10月23日 モビリーティーパークにて
新製品のショックアブソーバー「RE50」
のプレス発表会が開催されました。
レッツゴー4WD誌、ランドクルーザーマガジン誌などで
おなじみのライター高坂さんに実際に試乗をして頂き「RE50」のレポートを
高坂さんらしい視点でズバリ記事にして頂きました!
概要
ジムニーパーツ・サプライヤーの大御所「APIO」から、ジムニーJB23W用の、また新しいショックアブソーバーがリリースされた。
開発するにあたってのコンセプト、概要などは、このAPIOホームページに詳しく紹介されているとおり。要約すると、「より乗り心地のいいショックアブソーバーが完成しました」ということらしい。製品名は『ROADWINショックアブソーバーRE50』。
従来よりAPIOはJB23W用としてオリジナルのショックアブソーバーを減衰力可変式、同固定式、それにビルシュタインとのコラボモデルなど、計4タイプをリリースしているが、つまりこのRE50で、オリジナルショックは実に5つめ。ただ、どのショックもキャラクターがはっきりしているので、選ぶ際も迷いはないだろう。
今回の「RE50」のポジショニングも明確だ。スペックとしては従来の「ROADWIN8段レッドショックアブソーバー」と似通っていて、実際、減衰力8段可変式であることをはじめ、ストローク長やピストン径、内部オイル量などは、まったく変更されていないそう。異なるのは減衰力の設定のみ、ということになる。
しかし、その減衰力設定にあたってはJB23Wのバネ下……ホーシングやアーム類、タイヤ&ホイールなどなど……をバラバラにし、重量を計測。さらにジムニーという“オフロード車”の走りのフィールドを考慮し、その上でオリフィス、バルブ、ポートといった複筒低圧ガス式ショックアブソーバーの内部機構を徹底吟味、より良い乗り心地と操縦性のバランスを取っていったのだという。試作を重ねたのは4回ほど……これまでのAPIOでは考えられない「多さ」だったという。
結果として得られた減衰力数値は、企業秘密? として公表されていないが、基本的には初期の入力を軟らかめに、ピストンスピードが高まったところで引き締まったように感じられる設定とのこと。また、全体にフロント用のほうがリア用より高め、とも。従来、可変式ショックというとフロント、リヤとも近い減衰力設定のものが多く、その装着車に乗る場合、個人的にはフロントの番数をリヤよりやや高めにするのが好みだったのだが、RE50の場合、どうやらフロント、リヤを同じ番数で乗るのがよさそうだ。
ともあれ、難しいことは考えず、とにかくこの新しいRE50装着車、さっそく試乗させていただこう!
オンロード
まずはすべてのJB23Wオーナーが乗るシチュエーションであろう、オンロードを試してみる。試乗車には、APIOのオリジナルサスペンション「A2000Ti つよし君 RE50コンプリートキット」として装着。約60㎜アップのコイルスプリング、解除可能式スタビライザー“悟空”などが同時装着されている。ちなみに今回のRE50に組み合わせるスプリングは、このA2000Tiが専用となっている。またタイヤは、ジオランダーM/T+185/85R16。エア圧は1.5kg/m2に設定したが、オンロードではもう少し高く、LT規格サイズでもあるので、2.0kg/m2くらいでもいいかもしれない。
RE50の番数は、まず開発者であるAPIO尾上茂会長がオンロード通常走行で推奨している、フロント/リヤ各6番で試してみる。
印象的なのは、やはり乗り心地の良さ。路面の継ぎ目や舗装の荒れたところはオンロードといえど不快な突き上げが気になるところだが、RE50はまったくそれを感じない。タイヤの低めのエア圧を差し引いても、ショックアブソーバーの初期の“当たり”が想像以上にしなやかで、なるほど、これが従来の8段レッドと大きく変わったところか、と思わせる。
ならばハンドリングはフニャフニャなのか? というとそんなことはなく、コーナー時のステアリングの入りも違和感がないし、コーナリング中の姿勢もしっかりと剛性感がある。フロント、リヤともショックは同じ番数だが、フロントは手応えがほどよく、それにリヤが少し軟らかめに対応してトラクションを稼いでくれている感じだ。
続いてショックの番数を7番、8番と試してみたが、乗り心地の良さはまったく変わらなかった。意地悪く8段で路肩の、コンクリートの雨溝のギャップに乗り上げてみたが、やはり嫌な突き上げ感がまったくない。これだけでこのショックアブソーバーの素性が分かったような気がした。もちろん、ハンドリング自体は番数を上げるほど、小気味のいいものになってくる。ロールも極端に抑えられているわけでなく、むしろそれを積極的に生かし、気持ち良く曲がっていこう、という設計のようだ。通常走行でタイヤエア圧をもう少し上げることを考えると、個人的には7番あたりが普段乗りから少しスポーティに走らせる程度まで、気持ちよく乗れると思う。
ちなみに、フロント7番×リヤ5番、というふうに、これまで個人的に「可変ショックのセオリー」とした状態でも試したが、前後のロールバランスが崩れ、ちょっとリヤの腰砕け感が気になってしまった。やはりRE50は、フロント・リヤとも同じ番数が、具合がいいかもしれない。
ダート
ダート走行についても、事前に尾上会長から推奨があったとおり、まずはフロント、リヤとも6番で試してみた。タイヤエア圧はやはり1.5kg/m2と少し低めだが 乗り味は引き締まっている。30km/hくらいの、通常、林道を走るくらいの速度域では乗り心地がすこぶるよく、大きなギャップを拾ってもいやな突き上げがまったくないし、挙動の乱れを感じることもない。やはりこのあたり、初期の入力が柔らかく、その後、ピストンの動きが速く、大きくなるにつれ引き締まる、というRE50の特性がよく発揮されているかんじだ。もう少しスピードを上げても、この状態なら足まわりの追従性のよさが感じられ、フラットライド感がある。クルージングは、とにかく気持ちいい!
