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ON THE STREET BURGER
VOL.012
伝説のロングライド~TSUNAMI [神奈川・横須賀]
伝説のロングライド~TSUNAMI [神奈川・横須賀]

年間7万個のバーガーを売る怪物級の店の登場。
ヨコスカネイビーバーガーを牽引する「旗艦店」とは、
まさにコノ店のこと――。

コンプリートカーTS7、記念艦「三笠」の前での一枚

今回の話はある種の成功譚、「サクセスストーリー」である。そして同時に、ある種の「ジム探」でもある。仕方ない――横須賀とはそういう街なのだ。

軍港めぐり

三笠公園とヴェルニー公園

みなと横須賀は近年「観光」で売っている。1999年より始まる「海軍カレー」、'09年スタートの「ネイビーバーガー」、さらに「チェリーチーズケーキ」と、3つの「よこすかグルメ」を万端配備。いや、その以前に、横須賀はそもそも幕末以来の「軍港」である。これ以上の観光資源が他にあろうか――。


という次第で、横須賀へ行ったら団子よりまず花、「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズをお薦めしたい。米海軍第7艦隊と海上自衛隊の艦船基地の間を船でめぐる、45分間のクルージングツアー。「よく晴れた」「風波穏やか」な日なら言うこと無し。初夏にかけてはベストシーズンだろう。

船の名は「Sea Friend V」号。軽合金(アルミ)製、42トン。速力12ノット

船の名は「Sea Friend V」号。軽合金(アルミ)製、42トン。速力12ノット。乗ると例えばこんなものが見られる――。


下の写真、上は海上自衛隊の「おやしお」型潜水艦。下は米海軍のイージス艦。左が「ステザム」、右「マッキャンベル」。ともにミサイル駆逐艦……ほぉら、クルーズしたくなってきた。

上は海上自衛隊「おやしお」型潜水艦。下は米海軍のイージス艦、「ステザム」と「マッキャンベル」

運が好ければと言うか、日程さえ合えば、全長333m・乗員5,000人超という巨大空母を見ることも出来る。これぞ横須賀観光の真骨頂!


現在、横須賀を母港とするニミッツ級航空母艦は「ジョージ・ワシントン」。速力30ノット以上、搭載機数85機、排水量は10万トン。その全てが桁違い。それで驚くのはまだ早い。本邦が誇る記念艦「三笠」にも是非……と来れば、今回ますますもって「ジム探」だ。

§ §


さて、港内を一巡りして陸(おか)に上がると、急にお腹が空き出すから不思議だ。ここでようやく「団子」の登場。乗船後、チケットの半券を持って「ヨコスカネイビーバーガー」各店へ行くと各様のサービスが受けられ、ネイビーバーガーを食べてから軍港めぐりに行けば、乗船料が10%オフになる。つまり「花と団子」はセットになっている次第。なかなかよく出来ている。


なお、「よこすかグルメ」は他に「海軍カレー」と「チェリーチーズケーキ」があるが、これらを一時に摂取するのはほぼ無理に近い。よくまぁ高カロリーなものばかり揃えたものだ。その辺はあまりよく出来ていない。仕方ない――横須賀とはそういう街なのだ。

波乗り"シゲ"の伝説

元はメキシコ料理店、その前は「CRUEL SEA」というサーフショップだった

米海軍横須賀基地ゲート前。日本人には「どぶ板通り」として知られるこの一帯は、米兵の間では「本町」という町名から「HONCHI(ホンチ)」と呼ばれる。そのどぶ板通り商店街で、いま最も乗りに乗っている店が、この「TSUNAMI(ツナミ)」である。


ヨコスカネイビーバーガー」を代表する一店。ハンバーガーを始めたのは5年前、'09年からで、元はメキシコ料理店。その前は「CRUEL SEA」というサーフショップだった。


店主飯田さんは「三浦で最初にサーフィンを始めた日本人の一人」という伝説の波乗りである。小学5年の時、横須賀から鎌倉の七里ヶ浜まで自転車で遠乗りしたことがあった。友人と2人早朝に観音崎を発ち、七里ヶ浜に着いたのは昼過ぎ。そこで目にしたのは、渚に浮かべた板の上に立って、打ち寄せる波を乗りこなすGIたちの姿だった。


午後の日差しにキラキラと輝く海に、シルエットになったGIが3、4人――サーフィンをする日本人のまだ無かった当時、その言葉すら知らぬ飯田少年は強い衝撃を受けて、16歳の頃にはボードを自作し、見よう見まねで波に浮かべていた。これが波乗り"シゲ"の伝説の始まりである。

