ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.41「福島県・猪苗代町」
Traveling alone with jimny.
銀嶺に輝く磐梯山を背に
猪苗代湖に映る夕陽を見に行く
Photo & Text / 山岡和正
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。
日本の林道の有識者とも言われ、四駆でのオフロード経験値も高い。
ウェブサイト:http://kaz-yamaoka.com/
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今年の冬の積雪量は記録的だ。 ニュースのアナウンサーは、北海道から日本海側にかけての豪雪を叫び、画面には雪に埋もれた車や、高速道路の通行止めで右往左往する人々が映し出されている。 雪の影響が無い太平洋側の人々はただの傍観者といったところだ。 地震や台風などといった酷い災害には及ばないかもしれないが、想定外の積雪は日常生活を脅かしている。 そんなタイミングで非常識な話ではあるが、雪の林道を走りたいという欲求が日に日に増していた。 今期は薄化粧くらいの雪上を走っただけで、スノーアタックと言えるような本格的な雪上走行をしていない。四駆乗りのひとりとしては、降り積もる雪の中でトランスファーのレバーをシフトしてアクセルを踏み込みたいのだ。そして美しい雪景色を横目に新雪の道を爽快に走りたい。誰も入っていない雪山を滑るテレマークスキーや、スノーボードと同じ感覚である。 スノーアタックは危険な行為に思われがちだが、適度な積雪量とルートを守れば車体がダメージを受けることも少なく、リスクも低い。オフロードコースや激しい林道とは違って、アグレッシブに見える雪上走行もただ雪を掻き揚げて進んでいるに過ぎない。アクシデントを回避するリカバリーアイテムを装備していれば、最悪の事態になることもないだろう。危険を感じたら無理はせずに、車の走破能力の一歩手前で引き返せば良いだけなのだ。
東北自動車道を北上したのは1月の半ば過ぎだった。日本海側には雪雲が停滞し、酷い量の雪を降らせている。長野の北部や新潟は雪が多すぎて雪景色を愉しむどころではないので、積雪の境界線上にある猪苗代湖へと向かっていた。 現地付近で、雪の状況を確認してから場所の選択も出来るだろう。 しばらくは、遠くの山の頂き付近は白くなっているものの、それほどの雪は見えない。安達太良山をかすめて磐越自動車道に入っていくと、視界はモノクロに変わっていった。
一般道に下りて雪のありそうな林道へと向かう。 林道手前の集落を縫うように延びる狭い道はアイスバーン化していた。軽くブレーキを掛け、どのくらい滑るか確かめながらゆっくりと走ってみる。一応、スタッドレスタイヤを履いてはいるものの、ノーマルに比べて少しはグリップする程度に思っていたほうが安心だ。何かあればチェーンの出番となる。 入った森の積雪量は丁度良い具合で走行にも支障はなく、素敵な白い世界が展開していた。うっすらとタイヤ痕はあるものの、その上に新雪が積もっていてバージンスノーの様相である。スノーアタックができるほど雪深くは無いが、雪景色の林道ドライブも楽しいものだ。そう思った矢先、コーナーを曲がると急に深さが増してきた。雪の深さは20~30㎝といったところだろうか。スタックするほどではなく何とか進めるが、気がかりなのは最低地上高である。扁平率の高い大径タイヤで高さはあるものの、車体はリフトアップしていないノーマル車高のままなのだ。このまま深くなるとデフが干渉してしまい、最後には亀の子状態で動けなくなるだろう。バックミラーを確認すると2本のタイヤ痕の間にデフが引きずった線が見える。これからがスノーアタック本番といったところだが、なにせ単独行なので無理は禁物だ。 とはいえ、諦めきれずに数百メートル進み、前後に揉んでも進めなくなったところで、ため息をつきながら引き返した。
野営予定である猪苗代湖畔のキャンプ場は広く、四駆なら水際まで行ける。雪は無く、むき出しの砂浜の向こうには大きな湖が見えた。雪に埋もれた場所でキャンプしたかったので、野営は林間部の雪のある場所へ移動することにして、しばし気持ちの良い波打ち際で夕暮れを待った。 到着したころに吹いていた強い風は少しづつ和らぎ、湖面には夕陽の赤色と金色が映り込んでいる。 背後にそびえる磐梯山は、暖色に染まっていく。ゆっくりと落ちていく美しい夕陽を、ポケットに手を入れたまま時間を忘れてずっと眺めていた。
冬山のキャンプは静寂そのもの 冬の山間部は音が消えている。まるで、動物や木々までも息をひそめているようだ。エンジンを止めると自分が発する音しか聞こえなくなる。休日の混雑するキャンプ場には、もう戻りたくない。