今回のモーターショーに夢はあるのか?
コンパニオンはショーの華。失礼ながら、今回は華やかさが足りない!?若い読者諸兄はご存じないと思うが、かつての東京モーターショーは、晴海にあった東京国際見本市という東京ビッグサイトの前身施設で行われていた。隊長や僕が幼少のみぎりは高度成長のまっただ中で、しかもスーパーカーブーム。国内にはありふれた量産車しかないのに、海外にはカウンタックLP400やロータスヨーロッパなどペタンペタンのスポーツカーがいっぱいあって、欧米自動車文化の先進性に打ちのめされていた時代だ。
クルマは庶民の高嶺の花であり、スポーツカーはその究極にあった。だからこそ、東京モーターショーは夢の祭典だった。モーターショーに行くことだって大変な事で、何せ歯磨き粉を買うと箱に割引券や招待券が付いていた時代だったのだ。山崎少年も汚い阪神の野球帽を被り、夢中になってコンセプトカーにかじりついていたものである。
10数年後、念願叶って自動車雑誌業界に進んだことで、毎回東京モーターショーを拝見できるし、かつて壇上にあったようなスポーツカーを所有する機会も得た。だが、不思議なのである。いつの頃から、モーターショーのときめきが少なくなってしまった。夢の祭典は夢でなくなり、昨今は特に「展示会」になってしまった。
トヨタが出品したコンセプトカー「KIKAI」。その奇っ怪なクルマには、メカの美しさはあるが、果たしてそこに夢はあるのか?クルマは庶民にとっても決して、高嶺の花ではなくなってしまったからだ。ちょっと頑張れば、多くの人がスポーツカーや高級車に乗れる時代。モータリゼーションと言う言葉は遙か昔のもので、自動車の進化はもはや頭打ち。自動運転は目の前にまで来ており、あと進化するとすれば「飛ぶ」ことぐらいだ。
もちろん、地球が抱えている環境・エネルギー問題を考えれば、自動車の推進機関が進化する余地はまだまだある。だがハイブリッドだ燃料電池だと、そういうエコロジーな技術ばかりを見せられても、果たして人は夢を見られるのだろうか。
いきなり冒頭からヘビーな話題になってしまったが、前述の通り、今回のショーのメインテーマは「きっと、あなたのココロが走り出す。」だ。会場を俯瞰したところでは、スポーツカーの展示が多いように感じられたが、果たしてそれはワクワクするものだろうか?
我が探検隊メンバーは、何せ2人とも趣味には小うるさい。デザインが悪いとか、そそらないとか、いつも言いたい放題。そんなジム探メンバー2人が、今回の東京モーターショーを勝手に、そして辛口に総括してみた。
注目の次期ジムニー・コンセプトは?!
スズキのブースに展示されている「マイティコンセプト」。かつてのマイティボーイを思わせるのだが、実は…?さてジムニー探検隊としては、まずはスズキのブースを表敬訪問。昨今のスズキはひいき目ではなくても、なかなかいいデザインのクルマを連発している。ハイブリッド技術も着々と進化させており、今回はスズキの悲願であるストロングハイブリッドシステムを、ソリオで発表している。まあ、先日出たばかりのマイルドハイブリッドのソリオを買った人はどうするんだ…って問題は置いておこう。
で、読者諸兄も気になるところが、やはり次期ジムニーだろう。すでに三菱ジープに迫るモデルサイクルとなっているJB23/43型ジムニーだが、あと数年で新型が登場すると噂されている。前回はジムニーのスタディモデルと思われる「X-LANDER」が出品されていたが、今回は果たしてどうなっているのか。
もちろんジムニーという名前は冠されていないが、気になる1台が壇上にある。それが「マイティコンセプト」だ。かつてスズキが販売していた、軽自動車のピックアップ「マイティボーイ」を彷彿させる名前と、後部のデッキ。おそらく来場者の多くが、トヨタ「bB」のようなデッキの付いたモデルを画策しているのか? と思うだろう。
だが、よーくボディのラインを見ていただきたい。実はこれこそ、次期ジムニーのデザインを世に問うスタディモデルなのではないだろうか。ドアシル部分は厚みがあって、現状のままでは本格的なオフロード走行には向いていないが、仮にそれを薄くして最低地上高をもっと稼いだなら…。
東京モーターショー2015探検ギャラリー
こちらは発売間近の5ナンバー・クロスオーバー「イグニス」。内装のデザインも洗練されており、非常に好感の持てるクルマだ。フロントマスク、ボンネット、そしてフェンダーからドアに続くラインも、よく見ていただきたい。実はどこか現行型ジムニーに似てはいまいか。リアデッキなんて突飛、と思うかもしれないが、もしこれがバリオルーフを使った新しいオープントップモデルの提案だとしたら…。
現行型は国内への幌車の導入がなく、一部のファンの間では残念がられている。オープンエアの気持ち良さをジムニーで復活させようという試みは、開発陣もおそらくしているだろう。
使われているシャシーはイグニスのものを共用しているように見えるが、それはあくまでもスタディモデル。次期ジムニーもラダーフレーム構造を踏襲すると言われており、従来と悪路走破性が劣るということはないだろう。
これがジムニーのコンセプトカーであるとはメーカーサイドはひと言も言っていないが、自分なりと次期モデルを想像すると、何となくこういうカタチは思い浮かんでしまう。ちなみに河野隊長は、今回のショーの中でこのクルマがオキニでイチオシ。
今さらデッキモデルが売れるとは思えないので、こうしたコンセプトをどのように活かしていくのか、すごく楽しみである。
