東京という場所には、実に不思議なスポットが存在している。
日常では見落としがちな場所、別に知らなくてもいい場所だからこそ
暇にまかせて探検してみることにした。
後半も探検隊厳選の
ユルユルスポットが目白押しだ!
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合羽橋ってご存じだろうか。関東の人なら大抵知っていると思うが、調理器具の問屋が建ち並ぶ不思議なエリアだ。五右衛門風呂みたいな寸胴鍋やらサンプル食品やら、普段お目にかからないクッキングアイテムを見ることができる。
さて合羽橋は読んで字のごとく雨具の合羽と書くのだが、至る所に河童のモニュメントが設置されている。雨ガッパなのか、それとも頭に皿のカッパなのか? この辺にはこんな伝承が残されているらしい。ちょっとややこしいので、整理しながら読んでいただきたい。
この近辺は湿地帯ですごく水はけの悪い場所であった。そのため、度々水害に見舞われた。この地で合羽を商っていた合羽屋川太郎(喜八)は、私財を投げ打って住民のために堀割を作ることにした。そうしたところ、前に合羽屋川太郎が隅田川で助けたカッパが仲間を引き連れて土木工事を助けた…。
という風に、合羽橋住民のために立ち上がったのはカッパ屋さんであり、手伝ってくれたのはカッパさんだったというわけ。今は無くなってしまったが、この近辺にはその時作った新堀川という堀割があって、かつては合羽橋という橋がかかっていた。それが地名の由来となっている。
さてここまでは前段で、何とこの治水工事を手伝ってくれたカッパのミイラが残っているというのである。場所は合羽橋商店街の外れにある曹源寺。ここにかっぱ大明神を祀った「かっぱ寺」がある。曹源寺は合羽屋川太郎の菩提寺ででもあり、かっぱ寺の脇に川太郎の墓石と言われる石も残されている。
境内に入ると、いきなり「カッパのギーちゃん」なる不気味な置物を発見。キュウリに顔を付けたようなカッパで、これが工事を手伝いに来たらどん引きだ。さらにかっぱ寺のお堂前には石のカッパが並んでいる。どれにもキュウリがお供えしてあり、やっぱりカッパにはキュウリなんだ…と再確認。
お堂のお賽銭箱にまでキュウリが入れてあるので、この境内では「キュウリ本位制」らしい。さて問題のミイラだが、お堂の中の左手にある戸棚の上に置いてある。腕の先のようだ。ガラス越しで写真が上手く撮れなかったのでコチラのサイトの写真をご覧いただきたい。
どこまでが手の平なのかよく分からなかったが、それにして指ながっ! 信じるか信じないかは貴方次第…だが、この辺では工事を手伝ったカッパを見たら商売繁盛すると言い伝えられていたようで、このカッパのミイラがそのカッパだったらとしたらラッキーが訪れるかもしれない。
ちなみにミイラは事前にお寺に予約をすると見せてくれるらしいので、よく見て御利益を受けたいという方はコチラにご連絡を。
皆さんは同潤会アパートメントをご存じだろうか? かつては表参道や代官山にもあり、ちょっとエッジーなスポットとしてマニアのハートをゲットしていた。同潤会は関東大震災の後、復興支援のために設けられた団体で、今で言う住宅供給公社のような組織だ。震災で家を失った人々のために、大正末期から昭和初期にかけて集合住宅を都内に建設した。
かっぱ寺からジムニーで5分くらいの所にある同潤会上野下アパートメント(東京都台東区上野5-4)も、その中のひとつだ。昭和4年に竣工しているから、すでに84歳のご長寿だ。かつては都内に16か所あった同潤会アパートメントも老朽化で次々と建て替えられ、現在ではこの上野下アパートメントが最後の同潤会アパートメントとなっている。その上野下アパートメントも、今年の8月から解体工事が始まることになっている。
この辺りは比較的古い建物が残っているのだが、そんな街の風景の中でもひときわオーラを放っている。まるで宮崎駿の映画に出てきそうな佇まいだ。よく見ると、立方体が複雑に絡み合ってできている凝った造りで、今だからこそとても斬新なデザインになっている。
よく見ると、1階分の天高が現在では考えられないほど低い。残念ながら中を見ることはできないが、さぞコンパクトな居住空間なんだろう。4階の一部分は他の階よりも若干広めになっているようで、現在で言う最上階ペントハウス的な位置づけなのだろうか。
外から階段入口を眺めていると相当傷んでいることが分かるが、何とか保存して後世に残すことは難しいのだろうか。耐震強度不足の問題などもあるのだろうが、日本はこうした文化財的な建築物をどんどん無くしてしまうのは実に残念なことだ。
