目にも楽しいボトルビールがずらりと並ぶココは、いま人気沸騰中の横浜の穴場。
居心地良し・眺め良し、そしてハンバーガー良しの、実は隠れたアーバンリゾートである。
記事をご覧いただく前に、心より心より、どうぞこれだけはお約束いただきたく……Don't Drink and Drive. 飲む時はクルマは置いて。クルマで来た時はビールは買うだけ。飲まない。持ち帰る。どうしても守れないという人がいた場合は仕方ない、月に代わってお仕置き仕り候……。
毎月1日アップゆえ、当コラムはここ2年、年頭最初のジムニーライフを飾っている。2014年は代々木公園「ARMS」を取材して年末の明治神宮の様子を、2015年は根津の「HEDGE8」を訪ね、根津神社の様子を伝えた。さて今年はどこへ……と思い浮かんだのが横浜中華街。
中国の正月は春節、旧正月なので2月初旬の方が祝いも盛大なのだが、行くとそれでも正月らしい飾りつけが多少はされている。APIOジムニーコンプリートカーTS7、我らがハンバーガー号を停めたのは関帝廟の前。今年は謎の円盤に追い回されませんように……などとお詣りしつつ、折角中華街まで来たのだからお昼は中華……ではハンバーガー号の名が廃(すた)る。と、ちょうど近くにこれ以上ないイイ店があるのを思い出した。
その店の名は「Antenna America(アンテナアメリカ)」。店名の通りアンテナショップ、アメリカのアンテナショップである。アメリカのクラフトビールを扱い、情報発信している。
アメリカのビールと言うと今やバドやミラーではないのだ。米国はまさにクラフトビールの一大活況期。この地球上でいま最もビール造りが盛んな大陸はおそらく北米だろうというぐらいに、30年前には90社ほどしかなかった全米の醸造所が、今では「ブルワーズ協会(Brewers Association)」に登録しているだけで2,500社、未登録も含めると3,500社以上もあると言われ、毎年数百のペースで増え続けているという。
そんな全米のブルワリー各社が造る斬新かつ個性的なクラフトビールを日本に輸入・紹介しているのがアンテナアメリカのオーナーである「ナガノトレーディング」だ。
全米30余のブルワリーより直輸入するクラフトビールのインポーターにして、米国ブルワーズ協会正式会員であるナガノトレーディング。おそらく初の日本企業会員だろう。
届けたいのは現地で飲めるおいしさそのまま。長距離輸送のため味が落ちたのでは意味がない。そこでナガノトレーディングは何より「徹底した温度管理」を重視・励行している。
工場出荷後、「米国内のトラック輸送」→「船便待ちの港の倉庫」→「輸送中のコンテナ」→「日本国内の保管倉庫」さらに「取扱店の売り場」まで、ビールに適した3~5℃帯での冷蔵を徹底管理。ワインと同じ18℃ではビールは劣化する。そこでビール専用の冷蔵コンテナを用意し、船内の積み場所まで指定。日本国内の配送ももちろん冷蔵。売り場においても冷蔵で販売することを商品取扱いの条件にしている。
費用は掛かるが品質第一。製造者の思いも消費者の期待もどちらも裏切らない「誠実なビジネスがしたい」と社長・大平朱美さん。APIO河野社長と同じ岡山県のご出身。
そんなナガノの"ショールーム"が本社オフィス上階のアンテナアメリカである。
酒販店や飲食店など、本来は"業者"との商談をするための場だったのが、一般のお客さんも入れるようにしよう。取扱い商品を買えるようにしよう。飲めるようにしよう。飲んでばかりではアレなので、フードも出そう……と飲食店の機能も持つようになった。
入って向かいの壁一面が全て冷蔵ケースになっており、缶とボトルが100~120銘柄! どれもアメリカらしい大胆かつ奇抜、あるいはコミカルなデザインのラベルばかり。さらに最大8つのケグ(樽)がタップに繋がれており、つまり日本国内では稀少なアメリカンクラフトビールの「樽生」が飲めるという……もう行くしかない!
