JIMNY LIFE ジムニーをとことん楽しむ僕らのライフスタイルマガジン JIMNY LIFE ジムニーをとことん楽しむ僕らのライフスタイルマガジン

CATEGORY MENU

日本再発見ジムニー探検隊
VOL.037
北関東満喫ツーリング
北関東満喫ツーリング

"たまには林道を走りたい..."そんな、僕のつぶやきを聞いた河野隊長の提案で
今回のジム探は、林道ツーリングをメインにして北関東を旅する。
そこには懐かしい日本の原風景と新しい価値観が多く存在した。

画像をクリックすると拡大&情報が見られます(スマホ、タブレット一部機種を除く)。

茨城・栃木は林道の宝庫

高萩ICからほど近い無名の林道をアタックする探検隊。

茨城、栃木、群馬のいわゆる北関東は、どうも他の地域の関東人から軽視されているように感じられる。僕は月に一度は北関東を訪れるが、この3県は目立った観光地もなく若干地味ながら多くの魅力がある。古の文化が多くの残っており、同時に日本人が長年育ててきた里山も豊かだ。アウトドアレジャーを楽しめるスポットだって多い。

茨城や栃木はかつて、常陸国、下総国と呼ばれ、飛鳥時代には大国だった。つまり物心ともに豊かだったということが分かる。訪れれば分かるが、21世紀の今日も日本人の心をくすぐる原風景が茨城から栃木にかけて多く残っているのだ。

今回の旅のメンバーは2台のTS4、そして隊長と山岡C。常磐道を2時間ほど北上し、高萩ICで高速道路を降りる。高萩は明治維新後、日本の近代化に則って石炭産出で栄えた町だが、現在は木材加工が産業の中心となっている。そういうこともあって、ICからさほど走ることなく山間への道に変わる。

山岡Cによると、茨城と栃木の県境にあたるこの地域には、今も多くのダートが残っているらしい。だが、年を追うごとにゲートが作られて一般車両の進入を規制している道が増えているのも事実だ。

テンションが上がってきたところで、いきなり水を差すように現れた倒木。

関根川に沿って走る県道11号線沿いは、稲も刈り取られてすっかり冬支度が済んだ田んぼが山間の狭い土地に続く。道には広葉樹の葉が落ち、何とも心穏やかになる景色が続く。平和な風景に目を取られていたら、スタート早々に道をロスト。3人で地図をチェックしていたら、すぐ脇に抜けられそうな無名林道があるようなので即アタック決定。

落ち葉の積もるダートに入り、4WDのスイッチを押す。何度もこの行為を経験してきたはずなのに、4WDに入れる瞬間はワクワクする。軽くTS4のお尻を滑らせ、路面の状況を確認してみた。雨で路面が深く削られている箇所が所々あるが、固くて走りやすい。

柔らかい冬の木洩れ日に癒やされながらのんびりと走っていくと、先行する隊長車がストップ。無線から「倒木です」という声が聞こえたので、“よっしゃー、久しぶりに力仕事をするか!”と張り切って外に出た。だが、TS4の前を見ると、とても人力でどかせそうもない樹が横たわっている。

「俺、ウッドソウ付きのアーミーナイフ持ってるけど使う?」という言葉にコケながら、地図で枝道を探す。この林道には枝道がいくつもあるようだが、とりあえずここを通過しないとそこにも行けない。残念だが諦めて、引き返すことに。波乱含みの林道アタックのスタートとなった。

日本の里山を堪能しながらダートアタック

何気ない風景の中に、なぜか日本人の心を揺さぶる美しさが常陸の国にはある。

2台のTS4はこやま湖という人造湖まで戻り、そこから大金田という林道を目指す。途中、いくつもの小さな集落を越えていくのだが、心の奥のひだを刺激するような懐かしさがここかしこに存在している。クルマ1台がようやく通れる田舎道を走っていると、老婆が道をのんびりと横切り、ネコがゆっくり目の前を通り過ぎる。あまりにものどかだ。

何となくフランスの片田舎を彷彿させる大金田の集落をすぎると、やがて周囲の景色は神秘的な杉林に変わった。斜めに射し込んだ太陽光が、得も言われぬ美しいコントラストを創造していた。林は素人目にもよく手入れされ、杉は雄々しく天を目指して伸びている。かと思えば、しばらく進むと豊かな広葉樹林が広がったりと、この地域が豊かな自然を育んでいることがよく理解できる。

