APIOジムニーコンプリートカーTS7、通称「ハンバーガー号」。普段は都内某所に待機しているのを、こうした"有事"にのみ手配して乗っている。
私からの一報を受けて、GAOさんと坂上さん、二人揃って駆けつけてくれた。別に"心配して"くれているのでは無い。二人して『
ON THE ROAD MAGAZINE』の取材中だったところに呼び出しが掛かったので、後の予定をキャンセルして"やむなく"来てくれたのだ。と言うくらい、私の呼び出しサインはこの場合何よりも優先される。ある種の「エマージェンシーコール」と言ってよい。
二人は明らかに迷惑顔だった。が、行く先は湘南・葉山だと告げると幾分乗り気になり、久しく行っていないからと、わざわざ海岸沿いの道を選んで走った。「茅ヶ崎生まれの僕にとっては、岩場があって、水もきれいで、遊べる海――それが葉山だ」と、後部座席から身を乗り出して、坂上さんが熱く自説を語る。
湘南FMがボビー・コールドウェル、"
Love Won't Wait"を流している。ゆるやかにうねる134号線を境に、右は海、左は切り立った丘陵がしばらく続く。米国加州、マリブからサンタモニカへ向かう途中の風景に似ていると思った。
と、ちょうどその時、ハンバーガー号は「
MARLOWE(マーロウ)」の前を過ぎた。LAの私立探偵の名を冠したカフェ……極めて"暗示的"だ。間違いない。「ライトハウス」へ行けば、きっと"何か"が待っているに違いない。それは鬼か蛇か……。
音楽はこの上なくさわやか。しかし空も海も白く霞んで、前途同様、すっきりしない一日だった。