ロサンゼルスに24年。
地元紙の”TOP10シェフ”にも選ばれたMICHIシェフが作るカリフォルニア料理は、
スパイスの風味豊かで上質、かつ大胆!
「噂の東京マガジン」ではないが、APIOジムニーライフの"ハンバーガー班"も話題続きのあの新国立競技場建設予定地、つまり国立競技場の跡地へ行ってみた。もちろんAPIOジムニーコンプリートカーTS7「ハンバーガー号」で――。
銀座線外苑前(がいえんまえ)駅上で待ち合わせた私とGAO隊長。昨年閉館した外苑前の象徴「ベルコモンズ」があった南青山三丁目の交差点を外苑西通り、通称「キラー通り」へ折れて北進。 心霊スポットと噂されて半世紀が経つ千駄ヶ谷トンネル(1964年、先の東京オリンピックの際に整備・開削された)へは曲がらず、仙寿院の交差点を右折して明治公園の方へ。突き当たって日本青年館前の交差点を左に曲がると、本来なら見える筈の競技場が……無い。向こうは空。手前の信号機は袋を被っている。道なりに進んでももちろん無い。霞ヶ丘はなにしろ空き地だった。 連日の報道でイメージばかり膨らんでいるせいか、囲いの中をいざ覗いてみると案外と狭い。まぁでもよく考えたらちょっと大きめな運動場があっただけの場所である。しかし5年後、2020年に開催される東京オリンピックの、すなわち世界の中心は間違いなくココである。愛でなしに一体何を叫ぶと言うのか――。 なお、来年2016年の日本上陸が伝えられるNYのハンバーガーチェーン"Shake Shack"は日本1号店を明治神宮外苑内にオープンする。明らかにオリンピックを狙った立地である。外資・外食各社もこれに倣い、競技場を取り巻くこの一帯に相次ぎ出店するに違いない。新競技場の周辺はちょっとした外食戦争の戦場となることだろう。
生まれは東京。この辺り。都内の有名レストランで働いていたところ、日本のレストランが大好きなアメリカ人に「店ごとガバッと」スカウトされて、1982年、師匠に着いて渡米したのが伝説の始まり。このとき師事していたのが、かの山本秀正シェフ。そしてLAにできた店が「Chaya Brasserie Beverly Hills」である。山本シェフはすぐにワシントンD.C.のリッツカールトンに引き抜かれて去るが、MICHI氏はCHAYAに残り、やがて料理長を6年務めた。 そして独立。"Michi Manhattan Beach"というフレンチレストランを開業する――。
英語も話せなければ、特にアメリカ好きでもなかったMICHIさん。当初は全くアメリカに関心が無かったのが、しばらく滞在して思ったことが「商売が面白い」。当たると日本の比じゃないくらいに儲かる。アメリカ人はお金の落とし方が尋常でない。特にお酒。実によく飲む。リピート率が極めて高く、週に二度も三度も来てくれて、気に入ったものばかりを食べる。 "Michi MB"はテーブル60席、バーだけで40席という大箱。開店とともにすぐに流行って年商2.5億円という大ヒットとなった。稼いだ時は一晩で100万円、昼だけで30万。 一方でアメリカはチャリティの国。年に3つくらい積極的にチャリティに参加し、その都度200万円くらい自腹を切って料理を振舞った。但し会場にはハリウッドスターをはじめ著名人・セレブが多数訪れて、これが縁で贔屓になってくれたりもするので、悪くはない。アメリカは日本と比べ飲食店の数は少ないが「生き残るには自分の色を出さないといけない」。日本のようにどこも似通ったメニューではダメとMICHIシェフ。
"Michi MB"は11年営業。日本に残した親の心配もあって、流行っていたが閉めて帰国。そして2009年に外苑前に「E・A・T」をオープンさせた。なおアメリカ滞在時、72年の"ナロー"から乗り始めて8台乗り継いでいるのは、そう、ポルシェ。 最初のE・A・Tは席数13、MICHI氏一人でも回せるよう設計したスタンドのような小さな店だったが、昨年秋に青山通りを挟んだ向かい側に当たる今の場所に引っ越した。席数は約40に。 カリフォルニアダイナーである。フレンチレストランをやらなかった理由は「後継者を育てるのが大変」。カリフォルニアのメキシカンは「キャルメックス(Cal-Mex, California Mexican)」。タコスやブリトーはもちろん、ほぼすべてのメニューにメキシコ産の香辛料を店でブレンドしたオリジナルスパイスが使われている。香り実に豊か。
オープン以来の売りは「神戸牛」。プレミアム神戸牛バーガーでそれを堪能することができる。パティシングル1,944円、写真はキャラメルオニオン&デミグラス216円のトッピング。 パティ125g。神戸牛100%では上の値段ではとても出せないので、神戸牛6割、残りの4割をなんと国産の黒毛和牛で割っているというから狂っている。その6割の神戸牛の部分に当たると脳味噌がとろけるようなおいしさ。もうほとんど頭がおかしくなる。 そこへコリコリ歯応えのよい食材が加わったサウザンアイランドソース、赤ワイン多めのデミグラスソース、そしてじっくり炒め煮にしたキャラメルオニオンが乗っかり、もうお祭り騒ぎ。高級・繊細な神戸牛をド迫力に仕上げる辺りがMICHIシェフの大胆さ。バンズは「ブランジェ浅野屋」。ヒール(下バンズ)の上でマスタードがバッチと利いている。
とろけるような神戸牛とド派手な味付け。そのせめぎ合いにドロドロと渦巻くような"カオス"を見る、そんな一級品。ご存知カリフォルニアのチェーン店"IN-N-OUT BURGER"に影響を受けた「生のイモで作るフレンチフライ」もオススメ。
< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >
― shop data ― 所在地: 東京都港区南青山2-27-18 東急ステイ1F アクセス: 首都高3号渋谷線・渋谷出入口より国道246号線経由5分 駐車場: 外苑西通り沿いにパーキングメーターあり TEL: 03-6459-2432 オープン: 2009年7月1日 * 営業時間 * ランチ: 11:30~15:30, ディナー: 15:30~23:00(22:30LO) 定休日: なし(要確認)