ジムニーはどう進化するのか
JB43のシャシーを使った「X-LANDER」。HVシステムの4WDを搭載している。僕ら探検隊が、この東京モーターショーで最も注目したのがスズキブースに展示されている「X−LANDER」だ。このコンセプトカーは、次世代ジムニーのスタディモデルと言われる。ベースシャシーはJB43シエラで、同モデルと同じ1.3ℓエンジンを搭載。さらにパートタイム4WD式にハイブリッドシステムを組み合わせた、新世代の4WDシステムを採用しているのが特徴だ。
聞こえ漏れてくる噂では、JB型の次のジムニーは開発が進んでいないらしい。だが、ジムニーはスズキが世界に誇るコンパクト4WDであり、日本のみならず世界にファンが多くいる車種だ。新型を望む声が多いのは紛れもない事実だ。だが、ネックになるのは安全性などを十分に確保した新型のプラットフォームの開発。
ラダーフレームを持つ本格4WDのジムニーは、他モデルとプラットフォームを共用することがなかなかできない。つまり専用プラットフォームになってしまうわけで、となると開発コストも跳ね上がってしまう。メーカーとしては経営上、そこにどうしても注視してしまうわけだが、エンジニアの中にはジムニー継続に情熱を持っている人も少なくない。
スズキ・四輪技術本部四輪デザイン室の石川猛さん(左)と遠藤拓磨さん。X-LANDERのデザインを担当した。スズキ・四輪技術本部四輪デザイン室の石川猛さんと遠藤拓磨さんも、そんなエンジニアたちだ。ジムニーを心より愛し、未来に残したいと考えている。そんな二人がデザインしたX-LANDERには、ジムニーの新しい姿が隠れている。
エクステリアを設計した石川さんは言う。「X-LANDERはジムニーのDNAを継承しながら、ハイブリッドという新しいシステムを搭載したコンセプトカーです。街だけでなく、オフロードをアクティブに楽しく走れるクルマとして開発を進めてきました。エクステリアもJB型のスクエアなだけのデザインではなく、ちょっと筋肉質な、新世代のハイブリッド4WDらしいスタイルを提案しています。」
まだまだ夢の世界の話だが、ここから次世代ジムニーが生まれるかもしれない。インテリアをデザインした遠藤さんが話を続ける。「インテリアは機能的な防水素材やスポーティなヘッドレスト一体型のシートを採用しました。太いピラーを中心としたデザインになっており、全体的に4WDらしいタフなイメージにしています。注目していただきたいのは、メーター左右にあるモニターで、車両前部、左右ミラーに設置したカメラの映像を見ることができます。これはオフローディングの時に目視できない周囲や路面状況を確認するためのものです。これを録画して、すぐにSNSなどにアップすることもできます。」
ジムニーユーザーたちの使い方とニーズを十分に考えた、理想のジムニーというわけだ。
石川さんはあくまでも個人の考えとしながらも、次世代ジムニーへの考え方を次のように語った。「ハイブリッドというシステムは、地球に優しいというメリットを持っています。ですから、クルマを使ったアクティブな楽しさというものを、改めて若い世代に提案できるのではないかと
思っています。ジムニーが将来的にもワクワク感を伝えられるクルマになるよう、これからもモノ作りをしていけたらいいなと思っています。」
まだ若い二人なので、時間はかかってもきっと楽しい次世代ジムニーを創ってくれるのに違いない。軽自動車という枠の中では難しくても、シエラサイズで進化していくのもいいかなと個人的には感じる。ジムニーという名車が未来永劫続いていくためにも、皆さんも東京モーターショーのスズキブースを訪れて、その熱い思いをスズキにぜひ伝えてほしい。
東京モーターショー2013探検ギャラリー
コンパクトSUVとして出展された「Crosshiker(クロスハイカー)」。スズキブースには、さらに2台のコンセプトカーが展示されている。そのうちの1台が「Crosshiker」だ。2011年の東京モーターショーに出展された「REGINA」のシャシーを流用したコンパクトSUVで、軽自動車なみの800kgという車重を実現。エンジンは1ℓ直3を搭載しているという設定だ。
このスタイルを見ると、かつて同社から発売されたX90を思い出すが、実はこのコンセプトカーには裏テーマがあるのではないかと個人的に読んでいる。ジムニーのラダーフレームシャシーが新たに開発されない場合、当然ながら車種継続をどのようにするかがスズキのテーマとなる。その場合、フレームインモノコックを採用するというのもひとつの選択肢となるだろう。
