大地の芸術祭に出品されている作品には、いくつかの傾向がある。自然に融合するように立っているオブジェ系、使わなくなった建物を利用して、その中に造られた空間系、そして建築系だ。
まず最初にご紹介するのは2番目のタイプ。松之山地区にあった旧東川小学校をまるごと使った作品である。題名は「最後の教室」。フランスのクリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマンの共同作品だ。
小学校の1階から3階、体育館を巡るように観る作品で、人間の不在を表現しているという。入口は体育館で、扉を開けて中に入ると、いきなり真っ暗。思わずビビって受付に戻ると、愛想のいいご老人2人が「順路は中を通って、先です」と言う。
またまた暗闇の中に戻ったのだが、周囲は見えないし、足元はフカフカしていて気持ちが悪い。前に進めと言ってもどうにもならない。すばらしく立ちすくんでいると暗順応してきて、うっすらと様子が見えてきた。それが写真上である。ベンチと扇風機が藁を敷いた体育館に並んでいる。
どういう意図があるのか作家にしか分からないが、何だか琴線に触れる作品だ。先に進むと点滅する赤いランプやら何やらがあって、何ともおどろどろしい雰囲気。一緒に回っていた女の子などは絶叫号泣である。
3階に行くと、白いシーツと蛍光灯が並べられた教室があり、これがまた何だか心にじんわりと来る。
この作品は2003年に一度創り、2006年にリメイクされたものらしい。2006年に作者が訪れたのは豪雪の冬で、雪に閉ざされた同地の様子にいたく感銘を受けていたという。