一方、ドライバーのテンションが高まってきたスポーティな走行では、前後6番では、もう少し挙動を抑えたいし、ステアリングの入りももう少しシャープになってほしい、と思えてくる。そこで前後7番、前後8番をそれぞれ試す。
驚いたのは、そのどちらの番数でも、乗り心地にゴツゴツしたところがまったくなかったことだ。低速でも、少しスピードを上げてみても、ステアリングに感じる突き上げ、カラダに伝わるショックはなし。快適そのものだ。
さらに印象的だったのは、コントロール性の高さ。ダートでスピードが上がってくると、コーナリングではリヤが流れたりしてくるが、それもステアリングの当て舵、1つで簡単に修正できる。速い動きにも挙動が機敏に反応してくれるのは、ショックアブソーバーの伸縮、減衰力のバランスのよさを物語るものだ。慣れてくれば、これを生かして、さらにスポーティな走りも可能になるだろう。
RE50の開発コンセプトは、あくまで乗り心地優先、だが、いざとなれば、おそらくダート系のスピード競技にも対応できる……そんな懐の深さを感じさせた。
モーグル
APIOの約60㎜アップのコイルスプリング「A2000Ti」とのマッチングを前提に開発されたRE50。当然、サスペンションストローク量も純正以上、
つまり局地的なクロスカントリー走行にも臆することなくトライできる。最後の試乗は、路面のやや湿ったモーグル地帯で行ってみた。
ここではまず、APIOの解除式スタビライザー「悟空」を、せっかくだから解除した。RE50の番数は、最初、一般走行でセットした前後6番で。
大きなコブの続くシーンでは、やはりストローク量が大きく、とても走りやすい。タイヤが対角線に浮いてからはドライバーのカラダを使って車体を揺すったり(これができるのが軽量ジムニーのいいところ!)、トランスミッションを前進、リバースと素早く切り替える、いわゆる“もみだし”によって、少しでもタイヤにグリップが伝わると、なんとか動き出してくれる。が、コブを斜めに通過していくようなシーンでは、タイヤが滑り出し、挙動が不安定になることも……。
そこでRE50の番数を、前後2番に切り替えてみる。すると、前後6番のときより、かなりトラクションに粘りが出た感じ。もみだしのシーンでも、6番のときより強くグリップが発生する感じで、よりスムーズに脱出できる。さらに斜めに乗り上げるシーンでは横滑りもなくなり、車体を30度くらい傾けたまま、コブをぐるりと一周してしまった。まるでトレッドの広がったような安定感を、ショックの特性で生みだしてくれたようなのだ。
ジムニー用の減衰力可変式ショックアブソーバーも、数多くリリースされている昨今。しかし、実際のユーザーさんは、一度、減衰力の番数を設定したら、そのまま。一度も番数を切り替えたことがない……なんて方も多いのでは? でも、それではなんだかもったいない。今回のROADWIN RE50は、各番数の減衰力設定にメリハリがあり、各ステージで明らかに違うキャラクターを見せてくれた。今後、APIOのコンプリートカーには、このRE50が標準装備となるそう(?)なので、積極的に番数を切り替えて、行動半径の広いジムニーの走りを存分に楽しんでほしい!
高坂義信プロフィール
四駆専門誌編集部勤務を経て、フリーランスの四駆ライターに。
現在、レッツゴー4WD誌、ランドクルーザーマガジン誌などでレギュラーを持ち、カスタマイズカや新車、旧車などのレポートを担当。
これまで所有してきたクルマは すべて四駆、しかもすべて前後リジット車。現在の愛車はジムニーシエラJB43。