軽自動車なみの車重といい、1ℓエンジン搭載という設定といい、JB23と43という現在のラインナップを踏襲するというシナリオが見えなくものない。しかもX-LANDERに比べると現実的なデザインだし、このまま市販化されてもおかしくない。さすがにインテリアは絵空事だったが。
これが時期ジムニーというのはもちろん賛否両論湧き出るだろうが、いずれにせよ会社以上にエンジニアたちは小型4WDの継続を望んでいるということではないのだろうか。
コンパクトSUV「iV-4」はかなりの確率で市販化間近だ。さて、残りの1台は「iV-4」。これは次期エスクード、もしくはそれに代わるコンパクトSUVに違いない。その根拠は、リアのクオーターウインドウとフェンダー付近のデザイン。初代エスクードのそれにそっくりなフォルムが見えている。初代に回帰した、デザインオマージュなのではないだろうか。
詳細は不明だが、スズキの次世代4WDシステム「オールグリップ」を搭載していると資料にはある。これはアクティブトルクスプリット型の4WDシステムと、ABSの逆転を使ったトラクションコントロールを組み合わせたものと考えられる。すでにSX-4クロスS(日本未導入)に採用されている。
このシステムはレンジローバーやランクル200などで使われ始めたが、現在ではエクストレイルなど中堅クラスの4WDでも使われており、すっかりベーシックなものとなった。
現在、ヨーロッパ市場を中心としてコンパクトSUVが活況を呈しているので、近い将来にミラーやタイヤなどを変更して、ほぼこのままの形で販売されるに違いない。
スズキブースにはこの他に、ワゴンRのプラットフォームを使ったクロスオーバー「ハスラー」も展示。こちらは来月末に販売が決定しており、河野隊長も注目している車種だ。今回のスズキブースは国内メーカーの中でも相当力が入っている。ぜひ皆さんもチェックしてほしい。
モーターショー直前に発表されたばかりのイスズの海外向けSUV「MU-X」。モーターショーの醍醐味は、普段目にすることのできない大型車両や海外向けモデルが見られることだ。二輪車が並行輸入で比較的簡単に海外モデルを購入できるのに対して、自動車はなかなかそうはいかない。だからこうした機会は貴重なのである。
まず最初に目が留まったのが、イスズブース。イスズは数年前に国内向けの乗用車販売をやめたが、海外には小型トラックやSUVを今も供給しているのだ。ブースには先日発表されたばかりの新型SUV「MU-X」が鎮座。このモデルは、2011年から生産されているピックアップトラック「D-MAX」のシャシーを共用している。
MUという名前は付いているが、昔の面影は微塵もない。それどころか、日本でも欧米でも十分に通用するデザインとなっている。しばらく会わなかったら、すっかり垢抜けてしまった中学時代の同級生みたいな感じである。
同モデルはアジアやオーストラリアなどで販売されるが、オーストラリアでは3ℓ4気筒ディーゼルターボが搭載されるパートタイム4WD。本格4WDのキャラは失っていないようだ。日本でも十分に通用しそうなので、海外専用モデルというのはちょっと残念である。
ポップなカラーは日本にないもの。まるでトミカみたいな「FI」。
災害時のことなどを考えたフォワードの6×6。こういうので一度クロカン走行をしてみたい。
東京モーターショー2013探検ギャラリー
12月24日に発表が決定しているスズキ「ハスラー」(発売は2014年)。本格4WDではないが、売れそうな気がする。
レンジローバースポーツもついに日本発表。オンロード性能重視のクロスオーバー的モデルになった。
今回一番心に刺さったトヨタのコンセプトカー。アインシュタインも草葉の陰でお喜びだろう。
眼鏡っ子の後ろにあるのは、ガンダムでお馴染みの大河原邦彦氏デザイン。
薬品メーカーの興和がテムザックというメーカーと協同開発した電気自動車。
「コンセプトGC-PHEV」という三菱自動車のコンセプトカーは次世代パジェロと言われている。
「Dunk」という新型50ccは、どう見ても初代リードSS。結局、'80年代に勝てないのか。
河野隊長を釘付けにしたホンダのF90耕運機。1966年製でホンダ初の空冷ディーゼルを搭載。
ヤマハも「MOTIV」で四輪市場参戦。いかにもヤマハらしいデザイン。
米映画で無法者の狩猟集団が乗ってそうな「VIKING」。700ccで4WD、海外向け。
ケン・オクヤマ氏デザインのkode9のトラクター。ジャッジドレッドばりで、農業が楽しくなりそうだ。
我らが菅原選手のレンジャーも展示されている。さて、隊長はどーこだ?