今回のジム探は、世界遺産登録が決定的になった富士山周辺を探検。
その山麓には観光地が数あるが、その中でもマニアックな場所を紹介しよう。
あいにく富士山は雲に隠れているが、新緑の頃の山麓は緑が眩しい。
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吉田うどんを堪能したところで、ジムニーを西湖方面に走らせる。国道139号線を西に向かって走ると、途中の国道沿いに「道の駅なるさわ」がある。時間がある人はちょっと立ち寄ってみよう。実は、ここは何かとオトクなスポットなのだ。
富士山と言えばパナジウム天然水が思いつくと思うが、スーパーなどで買っても結構な値段だ。そのパナジウム天然水が、なんとここでは酌み放題。施設内にある「不尽の水」は、富士山から湧き出た地下水で、パナジウムを豊富に含んでいるという。飲用に適すように調整してあるので安心して飲める。
また敷地内に併設されている「なるさわ富士山博物館」では、富士山の成り立ちやその周辺の地質などが面白く学ぶことができる。入館無料なのだが、タダとは思えない展示内容だ。時間のある方は立ち寄ってみては。
ここから西湖までは10分程度。緑が眩しい樹海に入ると国道脇には「東海自然歩道」なる道がある。東京都八王子市から大阪府箕面市まで続く総延長1697kmの壮大な遊歩道なのだが、実はこの一部が武田信玄の「棒道」と重なっている。ちょうど鳴沢村あたりだ。棒道とは武田信玄が自分の領地内に築いた軍道で、隣国に軍をすぐ移動させられるように整備した。国道から見える部分もあるチェックしてみてほしい。
さて、次の目的地は「いやしの里根場(ねんば)」。西湖湖畔の根場という地域に作られた、かやぶき住宅のテーマパークだ。根場地区にはかつて「かぶと造り」のかやぶき住宅が立ち並んでいたが、1966年の台風による土石流で多数の死者を出して壊滅。住民は西湖の対岸に集団移住した。2003年の市町村合併で復元しようということになり、現在は20棟のかぶと造りのかやぶきが軒を連ねている。
復元だから歴史はないものの、さすが20棟もあると壮観だ。まるで「七人の侍」の村にでも来た気になる。かやぶきの建物の中は1軒1軒テーマ館のようになっていて、民俗文化を体験できるようになっている。僕が訪れた時は外国人観光客が多くて、インド人らしいおじさんが甲冑を着て大喜びしていた。
施設内はのんびりとした空気感に溢れていて、かつての日本人が互いに肩を寄せ合い、自然と共生していたことがよく分かる。都会の暮らしに疲れてしまったら、きっと癒やされるスポットだと思う。
富士吉田から富士宮までの富士山麓の魅力は、その形式が様々に変わるということだ。湖畔あり、樹海あり、そして荒涼としてススキの野原あり。ドライブをして楽しい道は多いが、この国道139号線はまさにそういうルートだ。
西湖を過ぎると、精進湖を挟んで本栖湖が現れる。湖畔にはいいキャンプスポットがあり、非常に静かな湖だが、ここにも隠れスポットがある。まずは皆さん、お財布を出してほしい。おそらく1000円札が入っていると思う。リッチな方は5000円でもいい。そこに富士山が描かれているはずだ。ないという人は子ども銀行券。
この富士山は、実は本栖湖から観たもの。昭和の写真家・武田紅陽が本栖湖畔で撮った「湖畔の春」という写真がベースになっている図柄なのだ。国道139号から国道300号に入り、中ノ倉トンネル手前を左折してしばらく走ると、ドライブインが見える。この前が撮影ポイント。お断りしておいた通り、今回富士山は心眼でしか見えないので、どう見えるかは巻末ギャラリーを参照してほしい。
本栖湖を過ぎると、景色は一気に広がる。この辺りはかつて上九一色村と呼ばれ、カルト教団事件で有名になった地域だ。もともとは九一色衆と呼ばれる武士団が住み、大東亜戦争後には満州から引き上げてきた富士ヶ嶺開拓団が入植した。酪農が中心の田園地帯で、その景色は北海道を彷彿とさせる。国道に並行して走る農道を走っていると、ここが富士山麓だということを忘れる。
