雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連載中の『林道パラダイス』との連動企画。
2025年5月の下旬、山口県、島根県、広島県をナローシエラで旅してきた。
第1弾となる今回は山口県で巡った林道を紹介しよう。
Photo & Text : 赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。
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1本目の林道は高嶺城址に登る林道高嶺線。天候はあいにくの雨だ。アスファルトで舗装されているが濡れ落ち葉で滑り気味。幅の狭い急勾配を慎重に登って行くと電波塔の建物で行き止まった。石垣が残る本丸までは歩いて登るしかない。雨が弱まるのを待ってみたが降りは強まるばかり。本丸は諦めて引き返すことにした。いったん下って林道糸米谷山線に入る。路面がウツギの白い花びらで埋め尽くされていて美しい。繁茂した枝葉を掻き分けるように進んで峠を越えた先にあった西方向への脇道に入ってみる。途中から砂利道となり坂を登り詰めると広場に出て行き止まり。障子ケ峠を越えて北へ抜けているはずの道にはチェーンが掛かっていて断念。仕方なく西へと下ってこの山塊を通り抜けた。
棚田のある大石地区の集落を抜けた先から砂利道。登り詰めると県道309号に突き当たり左折し明敷峠に出る。峠から林道鹿野豊田線に行くつもりが、南西方向への狭路を見つけ入ってみた。始めのうちはガードレールもある立派な砂利道だったが下るにつれて滑りやすい土の道に変貌。雨で水分を含んでいてグリップ感に乏しい。路肩から滑り落ちそうな気がして明敷峠に戻ることにする。舗装された林道鹿野豊田線を走り右折して林道大田東山線に入った。舗装が途切れても道幅はあり砂利が敷き込まれているので不安なく進んで行ける。雨で滑りそうな急勾配は下って行かなかったが、脇道も可能な限り楽しませてもらった。このエリアで1度だけ肝を冷やしたのは脇道ではなく本線。林道沿いの案内板を見ようと近付いて脱輪した。草が茂っていて見えなかったがU字溝があり右前タイヤが落ちて車体は大きく傾斜。雨の中でのウインチ作業を覚悟したが、4Lにシフトしてアクセルを踏むとスリップしつつも脱出できた。その後は雨乞山の西側を抜けて道の駅みとうで昼食。地元名産のゴボウが入ったゴボウコロッケ定食をいただく。食べ終わる頃には雨に濡れた体と衣服も少し乾いてリフレッシュできた。
国道490号から御器伏という山の北麓を通る道に入った。細い舗装路を行くと畑で行き止まり。少し戻って北へ分岐する道に入るとすぐ砂利道になった。西山方向への道を見つけて入ってみる。捕獲用の檻があったので狩猟のクルマは頻繁に往来しているのだろう。藪を掻き分けることなく山頂の方へ登って行くと木苺が実っていた。口に含むと甘酸っぱくておいしい。元の道に戻って北上。西方向へ続く砂利道で丘に登ると視界が広がり秋吉台のカルスト台地を見渡すことができた。引き返して北へ進み長者ケ森まであと少しのところまで行ったが、その先はカルストロードと呼ばれ一般車の進入は禁止されていた。遠回りだが県道242号で行くしかない。道すがらに見つけた砂利道に入ってみると鞍掛山に登れたが展望はなく電波塔が立ち並ぶだけだった。長者ケ森まで県道242号を走り抜けて秋吉台の美しい風景を楽しんだ後は、烏帽子岳の北側に伸びる砂利道を通って下山。時間に余裕があれば秋芳洞に立ち寄るのもいいだろう。
ここで狙いを付けたのは林道荒ケ峠線。美弥市と長門市の境にある荒ケ峠を越える林道である。美弥市側の県道36号から入るとしばらくは舗装路。上空を横切る橋のような構造物が気になって地形図を見るとセメントベルトコンベヤーとある。鉱山から海辺のセメント工場まで石灰を運ぶ施設のようだ。ほどなくして舗装は途切れ道は荒れてくる。雨は降り続けていて脇を流れる沢の勢いは激しい。走る車両は少ないのか廃道のような状態で、幾つもの倒木をどかしながら登って行く。ヤマビル対策も兼ねて長靴を履いているので足元は濡れないが、倒木のたびに車外に降り立つので服はずぶ濡れだ。それでも何とか荒ケ峠に到達。長門市側へ下り始めると倒木はなくなってくれたが、路面に溝を刻むように雨水が激しく流れていた。いずれは溝が深くなって通れなくなるかもしれないと思っていると、扉が閉ざされた怪しげなトンネルを発見。鉱山会社の看板があったのでベルトコンベヤー関連の施設なのだろう。その先は割と走りやすい砂利道を下って県道268号まで抜けることができた。
ホルンフェルスという初めて見る用語に興味を抱き、雨の中を向かったのは萩市の高山岬。ホルンフェルスとはマグマの熱変性で黒くなった岩石のことで、ここの須佐ホルンフェルスは灰白色と黒色の縞模様が特徴的とのことだ。高山岬の西側にある駐車場から散策路を歩いて向かうと、縞模様を間近に見るには岩場を下る必要があった。雨で滑る岩の上を歩くのはあまりに危険。滑落したら軽い怪我では済みそうもないので諦めることにした。次なる目的地は高山岬灯台。県道305号で岬の北端を目指す。灯台が近づくと家が何軒かあったが人の気配はない。灯台への道は狭く廃屋を過ぎると舗装は途切れた。道幅はさらに狭くなり路面は湿った土となる。その先を歩いて見に行くと海側に少し傾いた道となり滑り落ちてしまいそうな感じだ。断念した方がいいだろうということで撤退。ここに来た目的のもう一つは東側へ通じていそうな道だ。その道に入るとすぐに枝葉が繁茂。倒木も多くて突き進むのは困難と判断せざるを得なかった。続いては磁石石があるという高山だ。舗装路を登り詰めると駐車場に到着。そこから砂利道となるが車両の通行は禁止されていた。山頂までの標高差は30m。雨が止んでくれたので歩いて行ってみることにする。10分足らずで登頂。霧で展望はなかったが磁石石を見ることはできた。磁性を持つ鉱物で国の天然記念物に指定されているとのことだ。最後は高山岬の東側から北端を目指すべく、国道191号から行者様という山へ続く道に入った。民家を過ぎた先からは車両の往来がないようで行く手を阻む倒木がちらほら出始める。舗装が途切れると少し荒れた路面となり倒木が増えてきた。時間を惜しまず倒れた木をどかしながらゆっくり進んだが、道筋が西へ曲がり始める辺りまで来ると倒木に加えて路面がV字溝のような有り様。しばらく車両が入り込んでなさそうだ。これ以上の前進は困難だろう。北端まではあと2km弱のはずだが引き返すことにした。