「ふたつの燃える山」というのが、今回の取材テーマだった。林道で行ける絶景を探すというのが、この企画の主旨だが、やはりそれは限られてくる。長野県よりも西になかなか行けないというのも、その要因になっているのだが。
いずれにせよ、今回は山岡巨匠のかねてから提案通り、福島県裏磐梯を目指すことにした。
磐梯熱海ICまで、都内から約3時間半。朝出ても、到着するのはほぼ昼。入山する前に腹を満たそうということで寄ったのが、インター下りてすぐの所にある「そば処森」。古民家調の立派な店構えで、入るといかにも東北人らしい愛想の女将が出てきた。
ここの名物は「極太蕎麦」。乱切りの田舎蕎麦はコシが強くて、個人的には大好物。だが、極太というのは食したことがない。待つこと20分。シトシトと降る雨を眺めながら、何となく時間をやり過ごす。
で、ようやく出てきた蕎麦が、写真のこれ。ざる蕎麦850円也。箸で簡単につまめるほどの太い蕎麦を、濃いめの汁に少しくぐらせて、口に入れる。
な、なんだコレは!
香り、コシ、喉ごしとも、まさしく究極の蕎麦。早食いという蕎麦本来のアプローチはできないが、もごもごと噛む感じはクセになる。汁は僕好みではなかったが、これはこれで美味いと思う。
東北も蕎麦を名産している土地が多いが、これは驚くべき蕎麦だ。池波正太郎が愛した、深川の1本うどんに通ずるものがある。東北恐るべしな逸品だった。