場所は中華街からも遠くないJR関内駅の反対、伊勢佐木町の界隈。商店街「イセザキ・モール」から少し入った古いオフィスビルの5階。まさかこんなところに"そんなパラダイス"があろうとは……。
エレベーターで5階へ。元は事務所用のスペースを2部屋つなげた広々した店内。床はオフィスでよく見るパンチカーペット。以前は照明は白色の蛍光灯だった。そこに止まり木の机・椅子。カウンターの向こうに樽生のタップが全8つ。そして壁一面の冷蔵ケースの中に瓶・缶ビールが100~120種類!
さらにブルワリー各社のグッズやカッコイイTシャツ、ビアグラス。さらには各社が作る調味料やソース、ビール以外のスピリッツなども売っていて、さながらアチラのスーパーマーケットの売り場でも見るかのよう。
こんな時、人間は「鬼」になれるもの。運転手であるGAO隊長には年越し用のビールをたんまり買い込んでいただくとして、助手席に収まる私は迷わずイートイン。
ビールの「あて」は乾き物などスナックが6品。調理を要するフードメニューは「チキンウィング」「コロナドフィッシュタコス」「ビアドッグ」「ワッフルフライ」そして「スーパーオイシイバーガー」の全5品。バーガー、ウィング、ドッグはナガノトレーディング創業者・Andrew M. Balmuth(アンドリューM. バルマス)氏の監修。
頼んだのはもちろん「スーパーオイシイバーガー」670円。
このバーガー、サンディエゴ"STONE BREWING"が製造するソース、マスタード9種類より好みの1種を選んでかけることができる。つまり9通りの味が試せる次第。今日は"STONE CALI-BELGIQUE IPA"で造ったディジョンマスタードを。
USビーフ100%・100gパティは細かな挽きの粒の集合。上から覆う白いチーズは米国産のハバーティ。ふわっと軽い食べ口もシブ~く堪らぬイイ味わい。そこへ「から酸っぱく」ディジョンマスタードがキュッ! と。グリルしたオニオンを挟んでその上下で「酸っぱい塩気」がギュッ! と利いている。
付け合わせに"井型"のワッフルポテトがどっさり。丸1本付いてくるピクルスがこれまた塩気と酸味が利いたオイシイやつなのだ。「キューッ!」と言うより「チューッ!」と酸味! "simple"で"not fancy"な「普通の火曜日に食べる」バーガー。でも稀少なクラフトビールの数々と合わせれば、まさに極楽!
バーガーのお供は加州"SIERA NEVADA BREWING"の冬季限定"CELEBRATION ALE"の樽生。これらを手に向かうは6階。アメリカンサイズのムダに大きな机椅子、フーズボールなどのコインゲームが置かれた、一見会議室のようでもあるガランと広い一室へ。
その大きなガラス戸の向こう、テラスより差すは日光。その先は遮るもののない大空。雑多な伊勢佐木町の街並みを眼下に置いてなお余りあるこの眺望。ここは羽田空港にも匹敵する空と太陽の贅沢な空間、そして最高のビアガーデンだ。真冬の青空とやさしい日差しに抱かれながら飲むクラフトビールは味わい格別! 気分爽快! それは森高!
最後にもう一度……Don't Drink and Drive. 飲む時はどうぞクルマは置いてお越しを。ナガノトレーディングこの冬おすすめのビールを全部で3品ご紹介いただいたので、「飲酒運絶対転許しません!」という人だけ以下の「ギャラリー」の10枚目の写真を開けてご覧いただきたく……さぁ、この冬はビール!
< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >
― shop data ―
所在地: 神奈川県横浜市中区吉田町5-4 第六吉田ビル5F
アクセス: 首都高神奈川1号横羽線・横浜公園出口より4分
駐車場: ビル隣にコインPあり
TEL: 045-315-5228
URL: http://www.antenna-america.com/
オープン: 2013年2月14日
* 営業時間 *
月~金: 15:00~23:00(フード22:00LO)
土曜日: 11:00~23:00(フード22:00LO)
日祝日: 11:00~22:00(フード21:00LO)
定休日: 無休(要確認)