ちょっとマニアックな鉄道スポットを求めて、探検隊はさらに西へ。
東京の西方は、実は鉄道に関係のある場所が多い。
充実スポット、行ったらびっくりスポットを織り交ぜて
後半もちょっと"鉄"な場所をご紹介していこう。
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次にご紹介する「京王れーるランド」は、今年10月10日にリニューアルオープンしたばかりの、関東で最もホットな鉄道スポットだ。京王電鉄開業100周年を記念して造られた。
京王電鉄は「日本電気鉄道」という名前で1905年に発足したが、実際に鉄道を有したのは1912年だった。1910年に社名を「京王電気軌道」と改名するが、東京と八王子を結ぶ路線を予定していたため「京王」となった。意外と知られていないが、京王電鉄は戦前に小田原急行電鉄(小田急)とともに、東京急行電鉄(東急)傘下だったこともある。
営業路線が他の私鉄と比べると短いため、駅舎の建て直しや高架化などをいち早く終えて運賃を値下げした、実に良心的な私鉄だ。実は長年京王井の頭線沿線に住んでいたため、どうしても京王線をひいき目に見てしまう。
さて京王れーるランドに話は戻るが、当日は台風接近中の天候ということだったので“これは人がいなくてゆっくり遊べるぞ”と踏んでいたのだが…。何と地元の小学校が運動会の振り替え休日ということで、館内はチビッコの嵐。とてもじゃないが、写真を撮れる状態ではなかったので、公式HPからの写真をお借りして紹介したいと思う。
展示物は以前にジム探でご紹介した「東武博物館」に似ており、実物の車両をはじめ、運転シミュレーターや鉄道模型運転コーナーなどがある。かなりユニークだったのは車掌体験ができるコーナーで、実際の車両の一部を改造してドアの開け閉めができるというもの。電車を運転するという夢と同じくらい、電車のドアを開け閉めするという行為はマニアの憧れだ。チビッコなんて開けたり閉めたりをせわしく繰り返して、ドアが悲鳴を上げている。
展示の花形は運転シミュレーターだが、これは2タイプある。ひとつは6000系クハの先頭部を使ったもので、実際の電車を運転している気分に浸れる。こちらは300円が必要だ。無料でできる小型シミュレーターは、実際に運転士が使っているというというATC作動のソフトを使う。
どちらかという子供向けな展示なのと、京王線は特急専用車両を持たないのでその展示がないことは少々不満が残るが、250円で楽しめる内容としては申し分ない。もうちょっと頑張って東武博物館レベルになると、リピートしたくなる博物館になるはずだ。
昭和41年生まれの僕にとって、新幹線は自分と共に時を重ねてきたもののひとつだ。僕ら世代にとって新幹線と言えば、それは0系にほかならない。あの丸くて愛嬌のあるフォルムこそが、新幹線の永遠のアイコンだ。
最後の0系が山陽新幹線から引退したのは2008年12月だから随分久しいが、日本全国に保存されている0系新幹線は数えるほどしかない。日本経済を文字通り牽引した名列車は、絶命寸前の文化遺産なのである。そんな貴重な0系0番の先頭車両が昭島市にある。この車両は1991年に昭島市がJR東海から購入した車両で、現在は「昭島市図書館つつじヶ岡分室」として使われている。
山陽新幹線博多開業に向けて用意されていたという貴重な車両だが、現在は子供用の図書館として生まれ変わった。中には本棚が置かれ、座席の一部が取り払われてお座敷状態になっているようだ。実は楽しみして行ったのだが、休館日でないのに開いていない。おかしいと思って市役所に電話したところ、なんと休日振り替えで臨時休みだった。
仕方がないので外から眺めたが、よく見るとお肌がブラマヨ吉田みたいにボコボコだ。0系は先頭部分を職人がハンマーの叩き出しで造っているとは言え、改めてみると随分凹凸があるものだ。とは言え、JR東日本が開設した大宮の「鉄道博物館」にも、カットした頭しか残っていないので、1両まるまる保存されているのは貴重だ。
昭島の0系がちょっと不完全燃焼だったので、次の新幹線スポットに移動することにした。目指すは昭島市からほど近い国分寺市。実は国分寺市は鉄道に縁の深い場所だ。ここには鉄道総合技術研究所があり、鉄道に関する様々な新技術が開発されている。その真向かいにあるのが、「新幹線資料館」だ。