マツダの「RX-VISION」は、RXシリーズの未来を映すコンセプトカーだ。コンセプトカーというのは、あまり絵空事のデザインでは昨今はウケない。ちょっと先に市販車としてカタチを整えて出る、と思わせるものがファンの目を惹く。今回会場を歩いて、そう思わせてくれるものが何台かあったが、日本を代表するスポーツカーの未来が見えた2台がある。
まず最初が、マツダの「RX-VISION」だ。名前の通りで、RX-7やRX-8の後継モデルのスタディモデルだ。昨今のマツダデザインのプロトコル通りに造形されており、マツダデザインが非常に成熟していることを示す秀作だと言える。
3ナンバーボディをいっぱいに使ったボディサイズで、見ようによってはS30/31系フェアレディZにシルエットに似ている。まあ、王道のスポーツカーのフォルムだ。たしかに美しくもある。
しかし、だ。この隣にはこれ見よがしに「コスモ・スポーツ」が展示されており、いやが応にも比較するようになっている。たしかにハッチバックスタイルというのは、歴代のRXシリーズを踏襲しているが、本格スポーツを標榜してきた同シリーズが、いきなりこんなサイズアップというのは、ファンへの裏切りではないのか。
またこのショーでは結局、事前に盛り上がっていた新ロータリーエンジンの実際の展示もなく、あまり実のあるものではなかった。新型ロードスターがダウンサイズによって同社ラインナップでスポーツカーの主役の座を確立していることを考えれば、もはやRXシリーズが継続するにはサイズアップしかないのも理解できる。だが、この肥大ぶりはいただけないと思ってしまうのである。
「NISSAN CONCEPT 2020 VISION GRAN TURISMO」は、次期GT-Rを思わせるフォルムとディティールを持っている。さて、もう1台の注目モデルが「NISSAN CONCEPT 2020 VISION GRAN TURISMO」だ。実はこのモデル、ゲーム「グランツーリスモ6」とのタイアップで製作したのだが、果たしてモニター内の絵空事なのか?
デザイナーはもちろん様々なことを考えていると思うのだが、こちらもよく見ると、各部にGT-Rの面影を感じることができる。もちろん、バットマンカーみたいでこのまま市販できるわけはないが、次期モデルの方向性をなんとなく窺えるデザインではないだろうか。
日産はル・マンのプロトマシンクラスで積極的な活動をしており、そのマシンの人気も高い。そうしたエッセンスが市販車に取り入れられることは、ファンにも大歓迎のはず。そして、それが市販車として具現化できるのは、GT-Rだけだ。
このモデルを見ると、サイドウインドゥ、ヘッドライト、テールランプの形状が、明らかに現行型GT-Rを意識していることが分かる。スカイライン時代から脈々と受け継がれてきたGT-Rのアイデンティそのものだ。
現状ではシャー専用ゲルググだが、これをもっとソリッドにしていけば、何となく次期GT-Rが見えてくる気がするのだが。
国産ネイキッドとしては久しぶりの新モデルとなりそうな「コンセプトCB」。基本に立ち返ったシンプルな意匠が美しい。
上:久しぶりに新モデルが登場した「CRF1000L Africa Twin」。下:大人のホビーとして気になる「GROM 50 Scrambler Concept-One」。

上:日野の「プロファイア・ハイブリッド」。下:UDの「クオン・ビジョン」。どちらも細部まで美しい造形がされている。
東京モーターショー2015探検ギャラリー
探検隊が最高賞をあげたいのが、このアイデア。マイクロEVシャーシ105型はボディをスライドさせることで、広い空間ができるというキッチンカー。このアイデアはキャンピングカーにも使える。
VIZIV FUTURE CONCEPTを観て、隊長は「もしかして後ろの切れ目から後部が開くのでは?」と言うのを「まさか」と笑った僕だが、この通り…。すごい。
どういうわけか僕は移動販売車が好き。その機能性が楽しい。ダイハツのその名も「テンポ」は、肉巻きおにぎりを売るのも楽しくなるクルマだ。
市販化はないとの噂もあるS-FRだが、これは楽しそう。86も飽きてきたので、ぜひ販売していただきたい。
やはりヤマハデザインは美しい。トヨタの販売網を利用して、ぜひ市販化してもらいたい「SPORTS RIDE CONCEPT」。エンジンは間違いないはず。
もはやSFとしか思えない三菱ふそうの「スーパーグレートV スパイダー」。作業用途に合わせて、様々なアタッチメントが使える…ということらしい。
さて、このクルマは何でしょう? これがビフォー。答えは次の写真。
ジャーン、なんとトランスフォーム! eXmachina CONCEPTは乗れるロボットを目指して造られた電気自動車。
隊長が食いついていたのが「ホンダ MBEV (モバイルバッテリーEV) コンセプト」。同車のカブEVと共用のバッテリーシステムで動く。
オートジャイロでバランスを取る次世代の一輪車「ナインボット・ワン」。これはちょっとブームになるかも。
70系ワゴンのボディをベースにしている「ランドクルーザーXJ700」。トヨタ車体のコンセプトカーだが“なんか違う”感がいっぱいだ。
今回一番たまげたのが、グッドイヤーの「トリプル・チューブ」というタイヤ。中に3つのエアチャンバーが入っていて、路面によって形状を変化させるという次世代のタイヤ。