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ON THE STREET BURGER
VOL.009
初夢はハンバーガーとレイトバス~ARMS [東京・代々木公園]
初夢はハンバーガーとレイトバス~ARMS [東京・代々木公園]

代々木小公園向いの人気店。
店の空気をそのまま写したような
くつろいだおいしさのハンバーガーが魅力だ。

代々木公園・大きな噴水のある池

新年あけましておめでとうございます。平成二十六年になりました。午年だけに"奔馬"の如く、勢いますます盛んにお送りして参ります。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。


まずは"初詣"の話から――。

緑したたる常磐の森

今日話したいのは、祭りの後の、静かな明治神宮のことである

日本国内最大の人出を誇る初詣スポットと言えば、明治神宮。正月三が日だけで例年三百数十万人というから、これは大阪市の全人口を集めてなお足りぬ数であり、東欧のアルバニアやアルメニア一国の人口に相当する。それが一時に東京都渋谷区代々木神園町(かみぞのちょう)1番1号に殺到するワケだから、それはもうお祭り騒ぎだ。


だが今日話したいのは、祭りの後の、普段の、静かな明治神宮のことである。


境内には駐車場が3ヶ所ある。レストラン・売店のある第1駐車場、「崇敬会本部」の前庭である第2駐車場。高原の別荘地を走っているかのような樹間の舗装道路をここまで一気に乗り入れれば、南北参道を400m近く省略できる。お年寄りや小さい子供連れの参拝には便利だ。

第2駐車場から第3駐車場へ――ここにはある種の「静けさ」がある

さらに原宿口から入って最も奥に第3駐車場がある。背の高い木々に黒く分厚く囲まれた最も広い駐車場だ。


ここにはある種の「静けさ」がある――。


実際には都会の立てる雑音が後方でさまざまに鳴っているのかも知れないが、それ以上に、すぐ目の前で木々の放つ何やら「音にならぬ音」の方がはるかに頭の中を強く占め、喧騒はすっかり意識から遠のいてしまう。耳の奥には森(しん)としたもののみが残る。あるいはこれは「気を呑まれる」ならぬ「木に呑まれて」いるのかも知れない。


§ §

「現実から遠ざかれる場所」として公園脇のこの立地を選んだ

そんな深く豊かな明治神宮の緑と、それに続く代々木公園に隣り合って、小さなハンバーガーショップ「ARMS(アームズ)」がある。道を挟んで代々木公園の西側に2ヶ所ある「代々木小公園」の、北側の方の向かい。店主岩田さんは「現実から遠ざかれる場所」として公園脇のこの地を選んだ。


世間的には「こんな所で商売は出来ない」という場所である。借りるに先立ち調査したところ、日に僅か40人しか前を通らない。「俺大丈夫かな? 出来んのかな?」と不安に駆られる一方で、不動産屋から紹介される「イイ場所」にはまるで興味が湧かなかった。

ビートルとレイトバス

公園前のこのロケーションを見つけた時、岩田さんは愛車のワーゲンに乗っていた。1973年式の白いフォルクスワーゲン・ビートル1300。由緒正しき正規輸入の、所謂「ヤナセ物」である。

GAO NISHIKAWA画、1971年製フォルクスワーゲン・T2、通称「レイトバス」のキャンパー

ドラッグレースにも参加している。雨の日には乗らぬほど大切にしているビートルだが、レースとなるとアドレナリンが出まくって「壊さないようにという感覚が無くなる」。排気量2000cc。ハイカムも入れて最高時速160~180km。400mを14秒で駆け抜ける。


そして雨のこの日、代わりに乗って来たのは奥さん所有の1971年製フォルクスワーゲン・T2、通称「レイトバス」のキャンパー。中でもリアのデザインがT1と同じで、フロントがディスクブレーキという「アーリーレイト」と呼ばれる貴重なモデルだ。同行のイラストレーターGAO NISHIKAWA(ガオ・ニシカワ)さんもすっかり見惚れて、描いた一枚がこちら。

