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ジム知る
VOL.006
ジム知る 第6回:ジムニーにおけるサスペンションの役割
ジム知る 第6回:ジムニーにおけるサスペンションの役割

クルマのカスタム・チューニングにおいて、こと重要になるのがサスペンション交換です。乗り心地、操縦性、そして悪路走破性といった部分を左右することからです。ジムニーでいえば、これに見た目という項目も加わってきます。

文・山崎友貴 

中世の馬車で考えられたサスペンション

サスペンションの主な構造物と挙げられるのが、スプリングとダンパー(ショックアブソーバー)です。これに位置決めするリンクが加わって、サスペンションは成り立っています。

サスペンションの中心的なパーツは、スプリングです。スプリングは現行型ジムニーに採用されているコイルスプリングをはじめ、トーショーバースプリング、リーフスプリングがあります。リーフスプリングは金属板の水平方向の跳ね返り(反発)を利用しているものですが、コイルスプリングとトーションバーは金属棒の捩り方向の反発を利用したバネです。

スプリングの主な役割は、乗り心地の確保です。馬車は紀元前からある乗り物ですが、かつては車輪と車軸だけというシンプルなものでした。しかし舗装などほとんどされていない古代の道を、バネなしの馬車で走るとどうなるか。車軸に負担がかかって折れる上に、車輪にもダメージがありました。また、路面の凹凸で跳ねるため、人も荷物も馬車の上で大変なことになっていたでしょう。

17世紀になると、ヨーロッパで乗用馬車にリーフスプリングを付けることが考えられました。これは主に、快適な乗り心地を確保するという目的だったようです。やがて荷役用の馬車にもスプリングの装着が広がっていき、これがT型フォードなどの黎明期の自動車に踏襲されていったのです。

スプリングは凹凸のある路面で衝撃を吸収してくれる反面、走行中に弾性が発生すると長く上下に動き続けるという特性があります。高速走行などでは、バネが反発する力大きくなるため、その揺れはなおさらです。

また、カーブなどを曲がる場合に車体にはカーブ外側に働く慣性が発生し、その影響でカーブ外側のスプリングは縮み、内側のスプリングは伸びます。この時も、スプリングの反発力だけが働く状態だと、車体の挙動が非常に不安定になり、コーナーが連続するような道だと、横転してしまう危険が出てきます。そこで必要なパーツが、ダンパーです。

ダンパーは減衰力という力を発生させて、スプリングが伸び縮みするスピードをコントロールします。つまり、スプリングをゆっくり縮ませ、ゆっくり伸びさせることで、乗り心地と車体の挙動を安定させるのです。

サスペンションの位置決めも担うスプリングとダンパー

さて、オールドジムニーではリーフススプリング+ダンパー、JA12/22以降のモデルではコイルスプリング+ダンパーを採用しています。一部のファンの間で、リーフスプリングが賞賛されるのには、ワケがあります。まず、リーフスプリングはサスペンション全体の「位置決め」をするのに、構造部品が少なくて済みまます。

現行型ジムニーのサスペンションを見てみましょう。現行型は「3リンク式」と言われていますが、まず基本的な位置を決めているのは、コイルプリングとダンパーですが、これだけでは前後左右からの力に弱く、位置が簡単にズレてしまいます。

そこで、前はリーディングアーム、後ろはトレーリングアームというリンクを2本使うことで、前後方向にズレないようにします。さらにラテラルロッドを使い、横方向の位置決めをします。このように、前後に3本ずつのリンクを使っていることから、3リンク式と呼ばれるのです。

ところが、リーフスプリングの場合は、スプリング自体の働きだけでなく、前後左右の位置決めをするリンクの働きもします。そのため、構造が非常にシンプルで整備性がいいというメリットがあります。また、リンク類を配置するよりも堅牢性に優れ、激しい衝撃や障害物などにヒットに強いと言われています。仮にリーフスプリングが数枚折れたとしても、1枚あればなんとか走行を持続できるという特性もあります。

ただし、リーフスプリングは柔らかい乗り心地という点ではコイルスプリングに及びません。自由長が短い上に重く、路面追従性が悪いためで、操縦性にも影響します。ただ、クロスカントリー4WDではあまり見ませんが、最近はガラス繊維強化プラスチック製のリーフスプリングを使うことで、これを解消しています。

リフトアップをする場合の考え方とは

7440Tiサスキットで40mmリフトアップしたJB74

さて、ジムニーカスタムの王道メニューと言えるのが、サスペンションのチューニングです。ノーマルのサスペンションを社外品と交換することで、ジムニーのドライブフィールを変えることができます。しかし、ジムニーの場合はそれだけではありません。

