「あまり建築には興味がないなぁ」という人でも、一度は“安藤忠雄”の名前を聞いたことがあるだろう。打ちっ放しのコンクリートを前面に押し出した手法を使い、大阪の個人住宅「住吉の長屋」で強烈なインパクトを世間に与えた。
生き方も非常にユニークな人で、建築事務所でアルバイトをしただけで専門的な建築の教育は一切受けていない。一級建築士だが、すべて独学で取得したという建築界ではまさに異端児と言われている。元プロボクサーだったというプロフィールも、安藤忠雄伝説をミステリアスにしているファクターだ。
「水の教会(北海道)」や「ベネッセハウスミュージアム(香川県)」などアイコンとなる建築を国内に多数残しているが、ランゲン美術館(ドイツ)フォートワース現代美術館(アメリカ)など、海外からも依頼が多くなっている。最近はイタリアでの歴史的建造物再生プロジェクトを手がけるなど、活躍の舞台が世界へと広がっているのである。また東京オリンピックデザイナー総監督や大阪府政策アドバイザーなど、様々な活動を積極的にこなしている。
僕は香川県直島にある地中美術館を観てから、安藤建築の虜になった。安藤忠雄の手が掛けた建築を観ていると、建物としてのユニークな外観もさることながら、氏はその中にある“空間”の創造に力を入れていることが分かる。建物は器であり、中にある空間こそ自分の作品であると考えているのではないだろうか。
だから、この人の創った建築は外から眺めるよりも、中に入るのがとても楽しい。ということで、今回は空間を楽しむことができる安藤建築をチョイスしてみた。