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ジム知る
VOL.010
ジム知る 第10回:初めての4WD走行
ジム知る 第10回:初めての4WD走行

ジムニーがジムニーたる由縁は、パートタイム式4WDシステムが付いていることです。1980年代と違い、このシステムを採用している車種もめっきり減りました。2WD(後輪駆動)と4WD(四輪駆動)の切り替えを任意に行えるシステムですが、実際にどうやって使ったらいいのか分からない...という人もいるのではないでしょうか。今回は、パートタイム式4WD使用の初級テクニックについてお伝えします。

文・山崎友貴

もっと4WDにシフトしよう

おそらくですが、ジムニーを買ってから1度も4WDにしたことがないというオーナーも多いのではないでしょうか。4WDに入れるのはオフロードを走る時という先入観を持った人が、かなりいるようです。

もちろん、舗装されていない道を走るための4WDですが、何もオフロードを走る時だけ使うものとは限りません。例えば、昨今多いシチュエーションが「ゲリラ豪雨」。ドライブ中に急に大雨となって、真っ直ぐ走るのもままならないということがあります。そんな時、役立つのが4H(4WD-High)です。

ワイパーも利かないような大雨になったら、走行中でも構わないのでシフトレバーを2Hから4Hに入れましょう。4Hに入れるには、一定の条件が必要です。まず直進状態であること。左右輪に回転差がある場合、4Hにスムーズに入らなかったり、トランスファーを痛めることがあります。次に、100km/h未満であること。トランスファー内部の前輪とエンジンからのプロペラシャフトが接続するギアは、等速ジョイントで結ばれているため、走行中でもシフトが可能なのですが、100km/hを越えると回転差が生じて、やはり4Hにスムーズに入らなかったり、トランスファーを痛めることがあります。

大雨だけなく、急に雪道や凍結路に現れた場合も、やはり4Hに入れることで、安定した走りが可能です。慌てず、ゆっくりとトランスファーレバーを手前に1クリック引きましょう。

ちなみに、4L(4WD Low)に入れる場合は、一旦停車しなければなりません。停止状態で、トランスミッションをニュートラル(ATはNレンジ)に入れてから、4Lにシフトします。4Lは4Hよりも低いギアを使うため、走行中では歯車の回転数が合わず、噛み合わせることができないからです。

それと、パートタイム式4WDを使うにあたり、NGな行為があります。それは、乾燥した舗装路で4WDに入れること。パートタイム式4WDはフルタイム式4WDと違ってセンターデフを持たないため、前後輪の回転差が生じても吸収することができません。

例えば、パートタイム式4WDで四輪駆動状態にしたまま、交差点を右左折しようとすると、ギクシャクとした動きになります。これは、前輪がゆっくり回ろうとするのに対して、後輪が早く回ろうとするため、その回転差がプロペラシャフトに捻れとなって現れて回転を妨げるからです。これを「タイトコーナーブレーキング現象」と言います。

ゆっくりと曲がる分にはいいのですが、ハイスピードでコーナーを曲がろうとすると、転倒につながったり、メカトラブルを招くことになります。「晴れた日の舗装路では4WDには入れない」を、覚えておきましょう。

4Lはどんな時に使えばいい?

4Lの使い方ともなると、さらにタイミングが分からないかもしれません。結論から言えば、舗装されていない林道や深雪路、泥道などで使います。4Lにシフトすると通常よりも低いギア比になります。これにより、同じエンジン出力でも、より大きなトルクとして使うことができるわけです。

例えば、タイヤのハイトを越えるような積雪量だった場合、あまりトルクのないJB64のMTでは、雪の抵抗によってエンストしてしまう場合があります。そんな時、4Lに入れればトルクを有効に使えて、力強く前進することができるようなります。これは泥道でも同様です。

未舗装林道、いわゆるダート路では、コーナーが連続するようなシチュエーションだと、MTのシフトチェンジが頻繁になります。加えて、2速と3速のギアレシオが微妙に離れているため、どちらを選んでも中途半端な感じがします。そんな時は4Lにすることで、ギアチェンジの回数が減って、しかも2速、3速が使いやすくなります。

ただし、1速はスーパーLowギアのため、基本的に2速発進となります。また5速(ATは4速)にしても、最高速はさほど伸びません。

急な勾配のオフロードでも、迷わず4Lにシフトしましょう。特に非常に荒れた路面の道では、4Hで長く走行するとトランスミッションやクラッチを傷めることがあります。

4Lの使い途は、まだあります。それは牽引です。かつて、JB23型ジムニーが10tトラックを雪道で牽引する動画が話題を呼びましたが、自分より遙かに大きな相手を牽引できるのは、4Lを備えているからです。4Lの1速に入れると、ジムニーもシエラも信じられないような大きな牽引力を発揮してくれます。もちろんその性能はタイヤの性能(トラクション能力)に比例しますが、ノーマルタイヤでもかなりの潜在能力を発揮してくれます。

4L1速より大きな力を得たい場合は、4Lのリバース(後退)にシフトします。2H、4H、4Lに関わらず、一番低いギア比はリバースであること覚えておきましょう。

心強い機能だが、面倒でもある「ブレーキLSDトラクションコントロール」

現行型のジムニーに目玉機能として採用されたのが、「ブレーキLSDトラクションコントロール」です。これは、前後輪対角線上でタイヤが空転すると、すべての駆動力が失われてしまうという「対角線スタック」を防止するために採用されている電子デバイスです。

具体的な作動は、対角線上の前後2輪が空転すると、そのタイヤのブレーキを自動でかけることで、空転を止めてトラクションを回復させます。

オフロード走行の知識・技術が浅いユーザーにとっては非常にありがたい機能ですが、一方で厄介な面もあります。4Hの時、未舗装の急坂を登っている時に前後輪のスリップを検知すると、トルクダウン制御とブレーキ作動をECUが行うため、急激に失速して登れなくなくなることがあるのです。

またモーグルやステアケースといった激しいオフロード地形を走行中にも、こうした制御が行われるために、エンジンストールを起こしてし、むしろない方が走りやすいというユーザーも少なくありません。特に、MT車にとっては邪魔な機能とも言われてしまっているのです。

ちなみにJB64もJB74もATの方がオフロードは走りやすいと言えます。特にJB64は低回転でのトルクが細いため、MTではエンジン回転数を維持しなければならないからです。しかし、1度エンスト&停止をしてしまうと、それはなかなか難しいと言えます。その点、トルコンでトルクが増幅され、クラッチ操作がいらないATは、オフロード走行をイージーにしてくれます。

今回は、4WDシステムの基本的なことについて触れてきましたが、とにかく1度は4WDにシフトしてみることから始めましょう。河原や砂地の駐車場で十分ですので、2WDと4WDの違いを体感することから、ジムニーの新しい扉が開きます。