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12.12.28

【番外編】四国林道ジムニーの旅【その3】

龍馬脱藩の道を走る

翌日。我々は朝一番に“超”協力な林道案内人に合流した。山田徹さん。ご存じ、SSERの代表者であり、世界中からファンを集める偉大な草ラリー “ラリーモンゴリア” の主催者の登場である。九州4DAYSに北海道DAYSなどなど、今や国内きってのラリーイベントと言われる催しを全国各地で展開するSSERだが、その拠点は愛媛。伝統の四国4DAYSでは、四国のありとあらゆる林道を駆使。もう、ツーリングマップルなんぞ見なくてもあらゆる林道が頭に入っている方なのである。

その山田さんのランクルが僕らを先導してくださる。これは四国林道を旅する者にとってもう、願っても叶わない事態なのだ。その山田さんが、とっておきの林道を用意してくれた。なんと「龍馬脱藩の道」だという。ええ!! 走っていいんですか!? 驚く我らに「もちろん」と力強い答え。譲原から韮崎を経て大洲へ向かう脱藩道の中で、林道としてクルマで辿れる部分があるのだという。ただし、松ヶ峠の関所跡付近から先は凄まじい難所だった。

「ここ3年は誰も走っていないね」前走する山田さんからの無線だ。草が生い茂り、正しいラインを見つけるのが難しい。フロントガラスには木の葉がバッサバサ当たり薮っこきも激しい。雨も本格化してきた。

龍馬の脱藩は今からちょうど150年前のことだ。26歳の若者が大志を抱き歩んだ道を…と描写したいところだが、あまりの荒れ方にただただ圧倒され続けた。そして現れたのが50m程続く岩とガレ場の下り坂。一度下れば登るのは不可能な激しさだ。ただし、その先は普通の林道。1台ずつ誘導しながら降りることになった。「そこ右!」「違う違う、もう少し先行ってからフルステア」。緊迫した声がこだまする。

恐らくノーマルのジムニーでは無傷で下れなかっただろう。ところがアピオのジムニーはやや大きめのタイヤを履き、サスも適度にリフトアップしている。腹下はおろかサイドシルすら擦らなかった。対地障害角に優れた前後バンパーも本当に役に立った。僕は脂汗に冷や汗と、いろんな汗をかいていたが、このジムニーを新車カスタムカーとして世に提案している河野さんは「我が意を得たり」とばかりに笑っていた。そしてこれが物語のクライマックスとなった。

体は小さくても夢は大きい

やっぱりジムニーは凄い。まさか龍馬脱藩の道をクルマで走れるとは思わなかった。お門違いなことは重々承知の上で言わせてもらうが、これはトヨタ・センチュリーが逆立ちしたって真似できることじゃない。今ドキのなんちゃって四駆で挑んでもまず間違いなく壊れていただろう。やっぱり、ジムニーは唯一無二の存在なのだ。

もちろん、ビギナーの皆さんにこんな無茶をして欲しいとは思っていない。そしてベテランの皆さんにも走るべき場所とマナーはキッチリ守って欲しいと思っている。レベルや楽しさはひとそれぞれ違っていて、それに応じて楽しめばいいだろう。クルマも同じ。ノーマルを楽しみながらレベルに応じてコツコツ改造するもよし、圧倒的に改造費が安くなる新車コンプリートカーから楽しむもよし。どちらだろうと、ジムニーは非日常の世界へ僕らをいざなってくれる。僕も十分にジムニーを知っていたつもりだったが、今回の旅でまたさらに好きになってしまった。

ジムニーと自動車文化と。その話題はまた次の機会へ持ち越そう。ただしこれだけはハッキリ言える。ジムニーは決して「無駄」な性能を持っているワケではない。人間は夢を食べながら生きる動物だ。その「夢」をどのクルマより身近に、そして鮮やかにカタチにして見せてくれるのだから。

旅の友、TS4

ROADWINショックアブソーバー RE50

旅の友、TS4。実はこの時、発表前の「ROADWINショックアブソーバー RE50」を装着していた。このダンパー、もう多くのインプレが出回っているので皆さんよくご存じと思うが私は正直舌を巻いた。

四駆の世界では「街での乗り心地がいい」と称していたずらに減衰力を抑えたダンパーも多い。それらはラフロードに行くと即座に減衰力不足を露呈。足がバタ着いて接地感が希薄になったり、ガレ場で乗り心地が極端に悪化したり、トラクションがかかりづらくなったり、あるいはちょっと攻めた時にフルバンプして挙動が乱れたりする傾向にある。がしかし、コイツは素晴らしかった。減衰力の効かせ方がいい。姿勢が安定し、安心して林道を走れる。かといって細かな振動はボディーに伝えない。ガレ場をしっとり走らせる、という意味で今まで林道を走ってこんなに快適だった足はない。
長距離のオンロード移動で疲れなかったのもコイツのおかげに因るところも大きい。これは、ジムニーの新しいスタンダードと言えると思う。

<文:河村 大 写真:山岡和正>

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