURGER
VOL.006
決戦の舞台に至福の逸品~ I-Kousya [東京・水道橋]
決戦の舞台に至福の逸品~ I-Kousya [東京・水道橋]

日本人が作る都内最高のハンバーガー、
そのひとつに私はよくこの店の名を挙げている。
"アイコウシャ"――今年で創業10年の名店だ。

白山通りのジムニー

ヤクルト・バレンティン選手のシーズン最多本塁打記録、楽天・田中"マー君"の連勝記録と、記録尽くめのプロ野球2013シーズン。長嶋・松井両氏の国民栄誉賞受賞もあった。


そして秋10月、いよいよその頂点を決する戦いが始まる。クライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズに出場するのは果たしてどのチームか。そして日本一に輝くのは――。

愛光舎牛乳店

上から青山通り、白山通り、やがてビルの間に覗く白いドーム屋根

そんな熱戦の舞台となる東京ドームのそば、水道橋の駅から歩いてすぐの所に「I-kousya(アイコウシャ)」という、変わった名前のハンバーガーショップがある。


ハンバーガー屋なのに日本語の店名。古書店街の並びにあるだけに、かつて古本屋か出版社だった跡だろうかなどと、最初私はそんな風に思っていた。だが違う――「愛光舎」とは、明治時代より同地にあった「牛乳屋」の屋号なのだ。その愛光舎牛乳店を店主・松橋さんのひいおじいさんが経営していたのである。


白山(はくさん)通りの彼方、秋晴れの明るい空をバックに、見てすぐそれと判るアトラクション群がそそり立っている。神田川を渡れば東京ドーム。そしてそれを取り巻く東京ドームシティ――ここは都内でも有数の行楽スポットだ。駅前徒歩3分。個人が店を出すのは今や不可能なほどの好立地であるまさにこの地・この場所に、明治の昔、牛舎があった。つまり「牧場」である。


やがて牧場は巣鴨に移り、板橋の石神井(しゃくじい)の辺りに移って落ち着いたが、曽祖父より下って三代、松橋さんのお父さんの代まで牛乳店は神田三崎町に変わらず続いた。だからこの界隈で中央線脇のこの角地は牛乳屋の在った場所として今でも通じるという。


そして四代を経て今の松橋さんは、その同じ角地でハンバーガー屋を始めた――売り物が「牛乳」から「牛肉」へと変わったワケだ。


コンプリートカーTS7、通称「ハンバーガー号」を停めて撮影したのは「壱岐坂下(いきざかした)」という交差点の付近。街路樹プラタナスのはるか上に「LaQua(ラクーア)」の大観覧車「ビッグ・オー」とその中心を潜(くぐ)り抜けるジェットコースター「サンダードルフィン」の軌道が望まれる(参考PDF)。


訪ねたこの日は国内人気アーティストの公演がドームであり、まだ日の高いうちからグッズで飾ったファンたちが街に溢れていた。店の近所には高校・大学・専門学校などが数多く、昼日中、大勢の人が忙(せわ)しげに行き来している。その様子が、スピードが、いかにも都会的に映った。

従兄弟の助言

アーリーアメリカン調のウッディな店内

店名ひとつとっても予期せぬ情報がこんなにも湧き出てくる、それがアイコウシャである。この店に関しては逐一こんな感じであると思っていただけたらよい。それは特に商品、ハンバーガーそのものについて顕著だ。


なにしろ一筋縄ではゆかない。まず想像したものは出て来ない。どのバーガーを頼んでも思いも寄らぬ手間や工夫が何かしら施されているのだ。そしてそれは常にこちらの予想と期待を上回る。はるかに超えてくる。

愛光舎牛乳店に関する資料

それについて松橋さんは、「自分で考えて作ってるんで」と返す。つまり、以前働いていた「どこそこの店の味」や「作り方」に倣うことなく、まず初めに「こういうのがあったらおいしそうだ」というスケッチなり、"パース"なりを頭に描いてから作り始める――ということなのである。それがために世間一般がイメージするハンバーガーとは常に少しずつ違ったものが出来てくるワケだ。


