雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連載中の『林道パラダイス』との連動企画。
今回は2025年7月の中旬、東北地方の南部に位置する福島県、宮城県の林道を仲間とともにナローシエラで旅してきた。
Photo & Text : 赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。
<YouTube赤ぞうチャンネル>
福島県国見町の蓮祭りが行われていた「あつかし千年公園」で蓮の花を楽しんでから福島と宮城の県境にある萬歳楽山に向かった。
県道46号から林道半田赤坂線の舗装路を登って行く。半田銀山二階平坑口跡が目に留まり停まると坑口は林道のすぐ近くにあった。半田銀山は佐渡金山、石見銀山と並ぶ日本三大鉱山と言われ江戸幕府直轄で採掘されていたそうだ。続く林道北口線では出会うことの少ないカモシカに2回も遭遇。何て運がいいのだろう。標高が上がるにつれて国見町を一望できるようになり、尾根を越えて宮城県に入ると林道小畑線に突き当たる。まずは枝葉が繁茂する西へ向かう。草を掻き分けて進み広場に出るとその先は一般車通行止でUターン。引き返して馬頭山の方向へ走ると道に張り出した枝には白い泡状のモリアオガエルの卵が産みつけられていた。そこから先は枝葉の茂りが更に増え、自動ブレーキが葉っぱに反応してしまい緊急停車。これまで幾度も経験しているが今回は初めて「システム要点検」の警告が出てしまった。エンジンを掛け直したら警告表示が消えたのでとりあえず良しとしよう。馬頭山を過ぎると下り坂となり県道46号へ抜け出ることができた。北へ進むとすぐに鳥居が立ち並ぶ萬歳稲荷神社があったので参拝。旅の安全を祈る。この神社には百基もの鳥居が立っているそうだ。
県道46号線の上戸沢地区から細い道に入るとすぐに枝葉が繁茂。
掻き分けながら登ると舗装が途切れる。熊鷹山を目指して北東方向への脇道を進んだものの一般車通行禁止の看板があって引き返す。本線に戻って西へ分岐する道へ入ろうとしたが草木の茂りが酷くて断念。往来する車両が極めて少ないのか、本線も進むにつれて枝葉が覆い被さるように茂ってきたが、何とか林道入山線へ抜けることができた。目指すは西方向にある福島との県境。地形図では小藤蔵森の南の尾根を越えて福島方面へ続く道が描かれているのだ。橋のない沢を渡ると道幅が狭くなり、路面は湿っていて滑り気味だ。速度を落として慎重に進んで行ったが再び沢に行き着いた。沢の向こう側にも道は続いているが段差があって渡ることはできない。残念だが引き返そう。戻りは下り坂。滑って路肩から落ちたくはないので山側に寄せて下って行く。すると山側ギリギリを通していた右側の前後輪がストンと落ちた。落ち葉に埋もれて見えなかったがU字溝があったのだ。前後には動けるが溝からは出られない。電動ウインチで斜め方向に巻き上げれば脱出できるだろうが、その前にU字溝の縁にタイヤが当たるようにステアリングを目一杯切りながらアクセルを踏んでみる。しばらくタイヤが空転した後にブレーキLSDトラクションコントロールが効き始めるとU字溝の縁に当てたタイヤに駆動が伝わり這い上がってくれた。駆動力を適切に配分してくれるとても有用なデバイスである。
道の駅七ヶ宿に立ち寄ってダムカレーを食べた後に向かうは、尾根を越えて福島県まで通じている林道烏川線だ。烏川を渡る辺りから砂利道となる走りやすい林道を進むと、行く手を阻むように倒木が転がっていた。重そうに見えたが人力で脇へどかして前進する。天然林が多い美しい森を登って行くと県境の峠に到達。このまま下って行けば福島方面へ抜けられるだろうが今回は時間の都合で引き返すことにした。続いては国道113号から県道51号へ抜ける林道大穴沢大萱線。狭い舗装路を進んで行くと前方に何やら黒っぽい動物が動いていた。歩き方がぎこちない小さいのも2匹いる。子連れの熊だ!距離は50mほど先。車内から見ていることもあり恐怖感はない。むしろ子熊を愛くるしいとさえ思えてしまう。しばらく見ていると親子熊は森の茂みに入って行った。ばったり鉢合わせにならなければ無暗に人を襲うことはないのだと思う。とは言え夕方は熊が活発になるようなので宿泊地の遠刈田温泉へ向かうことにした。
温泉で疲れを癒した翌朝は川崎町の本砂金川沿いに続く林道三方倉線に向かった。国道457号から入り舗装が途切れ砂利道になる。最近、草刈りをしたようで茂ってなくて見通しが良く走りやすい。オボコンべ山の登山口を過ぎると扉が閉ざされた怪しげなトンネルがあった。看板には地震観測施設とあり初めて見る施設だ。しばらく進むと滑りやすい土の道となり草木が茂り出して行き止まり。帰り道は行きにチェックしておいた脇道に入ってみる。すぐに本砂金川に出たが橋はない。川の向こうにも道が続いていたので渡河。次第に道は狭くなり小さな沢に突き当たった。沢から先は登山道のようである。
続いては林道天形線で北上し尾根を越えて県道62号へ抜けた。通り掛かりにあった落差55mの秋保大滝を眺めながら涼をとる。狙っていた林道は滝の近くから始まり、ほどなくして砂利道へ変わった。地形図では途中から点線表記になるが尾根を越えて新川まで通じている道だ。林道脇に「新川8km」の案内板を見つけ、通り抜けられる期待は高まったが枝葉の茂り方は酷くなるばかり。枝がボディーを引っ掻く音を無視して登って行ったものの、その先にあったのは遊歩道入口の案内板。車両はここまでということだ。残念ながら引き返すしかない。
国道48号から林道北沢線に入るとすぐに蕎麦屋を発見。林道沿いに飲食店は珍しいねと立ち寄ると思いがけず美味しい蕎麦にありつくことができた。そこから先は固く締まった凸凹道となり乗り心地はよろしくない。やたらと天井が高い北沢隧道を抜けて橋を渡ると分岐点に到着。
北沢に沿って続く道は通行止だったので、道なりに進むと舗装路となりJR奥新川駅に着いた。駅前には人の気配はない。ここからは砂利道なのだが車両の通行は禁止されていた。実はこの先にある国鉄仙山線の開業時に造られたという奥新川直流変電所跡を目指して来たので引き返すわけにはいかない。砂利道を歩き出すと蜘蛛の巣がまとわりつく。この日は誰も行ってないということだ。仙山線の鉄橋をくぐるところでタイミング良く電車が鉄橋を通過。赤い鉄橋にステンレス車両が映えて美しい。歩き始めて10分で変電所跡に到着。機器類は取り外されているが鉄の骨組みと碍子が残っていた。鉄骨の一部に古いレールが使われているのも渋さに深みを加えている。脇に建つ展示棟は施錠されていたがガラス越しに回転変流機などを覗き見ることができた。
旅の最後は作並温泉の足湯で疲れた体を労る。とても熱い湯で帰路の鋭気を回復。無事に自宅まで帰ることができた。ちなみに今回同行したジムニーJB64は2022年まで自分が所有していた個体だ。仲間に譲るとたまに姿を見られて嬉しいものである。