鞆の浦は江戸時代の港湾施設の数々が、今もそのままで残っている全国で唯一の場所である。海辺に出るとまず目を惹くのは、美しく幾何学模様を描く石段だ。
これは「雁木(がんぎ)」と呼ばれる船着き場だ。階段状になっていることで、潮の満ち引きに関係なく船を着けて荷役ができるわけである。雁が飛ぶ様に似ているからこの名前が付けられているのだが、どの辺が似ているのか、ちょっと僕には理解できなかった。
この雁木はよく出来ていて、満潮時は最上段、干潮時は最下段になるように設計されている。雁木の上には船繋ぎ石が並んでいるが、これは明治から昭和にかけて造られたものだという。
港の突端には、鞆の浦の象徴とも言える常夜灯が立っている。常夜灯は港の入口を示す灯台で、現在残っているものは1859年に建てられた。竿柱の南側には「金比羅大権現」、北側には「当初祗園宮」の額が掲げられており、海の守護神に寄進した灯籠ということになっている。
現在は中に電灯が入っていて、夜になると往時の雰囲気を味わうことができるが、昔はニシンの油で灯していたらしい。