指標がないため、大金田林道の正確な始点がどこかは把握しづらいが、舗装路がダートに変わったことで林道になったことが分かる。道はかるくガレているが、轍は浅く走りやすい。伐採された山肌で視界が開けると、ちょうどその辺に大金田林道と花園林道の分岐がある。左手道なりを進むと大金田林道を終点まで走れるはずだが、何とそこに無情にも寅柄のゲートが…。

ここで再び地図タイム。ちなみに林道を走る場合はカーナビだけに頼ることなく、必ず地図を併用したほうがいい。林道エキスパートの隊長と山岡Cが愛用しているのが、昭文社「ツーリングマップルR」だ。地域によって巻が分かれているが、どれも林道まで詳細に記載されている。ただし地図に載っているからといって全面通行ができるわけではないので注意したい。

なかなかスリリングな道が続く花園林道。ジムニーにうってつけの道だ。

当初は大金田林道を走破して県道111号に抜ける予定だったが、とりあえず花園林道に向かうことにした。花園林道は全長4.8kmで全線ダート。大金田林道の分岐から2kmほど再び支線との分岐が現れるが、左の切通しを降りるほうの道が本線だ。カーブミラーが目印。分岐からすぐに落葉と枝で路面が埋もれたダートが始まる。

しばらくクルマが通っていないようで、雰囲気的には廃道のようだ。入るには若干の勇気がいるのだが、クルマは2台、人も3人いるのでもしもの時は何とかリカバリーできるだろう。切通しから走るとすぐに道は狭くなる。路面は砂利の浮いているがフラットで、路肩さえ気をつければビギナーでも走ることができる。

だが、進むほどに植物が生い茂り、時としてはヤブっこき状態になった。クルマのボディに引っ掻き傷が付くのは必至なので、愛車へのダメージを避けたいならおすすめはしない。道は渓流沿いとなり、左手に花園神社の社が見えてきたら林道も終わりだ。ちなみに花園神社は征夷大将軍・坂上田村麻呂の創建と言われる由緒正しいものだ。風格のある佇まいは、なかなか他では見られないので、時間がある人は立ち寄ってみてはいかがだろうか。

田舎だからこそ美味い蕎麦がある

雰囲気のいい田舎家の中で絶品を蕎麦が味わえる「打ち立てそば処待月」。茨城県久慈郡大子町上郷2549

「ジムニーで行く林道旅」を見ていただくと分かると思うが、どうも隊長の中では林道ツーリングと蕎麦がセットになっているようだ。田舎には蕎麦の名店が多い…というセオリーを考えれば、なるほどうなづける部分がある。今回も事前に近所の蕎麦の名店をチェックしておいたのだが、林道走破に手間取って気がつくと、もうおやつ時が近くなっていた。

風光明媚な田園風景の中を駆け抜け、ようやく東館という小さな町まで到達していたが、目的の蕎麦屋までまだ10km弱はある。蕎麦屋に電話を入れてみると、元気なおばちゃんが「2時までですよー」と言う。時計を見ると、1時40分。微妙すぎる。ところがここで河野隊長の過給器が作動し、法定速度MAXで目的地までスパートをかけた。

店の前にTS4が着いた時間はジャスト2時。クルマを降りて慌てて店内に駆け込んで交渉すると「今から打つから少し時間かかるけど」と言って、入店をOKしてくれた。いいおばちゃんである。この店は「打ち立てそば処待月」という店で、町付という集落の名にかけて風流なこの名前を付けたようだ。

古民家を改装してある店もなかなか趣があり、座ると窓の外に八溝川のせせらぎが見られる。冬の時分でもこれだけ雰囲気があるのだから、春にはもっといい所なのだろう。窓を開け放って蕎麦をたぐったら、きっと最高の気分に違いない。

鮎の干物と野菜天ぷらが付いた「鮎定食(1500円)」。蕎麦もつゆも絶品だ。

蕎麦がゆであがるまで15分ほど待つと、おばちゃんがお盆を運んできた。三番粉の田舎蕎麦で、見た目にも実にうまそうだ。聞けば粉はこの辺で穫れたものを使っているとかで、正真正銘の茨城の蕎麦。大子町の蕎麦は独特の香りがあり、同時に甘みもあることから全国の蕎麦職人から高い評価を得ているらしい。

ひと口すすると、まさに香り、のど越しとも抜群だ。地元の人が打つ蕎麦だけあって、その魅力がすべて出ている。鮎の干物は初体験だったが、これも思った以上に脂があって美味い。川魚はあまり…という人でも、クセが消えているので箸が進むはずだ。天ぷらもなかなかのもので、無理をしてきた甲斐があったというものだ。

大子町にはここ以外にも蕎麦の名店が多いようなので、自分に合った蕎麦屋を探してみるのも楽しいだろう。

<パート2へ続く>