さすがに8.5kmの七蔵寺林道は走り甲斐があり、ドライブはお腹イッパイになった。
残すはメインメニューの白骨温泉『泡の湯』だけだ。
硫黄臭の強い乳白色の湯をため込んだ広大な露天風呂は感動モノ。
目的を果たして満足した3人だったが、2日目の予定は未定だった...。
県道254号線を東に向かい、国道153号線と交わった所で食事を取ることにした。「信州だからやっぱり蕎麦かな〜」とスマホで検索していたら、すぐ近くに『タイガー食堂』という店を発見。メニューなどは記されていなかったが『オススメ!』と書かれていたので入ってみたところ…大正解! なんと、あの天才画伯『山下 清』が居候していた、とても歴史的な価値のある食堂なのだ。メニューはソースカツ丼をはじめとする丼物とラーメン、軍鶏の唐揚げなどで味もGOOD! さらにスタッフの接客態度が素晴らしく温かい。近くに行ったら是非とも立ち寄っていただきたい食堂である。場所は中央本線・小野駅の近くだ。
お腹が満たされたところで、七蔵寺林道のアタック開始。この林道は別名「王城枝垂栗林道(おうじょうしだれぐりりんどう)」とも呼ばれる、約8.5kmのミドルダートだ。また途中に「日本中心の碑」が建てられている、超メジャーな道。また中央道・岡谷ICから10分と近く、さらに走りやすいダート路面ということもあり、シーズン中は休日ともなれば多くの四駆やオフロードバイクが走りに来る。ビギナーの林道デビューにも最適なコースといえよう。
人気のある林道だが、ゴールデンウィークを控えた平日ということもあってか、他のクルマをまったく見かけない。Yカメが数カット撮影し「写真はこんなもんでOKだな〜」とカメラを収納したら、河野さんのペースがグングンと上がってきた。安全のためコーナーでは超スローペースになるのだが、見通しの良い場所ではスピードを乗せる。
走りやすいダート路面だが、こっちはJA11だ。わずかな凸凹でもスピードを上げれば身体は左右に激しく揺さぶられる…。まぁ、三菱ジープを愛車とする筆者にしてみれば慣れたもの。「もしかしてオレを離そうとしているのか?」と思い込み、「ならば意地でも食いついて行ってやる!」と勝手にバトルモードに突入。あっけなく8.5kmを走り終えてしまった。まぁ、たまには緊張感を持って走るのも良いだろう。これで走りは十分に満足した。あとは今回の目的である泡の湯に浸かるだけだ!
白骨温泉は行ったことがなくても、その名は知っているだろう。温泉宿としては元禄年間に信濃の人『齋藤孫左衛門』により開かれたという歴史ある温泉地である。飛騨山脈の麓に位置し、その最大の特徴は『乳白色の湯』。さらにきつめの硫黄臭、山峡というロケーションなど、まさに秘湯と呼ぶに相応しい。宿は9軒あり、中でも人気の高いのが『泡の湯』である。
源泉から毎分1,600Lもの湯が湧き出ており、その豊富な湯量を活かした広大な露天風呂は、とにかく素晴らしく美しいロケーションである。内湯も情緒豊かな造りで、心身ともに思い切り寛げること請け合いだ。料理や接客の質も高く、一度訪れたら誰もが「また来たい!」と思うことだろう。
温泉はもちろん24時間入浴可能で、我々は夕食前、夕食後、就寝前、そして朝と4回も入った。おかげで帰宅した次の日も身体が硫黄臭かったのはここだけの話と言うことで…。
旅の目的を果たした筆者は、長い戦いを終えた兵士のように深い眠りについた。そのために翌朝の目覚めはバッチリ! 疲れなどどこにも残っていない。
Yカメ:「ところで今日の予定は?」
筆者:「んっ? 予定などない!」
Yカメ:「何それ?」
筆者:「泡ノ湯と林道しか考えていないっちゅーの!」
Yカメ:「計画性なさすぎじゃね?」
筆者:「こまかな計画を立てると先が読めてつまらないだろ? だからなるべく行き当たりばったりの方が面白い!」
河野さん:「それなら蕎麦を食べに行きましょう! 飛騨高山の蕎麦は美味いですよ!」
取りあえず『蕎麦』の看板やノボリをひと通りチェックして河野さんが選んだのは。栃尾温泉の宝山荘という温泉宿の一角で経営している『小さな蕎麦屋さん』。さすが大の蕎麦好きらしく、第六感が見事に的中! 固いのではなくしっかりとしたコシがあり、蕎麦の風味も強く感じられる。食感、喉ごしともに申し分なし! そしてさらに感動したのは、蕎麦を注文した人は無料で露天風呂に入れること。もちろん断る理由などなく、のんびりと浸からせて頂いた。
その後はYカメの「甘いモノが食いたい!」というリクエストで、甘味処を検索。これまた行き当たりばったりだったが『山椒入り』という珍しいケーキを食して感動! 3人ともそれぞれの願望を叶えて、いつも以上に大満足の旅となったのだ。
<文:内田 靖 写真:山岡和正>