中でもリアのデザインがT1と同じで、フロントがディスクブレーキという「アーリーレイト」と呼ばれる貴重なモデル

岩田さんのワーゲン好きにはルーツがある。


子供の頃、おじいちゃんの家へ行くと、ハーレーやトライアンフ、BMW、陸王などのバイクと並んで、普段乗りのカリーナと、そしてビートルがガレージに停まっていた。「倒れると危ないから」といつもバイクには触らせてもらえず、代わりにビートルの運転席に乗せられた。岩田さんの乗り物好き・古い物好きはどうもこのおじいちゃんの影響らしい。そんな「隔世的」な趣味が店の端々にもよく表れている。

自らの腕で

ちょっと見渡せば相当なワーゲン「フリーク」である証しが店内随所に

「ARMS」という店名は全て自らの「腕」で、手作りで、オリジナリティあるものを作りたいという思いから。車も然り、やれることはなるべく自分でやりたい。だから店内のデザインから色塗りから全部自分でこなした。最も目を引く木の窓は、寸法をそっくり大工に伝えてパースの通りに作らせた。


名古屋出身の岩田さん。子供の頃は「スワロー」のハンバーガーを食べるのが好きだった。栄(さかえ)の伝説的名店「UPTOWN DINER」に勤めた後、東京・本郷の「FIRE HOUSE」で働くため上京。店長を務め、後、独立。「スタートは自分の世界をふんだんに出せる場所がいい」と1年3ヶ月かけて家主を口説き、小公園脇のこの場所にアームズを開店して早8年。

すぐ前が渋谷区立代々木小公園。張り出すように作られた窓の造作が素晴らしい

バーガーメニューは全16品。中から一番人気アボカドマッシュルームチーズバーガー1,350円を。


パティは120g。外も中も全体が「ふわっ」と軽い作りで、細かな挽きの肉の繊維が舌先をサラリと掠める。胡椒が細かくジンと利き、エメンタールチーズがまったり控え目にその後を追う。野菜はカクテルサラダのように角に切ってあって食べやすい。ふんわりしたバンズの質とも合っている。マスタードが酸味をキュッと利かせ、最後にアボカドが微かな苦味を残す。


身構えずに、軽くリラックスして食べられるバーガー。疲れないそのソフトな食べ口に何よりの魅力を感じる。その最たるものとして、チーズバーガー1,050円を併せて薦めておきたい。


小田急線・代々木八幡駅前にテイクアウト&デリバリー専門店。新宿ルミネに3号店。その全ての出発点がパークサイドのこの店。初春にふさわしい希望溢れる光が、明るくさわやかに注ぎ込む。

< 文と写真:松原好秀 イラストと写真:GAO NISHIKAWA >

ARMS [代々木公園]

― shop data ―
●PARK SIDE BURGER SHOP
所在地: 東京都渋谷区代々木5-64-7
アクセス: 東京メトロ千代田線 代々木公園駅歩6分
駐車場: 代々木公園有料駐車場が目の前
TEL: 03-3466-5970
URL: http://www.arms-burger.com/
オープン: 2005年8月18日
営業時間: 11:00~22:30
定休日: 月曜日(祝日営業。要確認)

古いミシン台のリフォームをはじめアンティークな机が並ぶ店内
店を出て信号を渡るとすぐ代々木公園の西門に
晩秋11月半ばの代々木公園
園内に一戸だけ残る「ワシントンハイツ」時代の米軍住宅
店の前で――寒々とした雨の日だった
雨の日の店内はゆっくりと時が流れる
看板犬ヒニーちゃんと河口湖MOOSE HILLS BURGERのティナ&アニカちゃんは代々木公園で仲良くなったお散歩友達
自家製「ライスクリスピートリーツ」も好評販売中
ハンバーガー探求家・松原のイチ押しはベーシックなチーズバーガー。突き詰めれば全て「シンプル」に辿り着く
店主岩田さん。年に一度、スタッフみんなを拝み倒してドラッグレースに参戦する大のワーゲン好き
店内より
印象的な木の窓。明るい光とともに心地好い風が注ぎ込む