しかも幸いなことに、松橋さんにはアメリカはアラバマ州に住む(または住んでいた)叔父・叔母や従兄弟からの助言があった。


特に従兄弟からはアメリカでは普通こうする・こうしない、マヨネーズを塗る・塗らない、豆はどう煮るなど、一般的なアメリカ料理についてこと細かに教わった。そのことが基本にしっかりと根差した王道的なおいしさをアイコウシャのハンバーガーに与え、かつ、本場アメリカ的な醍醐味を与えたのである。

ポテトチップスも自家製

ベーコンは外国人も認めるクリスピーな焼き加減

パティの肉は豪州産。小型のミンサー(肉挽機)を使い、店主自ら毎日挽いている。サイドのポテトチップス、これも自家製。作るのに2日も掛かる。全然楽ではない。


ガーリックバーガー、G.M.マッシュルームバーガー、ブルーチーズバーガーなど、松橋さんの独創と技術が光る傑作が数ある中で、今回は敢えてベーシックに「ベーコンチーズバーガー」を選んだ。パティLARGEサイズ150g、1,364円。REGULARサイズ100gは1,154円。バーガー全体のバランスから、私はラージを強く推す。


パティ表面にはグリルで付いた十字のコゲ跡。その上からガッツリと粗挽きのペッパー。舌先にザラリと当たる挽肉の"粒感"とやわらかな噛み応え。その後からチーズのクリーミーなミルク感が舐めるように襲う。

平日午後2時、忙(せわ)しなく人の行き交う店の前で

ご覧の通り、ベーコンは延べ板のようにカッチカチに焼いてある。外国人も認めるクリスピーな焼き加減。ここまで焼き込んだベーコンバーガーがおいしいのは経験上"稀"なことだ。今年で創業10年。高い技術を誇る、紛れも無き都内屈指の名店である。


§§


そんな次第で、2013年の頂点を決する戦いの前に是非都内最高峰のハンバーガーを。もちろん試合前から「祝杯」を挙げていただいて大いに結構! 東京ドームで開催予定のセリーグ・クライマックスシリーズ ファイナルステージは10月16日(水)から。順当に巨人が勝ち進めば、東京ドームでの日本シリーズ初戦は10月29日(火)。 さぁ、どうなる!!   ※なお10月19日(土)は休業とのこと

< 文:松原好秀 写真:松原好秀、GAO NISHIKAWA >

I-Kousya [東京・水道橋]

― shop data ―
所在地: 東京都千代田区三崎町1-4-8
アクセス: JR水道橋駅歩3分
駐車場: 付近にパーキングメーターあり
TEL: 03-3291-4102
オープン: 2003年4月22日
* 営業時間 *
月~金: 11:30~15:00(14:30LO), 17:00~21:30(21:00LO)
土曜日: 11:30~18:00(17:30LO)
定休日: 日曜・祝日(※要確認。10月19日土曜日は休業)

神保町の古書店街の続き、水道橋の駅から徒歩3分の好立地
通りのにぎわいをよそに店内は落着いた造り
木のフロアに赤いギンガムチェックのテーブルクロス。壁には「LIFE」誌のバックナンバーが掛かる
玩具・遊具が至って無造作に並べられている
消火器も
大観覧車「Big O」のアップ。ビッグ・オーは世界初のセンターレス観覧車。中心軸が無く、リングの周りをゴンドラが動く仕組み
楽しかった一日も終わり……
さぁ2013年今年の日本シリーズ、戦うのは果たしてどのチームか――
コゲ跡が十字に付いた直火焼きパティ。上からガッツリ粗挽きペッパー。こうくれば飲み物は最早ビール一択
レギュラーパティを2枚重ねて「ダブル」もオススメ
職人肌な店主松橋さん
白山通りで、LaQuaとジムニーと