今先の宿泊先は山の中に建つ一軒宿の船山温泉。
平日もほぼ満室になるというが、利用すれば誰もが納得すること間違いなし。
質の高いサービスに加えて、確かな情報を提供してくれたのだ。
Yカメが選んだ宿は南部町にある船山温泉。舗装された林道を走った山の中、船山川沿いに建つ一軒宿だ。平日でもなかなか予約が取れないほどの人気を誇っている。
高い人気の理由は色々ある。まずは温泉だが、内風呂と露天風呂を備えたふたつの大浴場(時間で男女入れ替え)、貸し切りの内風呂と露天風呂と6つの湯船を備えている。料理は旬の食材を活かしたメニューで、独自のエッセンスを盛り込んでいるのがポイント。山の温泉宿にありがちなメニューとは一線を画していて、味付けも実に素晴らしい。
団体客や子供(小学生以下)の利用は受けないため館内はとても静か。そのため『オトナの旅の楽しみ方』を熟知した人のみが訪れるのであろう、我々が訪れた時も満室だったが大声を上げる人は皆無。とてもゆったりと過ごすことができた。
何より感動したのがスタッフの接客だ。スタッフは若い人ばかりでハキハキとしていて、気配りや笑顔が素晴らしい。チェックインが13〜17時と早く、それでいてチェックアウトが11時と遅いのも見逃せないポイント。とにかくのんびり優雅なひと時を過ごしたい人には最適な温泉宿である。
船山温泉の館主は我々と同じ世代でクルマ好きということもあり、話が盛り上がった。そして教えて貰ったのが、近場にある『ここは絶対にお勧めの名店』と『ダートの林道』である。
お勧めの名店は『うなぎ屋』。館主曰く「店の見た目はボロで敬遠したくなるけど、味はとにかく一品です。他の店とは違います!」。
評判の良い温泉宿の館主が勧めるのだから絶対に間違いはないだろう! と2日目の昼食はそこに決めた。8時に朝食を取り、お腹がこなれたら温泉に浸かる。毎度のことだが、朝から贅沢なひと時を過ごした。
平日でも人気店だと並ぶかも…と不安がよぎったので、やや早めにうなぎ屋へ向かう。店の名は『うな富士』。県道52号線沿いに店舗を構えているのだが、確かに建物は古いが、想像していたよりボロくはない。とは言え、何も知らなかったら入るのはためらう。『やたら美味いか、やたら不味いかのどっちかだ!』と賭けてみたくなる店構えである。
店内は4人掛けのテーブル3つと、座敷に4人座りテーブルが2つ。すでにテーブルは満席で座敷に座った。注文したのはうな重。『うなぎ』は関東風と関西風があるが、この店はどちらなのだろう? 山梨県だから、やはり関東風かな? でも静岡に近いから関西風の可能性もあるような?
筆者はどちらかを選べと言われたら関西風を挙げる。関東風のふんわりした柔らかさも良いが、蒸していない関西風の香ばしくてパリパリとした歯ごたえの方が好きだ。
うな富士の調理方法は、筆者好みの関西風。噛みしめるとパリパリとした食感とともに香ばしさとウナギの甘みが口の中にジュワ〜と広がる。美味〜〜〜い! 肉厚だから歯ごたえが十分で、噛むほどに旨みが滲み出てくるのだ。近年食べたうなぎの中で一番美味かった。3,562円といい値段だが、数値以上の満足感であった。
河野さん、Yカメの両名もうな富士のうな重に大満足の様子。そして河野さんは他の仕事のため、ここでお別れ。「これから林道ですよね? 気をつけて!」とやや寂し気な顔で走り去っていった。『河野さんの分も楽しんで来ますよ!』。
船山温泉の館主の言うことは正しかったから、教えてもらった林道も期待が持てる。その林道は、船山温泉の脇を走る道だ。実はYカメから船山温泉に泊まると聞いた時、脇を走る林道は宿から先がダートでは? と予想した。それが当たりだったのだ。
船山温泉を過ぎるとダートに変わり、少し進むとY字になる。右を進むとすぐに行き止まりになるが、交通がほとんどないので、かなり野趣的とのこと。その言葉通り、路面は枯れ落ちた草木に覆われている。非常に荒涼とした雰囲気だ。もう少し走りたかったが、500mほどで行き止まり。そのままUターンして、今度はY字の左へ進む。こちらも行き止まりだが、そこそこ距離があり、雲がなければ富士山が望めるという。
こちらは林業で使われているため整備が行き届いている。しかし針葉樹に覆われていて、なかなか視界は広がらない。「おっ! 見えるか?」視界が広がっている場所が数カ所あったが、富士山は見えない。しばらく走るとナビ画面での道は行き止まりを超えた。林業用に道が延びているのだろう。傾斜がきつくなり、ヘアピンカーブを曲がろうとしたら助手席のYカメが「あっ、見えた!」。
近くで連なる山々の上から、まだ雪化粧の残る富士山が顔を覗かせたのだ。運が良いことに山頂までバッチリ見える。ハッキリ言って構図はイマイチだが、富士山を望める林道(ダート限定)は意外と少ない。今度はカッコイイ富士山が撮れる林道探しの旅でもやってみようかな?