人生最高の波

店主飯田さんは「三浦で最初にサーフィンを始めた日本人の一人」という伝説の波乗り

70年代に入り、日本にようやくサーフィンブームが到来した頃には、シゲ青年は波を求め、世界中を旅していた。'79年に「CRUEL SEA」オープン。サンディエゴにあるファクトリーの国内総代理店となり、ボードや服を輸入販売。'02年に今の場所に移転するが、程なくホットドッグを売り始め、やがてバーに全面改装。さらにベースのメキシコ人に教わって本場のメキシコ料理を始める……と、そこへ横須賀市役所からあったのが「ネイビーバーガー」の話だった。


'09年にスタートした「ヨコスカネイビーバーガー」は、前年の'08年、当時の在日米海軍司令官から横須賀市長へハンバーガーのレシピが授与されたことに始まる。この米軍直伝のレシピを元に基地周辺の飲食店でバーガーを売り、新たな観光の目玉にしようという、横須賀「市」を挙げての取り組みだ。


それまでハンバーガーなど作ったことが無かった飯田夫妻にとってはゼロからのスタートだった。ところが開始早々予想をはるかに上回る大反響が沸き起こり、最初の1年半で販売10万個を突破。今では年間で7万個を売るモンスター級の成功を収めるまでに至った。まさに「ビッグウェイブ」の到来だ。


さらに「海軍カレー」「チェリーチーズケーキ」にも相次ぎ挑戦。昨年には店舗隣に海軍カレーの姉妹店をオープン。「旗艦」の言葉に偽り無し。ネイビーバーガー全12店中でもエース級の、群を抜く活躍ぶりである。

TS7と早春のどぶ板通り

「ネイビーバーガー」と名乗れるのは公式レシピに記載のある材料を使ったバーガーのみ。但しそのレシピは非公開。「さまざまな味付けのハンバーガーがあふれるこの時代にあえて本場伝統のスタイルと味で挑む」と配布のマップにある通り、至って正統な、直球勝負の素朴なバーガーである。ツナミでは12品あるうちの6品が「ネイビーバーガー」。


写真は「ジョージワシントンバーガー」1,300円。空母「ジョージ・ワシントン」にちなんだ総重量580gの"巨艦"である。パティだけでハーフパウンド、227g。チーズ2枚、厚切りベーコン2枚、フライドエッグ。バンズは三浦沖で採取される"海洋酵母"で発酵させた特注。これらが醸す淡い塩気がじんわりおいしい一品。食べ応えはもちろんニミッツ級

§ §


そしてさる昨年の10月、シゲさんはインドネシアのロンボク島へ行き、御年60歳にして"人生最高"の波を当てた。乗った。メイクした――。さらに10年後、70歳になってもまだまだ波に乗っていたいと飯田さん。そう、波乗り"シゲ"の伝説のライドは今なお続いているのだ。

< 文と写真:松原好秀 写真:鈴木洋一、坂上哲也 >

TSUNAMI [神奈川・横須賀]

― shop data ―
所在地: 神奈川県横須賀市本町2-1-9
アクセス: 京急電鉄 汐入駅歩5分
駐車場: ショッパーズプラザ駐車場利用
TEL: 046-827-1949
URL: http://navyburger.com/
オープン: 2004年5月25日
営業時間:
平日: 11:00~22:00LO
土日祝: 10:00~21:00LO
定休日: 無し(要確認)

ヴェルニー公園のTS7
公園の先、汐入桟橋の乗船場まで行くと、水路こんな眺めが楽しめる
こちらが原子力空母「ジョージ・ワシントン」。近く同じニミッツ級の9番艦「ロナルド・レーガン」との交替が決まっている
片や陸路。雨降りのどぶ板通りを行くジムニー
そしてツナミ。鉄人28号と「神奈川沖浪裏」が目印
元はメキシコ料理店。ベースのメキシコ人に教わり、本場のメキシコ料理を始めた
一皿で三度おいしい1タコ、2チーズエンチラーダス、ライス、ビーンズ添えの「コンビネーション」1,200円
年間販売数7万個。土日はグリラーの上が空いている時無しという忙しさ
海軍カレー、チェリーチーズケーキにも相次ぎ参戦、立て続けに大ヒットを記録
昨年1月、大正時代築の趣きある座敷で食べる海軍カレーとネイビーバーガーの姉妹店をオープンさせた
昨年インドネシアのロンボク島で当てた「人生最高の波」。写真はホンモノ、デザインはフェイク
伝説の波乗り「シゲ」さん、ジムニーに乗る