今回のジム探は、約2万年前にできたという江の島を探検中。
"江の島の原宿"である江島神社参道を過ぎ、いよいよエスカーに搭乗する。
洞窟、ロマンス、グルメ、船旅とアクティビティ満載の第二ステージが始まる!
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片瀬江ノ島駅風デザインの乗り場から中に入ると、そこに待っているのはエスカレーター。別に「エスカー」という小洒落た名前にする必要はないと思うが、やはり営業する江ノ電も体裁を整えたかったのだろう。
江の島の頂上には3つのルートで登ることが可能で、うち2つは徒歩で行けるルート。エスカーと並行して伸びている参道は、かなりきつい山道で運動不足の方は素直にエスカーに乗ったほうがいい。エスカーに乗ると、辺津宮、中津宮に行くのもあっと言う間だ。徒歩だと20分かかる行程を、わずか4分で登ることができる。
辺津宮や中津宮には恋愛に御利益のある神様やお金持ちになれる神様など、読者諸兄の煩悩に応えていただけそうな多種多様な神様がいるので、どんどんお願いしてみよう。
エスカーは見た目は古いエスカレーターだが、江の島の環境を壊さないために配慮された最善の交通手段だったんだとか。中は何かタイムトンネルみたいで、それなりに趣がある。まあ、エスカーに乗らない部分で難所があるので、歩き慣れていない人は素直に乗ったほうがいい。
さてエスカーを降りると、すぐにサミエル・コッキング苑がある。サミエル・コッキングとは幕末から大正を生きた英国の貿易商で、雑貨や骨董品、植物などを商っていた。日本人女性と結婚し、その妻名義で江の島の一等地に土地を買い、別荘を建てたのがサミエル・コッキング苑の場所だ。
植物を商っていただけあって、その別荘には当時日本最大と言われた温室を持つ庭園があった。レンガで作られた温室はいまも施設内に遺構として残り、庭園に特別な趣を与えている。
四季折々に花が咲き、何だか浜松のフラワーパークにでも来たような気分だ。ちなみに冬には園内でライトアップが開催され、なかなかのものだ。
ここのシンボルは「シーキャンドル」という愛称が付いた江の島展望灯台。その名の通り、ロウソク形の建築は観光目的だけでなく灯台として機能している。2004年にはグッドデザイン賞を受賞した。
有料で(パスポートなら込み)展望台に登ることができ、天気のいい日には大島や富士山を望むことができる。一番上の展望台はオープンエアなので、とても気持ちがいい。太平洋側を向くと、まるで海に包まれているような気分になってくる。絶海の孤島の灯台守り気分だって味わえる。
隊長と僕が訪れた時、高所恐怖症で大騒ぎしているオバハンがいたが、そういう人は下でお茶でもしていよう。園内にある「ロンカフェ」は、フレンチトーストが有名なカフェ。藤沢側が一望できるオープンカフェは、天気のいい日なら絶好の休憩スポット。ハンドルを握らない人向けにアルコールの用意もある。
サミエル・コッキング苑から先は、地形に沿って階段を上り下りするコースになる。途中、映画「男はつらいよ」のロケ地となった中村屋本店の前を通る。たしかに、島内でここだけ雰囲気が下町っぽくて、なんだか柴又界隈を歩いているようだ。
中村本店は海苔羊羹が銘菓だが、この羊羹よりも饅頭のほうがうまいと個人的には思っている。店頭のショーケース内に飾ってる昔の江の島ミスコンの写真が面白いので通ったらチェックしてみよう。
江島神社の奥津宮を過ぎたら、左側の階段を登り、森の中に入っていこう。相模湾を一望できる丘があり、恋人の鐘なるベタな観光スポットがある。江の島には五頭の悪い龍がいたのだが、島の天女に恋い焦がれて改心したという伝説が残る。その伝説に沿って、鐘を作ったようだ。他の土地の鐘同様、金網にはカップルの名前が書いた南京錠が無数に付けられている。