ジムニーのサスペンションチューニングのメニューには、「リフトアップ」と「ローダウン」があります。前者は最低地上高を上げ、後者は下げるためのものです。ただ、市場ではリフトアップが主流となっています。

リフトアップをする目的は、2つ。第一に「見た目を変えること」。ノーマルのジムニーにはない迫力が、リフトアップをすることを加わります。第二に「悪路走破性を向上させること」。最低地上高が上がることで、当然ながら対地角度が増加し、路面にある障害物などにぶつかる頻度が低くなります。

よく、ユーザーから「どれだけリフトアップするのが理想的なのか?」という質問をされますが、それは愛車をどのように使うということに関連してきます。

アピオでは、ジムニー/ジムニーシエラ用サスペンションとして、それぞれ2種類の商品を用意しています。簡単に言えば「20㎜アップサスペンション」と「40㎜アップサスペンション」です。

まず40㎜アップサスペンションですが、ジムニーを本格的にリフトアップしたい人向きです。車高がグッと上がるため、タイヤのインチアップの幅が広がり、見た目を大きく変えることができます。また、オンロードでは腰のある乗り心地に、オフロードではタイヤのトラベル量が向上し、より路面追従性・接地性の高い脚にすることが可能です。

ただし、40㎜までアップすると、コイルスプリング、ダンパーの交換だけではすみません。コイルやダンパーの長さが変わったことで、サスペンションのジオメトリーが変わるからです。まず、アームやラテラルロッドの長さ変更が必要になります。

またリフトアップによってフロントホイールのキャスター角に変化が生じ、ハンドリングが悪くなります。これを改善するための、リーディングアーム偏心ブッシュも必要となります。さらに延長ブレーキホースバンプストッパースペーサー、スタビライザーショートジョイント、LEDヘッドライトレベライザー調整プレートなどが、アピオのサスペンションキットには付属します。

20㎜アップサスペンションは、最近ジムニーカスタムで流行の「ちょいアゲ」仕様で、市場では1インチアップなどとも呼ばれています。ノーマルジムニーでは低すぎる見た目の車高バランスを改善するだけでなく、通勤や買い物など日常生活で物足りなさを感じるノーマルサスペンションのフィーリングを改善できます。

20㎜のリフトアップ量ではジオメトリーがほぼ変わらないため、基本的にはコイルスプリングとダンパーの以外の交換が必要ありません。リーズナブルなメニューでありながら、交換後の満足も得られるのがメリットです。

ちなみに40㎜までリフトアップすると、全体的な見た目のバランスが変化し、またリフトアップによる最低地上高アップのメリットをさらに活かすため、前後バンパーの交換も考えた方がいいと思います。

サスペンションチューニングは難しい?

アピオを筆頭に、昨今は多くのブランドがチューニング用サスペンションをキットとして販売しています。ジムニーカスタムの本を見ると、ショップによってはスプリングとダンパー、その他のパーツですべて違うブランドのものを使っている場合があります。ジムニーやパーツの特性を熟知しているユーザーや、そのまま真似するというユーザーでしたらいいのですが、一般ユーザーが違うブランドのパーツを選ぶのは敷居が高いと言えます。

というのも、大抵の場合は「このコイルに合わせたダンパーのセッティングはコレ」というように併せて開発していくからです。もちろん、違うブランドのものでマッチングがいいパーツはあるのですが、それを見極めるにはかなりの知見が必要になります。ですので、そういった知識があまりない場合は、同一ブランドのパーツを組み合わせた“キット”を選ぶのが無難と言えます。

さらにキットを選ぶメリットとして、故障時の保証があります。足回りにトラブルが発生した場合、違うブランドの商品を装着していると原因を突き止めるのが困難であるばかりか、同時多発的に故障が起きた場合、どのように保証してもらうのかが煩雑になります。同じブランドのパーツで揃えれば、1社に相談すればいいわけです。

サスペンション交換を行う際に、こんなことも知っておく必要があります。例えば、スズキ直営系ディーラーでジムニーを購入した場合、社外品にサスペンション交換をすると一切のメーカー保証を受けられないケースがあります。

同じアリーナ店でも、スズキ直営でなければメーカー保証を受けられるため、ユーザーからは疑問が多い対応です。ですので、愛車を購入後にカスタムをする予定がある場合は、こうしたアフターサービスについての確認もしておく必要がありそうです。

サスペンションの“味付け”には、各社でいろいろな考え方があり、そのフィーリングは千差万別。購入後に後悔をしないためには、やはりデモカーを試乗して自分の感覚で確認するのが一番です。ネットで気軽に購入するのもいいのですが、やはり愛車の性能を左右する大切なパーツですので、ショップで直に相談しながら購入することをお勧めします。