建築に興味のある方や廃墟マニアなら、壊される前に一度はご覧いただきたい。ちなみに、向かいには棟割長屋の一部が残っており、こちらも昔の日本の住宅を知るのに貴重な文化財だ。
次にご紹介するスポットは、まさに暇人のための娯楽の殿堂だ。板橋本町の住宅地の中にある「駄菓子屋ゲーム博物館・ゴン太村」は、その名の通り、昔駄菓子の店先にあった10円ゲームを集めた私設博物館。10円を弾いてゴールを目指す、いわゆる「新幹線ゲーム」をはじめ、電子ルーレット系のものなど多種多様な駄菓子屋ゲームが揃っているのだ。
昭和30年代、40年代生まれのオジサンたちならば、誰でも一度はやった経験があるはず。駄菓子と引き替えられるコインやチケットが出てくれば天国だが、はまると全財産を失う恐怖の子どもギャンブル系マシンだった。ウチの近所のパン屋にはまだ新幹線ゲームが奇跡的に残っているが、昨今ではなかなかお目にかかることがなくなった。
この博物館のすごい所は、ゲームの在庫数はもちろんのこと、各ゲームが完全な形にレストアされて遊べることだ。どれも、最近造られたとしか思えないコンディションで並べられているのが、ちょっと嬉しい。
早速、100円を10円に両替して新幹線ゲームで遊び始めたが、昔だったら絶妙なバネ裁きでクリアできた「福山駅」から「三原駅」が、すっかり鈍ってしまった大人の手ではどうしてもクリアできない。下手うつと「新神戸駅」の穴に10円が何枚も吸い込まれ、段々イライラしてきた。
昔だったら、50円をぶち込んだあたりから泣きそうになったものだが、大人の経済力はビクともしない。まだ50円も残ってるよ…などと、すっかり汚れた心が駄菓子屋ゲームの面白さを半減させてしまっている。
さすがにこの歳になると100円もつぎ込むと飽きてきたので、お約束のラーメン系駄菓子とメロンソーダを購入。これが懐かしい味なのだが、子どもって味覚障害かって思うくらいに味が濃い。こういうのが昔は美味しかったのだから戦慄する。
40代後半のおっさんが二人で店内をウロウロするのは少々はばかられたが、忘れていた懐かしい感覚が取り戻せてかなり新鮮な経験だった。お子さんがいるなら、ファミリーで訪れても楽しいスポットだと思う。
さて動物好きのジムニーオーナーの皆さん、お待たせ! お次は“きゃわわ系”ユルユルスポットの登場だよ。場所は町田市とちょっと都心から離れているが、どうせ暇なんだからドライブがてら出かけてみよう。目的地は町田リス園。ここは町田市立の齧歯類専門の動物園だ。
関東近郊の動物園にはいろいろと行ったが、ここのユルユルぶりも相当なものだ。何せリスだけで売っているテーマパークなど、他に類を見ない。しかもリスと遊べるというのだから、ライオネスコーヒーキャンディのお姉さんもびっくりだ。
中央道国立府中ICから20分くらい、小野小町が生まれたとされる町田市小野路の近くにリス園はある。門構えはなかなか立派なもので、否が応にも期待が膨らむ。入園料は大人400円と、まあ失敗しても諦めが付く価格設定になっている。
ゲートを入るといきなりリスの入ったケージがあり、奥にはウサギやモルモットと触れ合う広場がある。思った以上に狭いので“うわ、これは外したかな”と思ったのだが、メーンイベントのリスの放し飼い広場は、ここからさらに二重の扉をくぐるのだ。
中に入ると2500㎡の広大な敷地があり、そこに大小の樹木を組んでリスの住み家が作られている。ここに生息しているのは、世間ですっかり害獣となっているタイワンリス。鎌倉の寺院とか食べちゃう種類だ。
1袋100円で餌のヒマワリの種を買い、まるで九龍城のようになったリスの住み家をぶらついていると、食欲に駆られたタイワンリスが側に寄ってくる。日本固有のシマリスとは違い、ちょっとボブ・サップ系の見た目が怖いタイワンリスだが、自分の手から餌を食べてくれるとさすがに情が移る。
お腹がいっぱいになるとさっさといなくなるのはキャバ嬢のごとくだが、次から次へタイワンリスはやって来るのでちょっとしたモテ期を味わえる。幸運だと警戒心の強いシマリスがやって来るので、その場合は壇蜜が遊びに来たと思って幸せを噛みしめよう。
この町田リス園にはリスの他、超肥満のプレーリードックやとってもハングリーなモルモット、腹に一物ありそうなウサギなど、かなりプリティな仲間たちが勢揃いしている。開園時に行くとみんな腹を空かせているので、とんでもなく楽しい思いができるはず。
同潤会上野下アパートメント
東京都台東区上野5-4