隊長に「じゃあ、ここで記念撮影でもしますか?」と言ったら、「読者にホモだと勘違いされるのでやめておきましょう」という返事。まあ、それは確かに困るので鐘の写真だけ撮っておいた。
この辺はなんだか伊豆七島のような植生で、南国の雰囲気いっぱいだ。橋一つ分しか陸地と離れていないのだが、陸地と気温1℃も違う海洋性の気候なんだとか。
元のルートに戻ると、元旅館だったレストランや飲食店が建ち並ぶ。僕のお気に入りは「魚見邸」という食堂で、料理は大したことがないが、ここのベランダ席はロケーションが最高だ。絶壁に建てられた建物のベランダだから、まるで宙に浮いているようだ。海を眺めながら、ノンアルコールビールでもあおれば、気分はアマルフィーのホテルカフェだ。
散策ルートは稚児ヶ淵で海岸に出る。広い磯が広がる稚児ヶ淵だが、関東大震災以前は絶壁の場所だった。ちなみに稚児ヶ淵と名が付いたのにはエピソードがある。建長寺の自休和尚に見初められた稚児の白菊は、断り切れずにここから身を投げて自害した。その後、和尚も身を投げて死んだという。
稚児とは剃髪前の少年僧のことで、女人禁制の寺院では男色の対照となった。現代なら信じられない話だが、男色や衆道は江戸時代まで一般的な恋愛観であり、武士や僧職には多かった。とんだ変態坊主の由来でこんな名前が残っているのだ。
由来はともかくとして、磯は非常に美しい。これから向かう岩屋に行くにつれ対岸の街が見えなくなり、ここはどこの孤島だ…という雰囲気になってくる。これからの季節、ひがな一日を過ごすにはいい場所だ。
江の島岩屋は江の島信仰のルーツとなった場所だ。自然浸食でできたこの洞窟で、多くの宗教家たちが修行した。何せ6世紀から知られていて、時の天皇が神社造営を命じてしまうくらいなのだから、相当霊験あらたかな場所なのだろう。
凡人度充填120%の僕には「こんな暗い場所で修行して何が得られるんだ?」と思ってしまうが、何せ弘法大師や日蓮まで修行したというのだから、僕でも1週間いれば10円玉の表裏が当てられるくらいにはなるかもしれない。
中は平成5年の整備ですっかりきれいになっており、ハイヒールの女性でも歩けるくらいだ。岩屋は2ステージに分かれており、途中でロウソクを渡されて歩くという雰囲気満点の演出もある。
洞窟の一番奥には樹脂で作った安手の龍がいて、なぜかそこにいるお姉さんに「龍に手を近づけるとメッセージが出ま〜す」と言われ、強制的に手を近づけさせられる。『他力本願はやめろ』と言われたので、ごもっともと思い龍にお礼を言って去った。
出口ではなぜかパワーストーンを無料でもらえた(期間限定)。健康運やら家族運やらがアップする4種類の石がもらえるのだが、隊長も僕も迷わず金運アップの石を手に取ったところに二人の業の深さが窺える。
岩屋を出て磯を歩いて行くと、「べんてん丸」の乗り場がある。400円で乗れる渡し船で、弁天橋の中頃の船着き場まで行ってくれる。5分もかからないクルーズだが、船にちょっと乗るだけでもアイランド気分に浸れるはずだ。
べんてん丸は漁船を改造したような小さな船だが、海から江の島を眺めることができるのはちょっと楽しい。隊長と小林旭を気取りながら数分のクルーズを楽しみ、弁天橋に戻った。
ここから参道までは徒歩で2〜3分。そして参道入り口には「江の島アイランドスパ」がある。ここは天然溫泉、プール、そしてスパがあるレジャー施設で、2650円で一日楽しむことができる。島内を歩いた後、ここでひとっ風呂というのも江の島満喫度アップさせるはず。
というわけで、今回は近くてお手軽なのに疑似リゾート気分がいっぱいの江の島を探検してみた。また江の島未体験という方は、一度騙されたと思って行ってみてほしい。コンパクトなエリアの中にいろいろなシチュエーションがぎゅっと詰まっていて、いい大人でも気分が上がるスポットだ。「灯台もと暗し」とは、まさにこの場所のこと。きれいにまとまったところで、次回もお楽しみに。