139号線が富士宮市に入ると、すぐに「朝霧アリーナ」という看板が見える。看板先を左に入ってみよう。朝霧アリーナは、4年に一度行われるボーイスカウトの全国大会「日本ジャンボリー」のために造られた施設で、1970年にここで大会が開催された。緩やかな丘陵地形を利用して造られた劇場型のキャンプ場で、ジャンボリーの時は日本中からボーイスカウトが集まり、ここに無数のツエルトを張ったらしい。さぞ壮観だったにちがいない。
普段は一般にも開放されていて、裸火さえ使わなければ煮炊きもできる。宿泊はできないが、駐車場にはトイレや水道があって、車中泊は許可されている。泊まらずとも、天気のいい日のデイキャンプやピクニックには最適の場所だ。ちなみに、この場所は数々の4WDのカタログやCM撮影に使われた場所。139号線から朝霧アリーナに続く直線道路もCMで多く使われるロケーションで、ここの道もまるで北海道のようだ。かくいう僕も、このふたつの場所は撮影で散々お世話になっている。
アリーナでのんびりと昼寝をしようと算段していたが、行ってみるとラジコン飛行機を飛ばしている集団がいて、蚊柱に頭を突っ込んだような状況になっていた。しばらく写真を撮った後、早々に次の目的地に向かうことに。ちなみにここも富士山を眺めるのに適した場所なので、皆さんが訪れる時は晴天のラッキーが訪れることをお祈りしてます。
国道139号線の終点は富士宮市。その市名の由来になっているのが、富士山本宮浅間神社だ。その名の通り、日本全国にある浅間神社の本宮がここ。祭神は船津浅間神社と同じコノハナノサクヤヒメで、富士山をご神体としている。
この地域には古事記などにも書かれているように、昔から人が住んでいた。だが、荒ぶる神であった富士山の噴火が度々人々を悩ませ、時として大災害となっていた。第11代垂仁天皇はそれを憂い、紀元前27年にこの神社を創建したの起源だという。当時の為政者というのは立派で、災害があると民を守ろうと対策を施してくれていたわけだ。今の政府に少しは見習ってみらいたいものだ。
長い参道を通り境内に入ると、その社の立派さに驚く。拝殿の後ろにひときわ高くそびえ立つ本殿は、まるで古代の出雲大社の造りのようだ。この社殿は徳川家康が寄進したという由緒のある建築物。こんな神社見たことがない…と思っていたら、浅間造りという二重楼閣は他にはないそうだ。
朱塗りの社殿は、いかにも御神徳が高そうだ。参拝しようとしたら財布をジムニーに忘れてきたことに気づいて愕然としたが、とりあえず“無料”で拝んでおいた。
社の右手から出ると、すぐに美しい水をたたえた湧玉池がある。湧玉池の水は富士山の雪解け水が何層もの地層で磨かれて湧き出したもので、透明度がおそろしく高い。池自体が特別天然記念物になっているという。
その水を柄杓で飲める場所があったので早速口に含んでみると、何とも言えない甘さがあるいい水だ。本当は汲んで帰り、煮沸してから飲んだほうがいいらしいが。
湧玉池の水は御手洗川に流れ込み、それが市内へと入る。この御手洗川のせせらぎが、何とも風情があっていい。この神社は、おそらく相当なパワースポットなんだと思う。グルッと境内を一周したところで、向かいに「富士宮焼きそば」の看板が目に入った。やはり花より団子か。
というわけで、今回は富士山周辺のおすすめスポットを紹介してきた。昨今では噴火の噂も出ている富士山だが、その美しい姿を残しているうちに、皆さんもぜひ訪れてみてほしい。
さて、お届けしている日本再発見ジムニー探検隊、皆さんのお陰様で1周年を迎えることができました! 次回は第二クールに突入しますが、新しい切り口も考えております。「日本って楽しい!」と思っていただける場所をこれからも探検して参りますので、今後もご愛読をよろしくお願いいたします!