トップの写真がそれだが、一見0系に見える車両は実は貴重なもの。この車両は951形といって、山陽新幹線開業に伴い1963年に製造された試験車両だ。951形は0系のサイズを踏襲して造られたが、決定的に違うのはオールアルミボディということだ。剛性を確保するためにボディマウント構造を採用しているが、これはモノコックボディのようなもの。試験時には時速286km/hを記録した。
よく観察すると、運転席の後ろの形状が0系とは少し異なる気がする。この貴重な951形は2両製造されたが、その内の1両が1991年に国分寺市に無償譲渡された。里子に出された951形は鉄道総合技術研究所の門を出て、数メートル走ってこの場所に引っ越してきた。この車両の最大の見所は、何と運転席に座れることだ。新幹線の運転席なんて、子供の頃は「新幹線大爆破」という映画でしか観たことのない夢の場所だったが、よもやアラフィフになってから座れようとは“夢”にも思わなかった。
運転席は非常に高い場所にあり、スイッチ類がかなり多くて驚かされる。これで時速286km/hを出すのは相当怖いと思うのだが、どうなのだろうか。車両後部はちょっとした展示室になっていて、当時の貴重な品物が飾られている。本館のひかりプラザ内にも鉄道の展示室があるが、こちらは期待はずれ。まあ、新幹線の運転席に座れるだけでも十分価値はある。
向かいの鉄道総合技術研究所に入ることはできないが、現在山梨の試験軌道を走っているリニアモーターカーの実験車両が道路からも見えるので、こちらもチェックしたい。
鉄道が好きという人にとって、自宅に鉄道模型のジオラマを置くのは夢だと思う。最近では玩具メーカーから、ちょっとしたスペースでも置けるジオラマセットが販売されているが、家族の理解がないとそれさえも難しいのが現実。
最後にご紹介するのは、そんな男の夢を酒を飲みながら見られる場所。渋谷駅から道玄坂を登り、国道246号線方面に少し入った地域にある雑居ビルに、バー「銀座パノラマ渋谷店」はある。実はこの店はその名の通り、銀座に本店を構えるバー。銀座、渋谷の他に新宿にも店を展開している。
ここの特徴はカウンターをNゲージが走っていること。僕がこの店を知ったのは、毎度楽しみにしているTVドラマ「鉄道警察官・清村公三郎」シリーズに出てきたらから。鉄道模型が走るのを見ながら酒を飲めるなんて、夢のようなバーだとすぐにググったのがきっかけだ。
3店舗の中で、特にジオラマが大きいのが渋谷店。バーがありそうもない雑居ビルの3階まで上がり、扉を開けるとそこは鉄道ファンのパラダイス。原鉄道模型博物館には負けるが、ドドーンと小さなトレインワールドが置かれている。ノンアルコールも置いてあるが、今日はジムニーを置いてきたのでビールを注文。感じのいいバーテンさんが、すぐに冷えたビールを持ってきてくれた。
店の壁の一部はショーケースになっており、ここにもNゲージがずらり陳列されている。ちなみにこの鉄道模型は販売もしているらしい。
ビールをちびちびやりながら目の前を通過していく、ブルートレイン、特急、通勤電車…。なんだか自然に顔がにやけてしまう。正直、それほど鉄道マニアというわけではないが、小さな町を掛けて抜けていく小さな鉄道を見るのは、何歳になっても楽しいものだ。きっと鉄道ファンでなくとも結構楽しめると思う。
店には電車の名前が付いたカクテルがいろいろと用意されており、僕は渋谷なので「青がえる」を頼んだ。ちなみに青がえるとは、ハチ公の前にとまっているあの緑の電車のこと。カクテルの味のセンスもなかなかのもので、また電車が走ってくるのをにやつきながらグラスをあおる。
正直、お値段は普通のバー価格なので、調子にのっていると結構高くつくのでご注意。ここは食べ物メニューも充実しているので、ジムニーで来てもノンアルコールに食事という楽しみ方ができるだろう。都会の中にひっそりとある、男の夢の隠れ家なのだ。
ということで、今回はちょっと“鉄”なスポットをご紹介してきた。独身者も家族のいる方も、けっこう楽しめると思うので探検してみていただきたい。日本は世界に誇れる鉄道王国。時間通りに電車がやってくる唯一の国だ。だからこそ、そんな鉄道に感謝にして、鉄道をもっと身近に感じていただきたいと思う今日この頃。
さて、次回のジム探は11月22日から一般公開される「東京モーターショー」を探検。一般の方には見えない裏側までご紹介するつもりだ。どうぞお楽しみに!