ア・ジ・旅
海外サイクリスト兼モデル 山下晃和のアピオジムニー旅暮らし
いま、僕はアメリカのシアトルに居ます。ワシントン州に位置し、北の都市は、カナダのバンクーバー、南にはオレゴン州があります。大自然に囲まれた、とても美しい場所です。
荒野が続く、南西のカルフォルニア州やアリゾナ州に比べても、緑の量が圧倒的に多く、針葉樹で広がる森によって、その土地の雨が多いことや、同北緯線の気候が想像できるでしょう。
前述の通り、自然は去ることながら、街並みも美しく、至るところに花が飾られ、凛々しい高層ビルと、街のシンボルとなっているスペースニードルが青い空にそびえ立っています。西には、太平洋まで繋がっているエリオット湾、東は、小高い丘になっていて、坂道が多いところはサンフランシスコに似ているかもしれません。ところが、かつて、訪れたことがあるLAやNYにはない、どことなくヨーロッパに近い感覚。建物も洗練された造りになっていて、治安も比較的良いそうです。
夜は、湾に浮かぶ観覧車が夜景に花を添えていて、ほかにも水族館、パイクプレイスマーケットの市場に並ぶ魚介類など、魚フリークも飽きさせません。
また、スターバックスコーヒーの誕生の地ということもあって、美味しいコーヒーが飲めるカフェが点在していて、カフェ巡りだけでも1日過ごせそう。アメリカーノのカップを持って、街を歩きながらノードストロームらへんを歩いて、ウィンドウショッピングするのがシアトル流。そんな散歩スタイルを真似て楽しむのもいいでしょう。
僕が1番気に入ったカフェは、ザイゲストコーヒー。お店の雰囲気も、かかっている音楽も好きで、店員さんの楽しそうな接客もよかったです。チャイナタウンの入口、インターナショナルディストリクトの範囲です。また、パイク・プレイス・マーケットにあるシアトルベーグルベーカリーも良かったですし、チャイナタウン内にあるFUJIベーカリーというお店も、日本のパン屋さんのようなラインナップも楽しめました。なかでもAZUKIは、何度か食べに行きましたが、あんパンのシアトルアレンジ版といった感じでしょうか。
今回は、とあるバックパックブランドのインターナショナルミーティングがあって、マウントレーニアという標高4000mを越える山に登山をすることが目的でした。
ある程度、英語が話せて、アウトドアの知識があって、体力があって、写真が撮れて、原稿が書けてといった人を、日本のディストリビューターが探していて、僕にお誘いがあったというわけです。 この中でも、もっとも必要なものが「体力」。これが非常に重要だと知ったのは、下山後でしたが。
IMG(International Mountain Guides)の公式ページによると、トレーニング、カーディオ(有酸素運動)などの心肺機能系トレーニングを3回以上実施すること、そのうち、40分から50分は心拍数を高くするトレーニングをする。ハイキング、ラン、スイム、バイクなどがオススメとのこと。階段の上り下り、ステップマスターもいいとのこと。
また、ウエイトトレーニングなどのストレングストレーニングを週2回以上やって、少なくとも20回以上は実施したほうがいいなどといった、かなりハードなプログラムを組んでいたので、本当にこんなに大変なのか。と疑っていましたが、やはり体力はあるに越したことはないなと思いました。
世界各国から集まったジャーナリストたちは、アウトドアのスペシャリスト、ジャーナリスト、それにディストリビューターなどで、アメリカの西地区、東地区から来た方々を始め、ドバイ、フィリピン、パナマ、ウルグアイ、アルゼンチン、イスラエル、イギリス、オーストラリアなど国際色豊かなチームメイトとなりました。もちろん、初めて山登りをするといった人も居ました。
全工程は4日間、うち3日間はテント泊、当たり前ですが、周りを見渡してもトイレなどありません。全てが真っ白に覆われた雪山。水は唯一、雪解け水が流れている沢を利用し、食事はIMGのガイドが作ってくれます。二日目は雪掘り起こして、その塊を溶かして、ボイルした後、飲用水としました。行動する間は、ナッツやお菓子などの行動食のみ、全4日分の行動食となれば、それだけでかなりの量になります。それに加え、チーム道具、大きなナベ、フライパン、テント3つ、フライシート、ポール、ガソリン、バーナー、食器類などをシェアします。自分の洋服やスリーピングバッグを含むと、16kgから18kgくらいになりました。後ろにそれだけ背負っていると、身体をコントロールするのもなかなか。コアが必要になってくるでしょう。
サミットアタックの日は、夜の23時に起きて、真っ暗の中を、ヘッドランプの灯りだけを頼りに登ります。上を見上げると、満天の星空、それに半月が浮かんでいました。途中、何度か巨大クレバスがあり、その深さは40m以上、落ちたら確実に死にます。
それぞれガイドが牽引してくれ、ハーネスを付け、ロープで身体をくくり3,4人でチームを組みます。日本の登山というよりは、雪山の壁を登っているような険しい箇所もありました。高所恐怖症の人は、歩けないかもしれません。
朝焼けが見え始めるのが、4時45分頃、白く斜めに見える斜面から、背後に眼をやると、漆黒の空から、オレンジ色の光が降り注ぎ、やがて、稜線に沿って輝き出します。
最後は、雪が無い砂利道を上がり、見事4392mに登頂しました。感動というよりは、安堵感が勝っていたような気がします。無事にキャンプサイトに戻ったのは13時間後。
2人、脱落者が出てしまい、全員で登頂とまではいきませんでしたが、それほど辛い山行であったことを物語っています。また、道中すべて英語で会話をするのですが、典型的な日本人の僕は、ヒアリングはできても、スピーキングが難しく、コミュニケーションが辛いときもありました、それでもメンバーがかわるがわる、「アキ、元気?」などと声をかけてくれたり、日本のことを話してくれたり、優しかったので、助かりました。
登山のグループに混じる前日は、さすがに緊張して眠れず、シアトルのエッジウォーターホテルのベッドでうなっていましたが、結果、素晴らしい経験をした5日間でした。
さて、ジムニーと何の関係があるのかということですが、クルマという乗り物は、さまざまな可能性を持った乗り物だと思います。
「自分の行動範囲を広めるため」に選んでほしいのです。「通勤でラクかな。」とか、「荷物を載せられてラクかな。」とかそいういった「ラクをするために」選んでほしくはありません。また燃費で車種を限定するというのも悲しいかな、このご時勢あるかと思いますが、極力避けたいですね。
標高4000mを越えるサミットアタックは決してラクではありません。お金で買えるものでもありません。勇気を出して何かにチャレンジすること、それこそ、アドベンチャーへの一歩が踏み出せる可能性を高めてくれる唯一のチャンスなのです。