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ジム知る
VOL.012
ジム知る 第12回:雪道に行く前の準備と走り方(2)
ジム知る 第12回:雪道に行く前の準備と走り方(2)

パートタイム4WD+スタッドレスタイヤは雪道に強い、というのはあながち間違いではありませんが、最強ではありません。なぜなら、スタックしない4WDも、スリップしないスタッドレスタイヤもないからです。雪道はジムニーにとって実に楽しいシチュエーションですが、危険が潜んでいることも忘れてはいけません。

文・山崎友貴

どのタイミングで4WDに入れるか

初めてパートタイム4WDに乗る人がよく疑問に思うのは、「雪道ではどのタイミングで4WDにシフトすればいいのか?」ということのようです。雪道の行くと、路面に雪が現れるシチュエーションは主に2つ。初冬や晩冬であれば、路面が濡れ始めてから、徐々に積雪が始まります。厳冬期になれば、いきなり積雪していることも珍しくありません。

まず4WDへのシフトのタイミングですが、「路面が濡れていたら」というのが第一の判断基準です。融雪のために流水をしている道もありますが、大抵は雪が溶けて路面が濡れているからです。つまり、濡れた道路の先には積雪がある可能性が極めて高いということ。ここで4WDにシフトしておけば、十分なリスクヘッジになります。

第二の判断基準は「路面に少し雪が載り始めたら」です。いきなり雪が現れたということもごく稀にありますが、大抵は路面や路肩に多少の雪があってから、積雪路や凍結路になるのが一般的です。ああ、雪が見え始めたな…と思ったら、4WDにシフトすればいいわけです。もし、その先に冠雪がなければ、2WDに戻せばいいだけです。

ご存じの通り、ジムニーの4WDシステムは100km/h以下で直進状態であれば『4H』にすることができます。高速道路でもいきなり積雪路になることがありますから、視界と直進状態をしっかりと確保しながら、ゆっくりとトランスファーレバーを4Hに入れましょう。「カチン」という前輪オートフリハーブがロックされる音がすれば、4WD状態になっています

ジムニーでも雪道は滑るという事実

よく雑誌やネット記事などで「4WDは雪道最強」という記述を見ますが、一部は合っていますが、一部は間違いと言えます。四輪に25ずつの駆動トルクを配分しがなら走るパートタイム4WDは、走破性は優れていますが、四輪に回転差が出るカーブ走行(コーナリング)では、実は微妙なスリップをしながら走行しています。

このスリップがタイヤ性能の限界を超えてしまうと、もはやアンコントローラブルな状態に陥ってしまうことがあるのです。この弱点を解消しているのが、センターデフを持ったフルタイム4WDです。フルタイム4WDでもいろいろなタイプがありますが、電子制御式のシステムの場合は、走行状態をコンピュータが判断して、駆動トルクやブレーキを細かくコントロールするため、スリップする恐れが非常に低くなっています。

ジムニーにも横滑りを防止する電子デバイスが付いていますが、雪道走行にはいつも以上に繊細なドライビングを要します。ジムニーの雪道運転の基本は「スローインスローアウト」。カーブに入る前に十分に減速して、ゆっくりとコーナリングを行います。できるだけ一定のスピードで走るようにして、加減速のコントロールはできるだけアクセルで行うようにしましょう。ちなみに、急にアクセルペダルを離して駆動力がオフにするのも、スリップする要因となりますので注意してください。

走行ラインですが、「アウト・イン・アウト」などといったことを考えず、目の前にあるカーブの弧に沿って並行して走るようにしましょう。道の外や中にラインを変えると、かえってスリップを起こす要因になります。上級者であれば、それさえも利用して上手に走れるようになりますが、十分に慣れるまでは基本に忠実なのが無難です。

もし愛車がスピンを起こしてしまったら、どうすればいいのでしょうか。答えは「ハンドルから手を離して、何もしない」です。スリップしたまま車両が側溝に落ちたり、雪壁にぶつかったりすると、ハンドルを通して大きな衝撃が手に伝わります。場合によっては、指などを骨折することからあって危険です。

また急ハンドルや急ブレーキをかけると、車両の挙動が変化し、かえって事態が悪化することがあります。とりあえずタイヤのグリップ性能が回復するまで待つしかないというのが現実です。スリップし始めたら、「カウンターステア」というテクニックを使うことが可能ですが、雪道に慣れていない人がいきなりこのテクニックを使うのは難しいと思います。

何よりものリスクヘッジは、滑らないようにゆっくり走るということです。特に路面が白ではなく、青かったり黒かったりする場合は凍結している証しですので、細心の注意が必要です。

ブレーキのかけ方には2種類ある

雪道と一口には言いますが、その路面状況はいろいろです。「新雪」「圧雪」「凍結」「深雪」に分けることができます。滑りやすいのは、水分の多い「新雪」と、路面が凍っている「凍結」です。

よく雪道運転では「急のつく操作は厳禁」と言いますが、中でも急ブレーキは避けなければいけない行為です。タイヤをロックさせてしまうとグリップ性能が失われてしまい、カーリングのようにクルマが滑っていくことになります。

ブレーキを踏む時はまず少しだけ制動をかけて、停車させる場合はじわーっとペダルを踏むか、ポンピングブレーキを使います。走行中にタイヤがどんな状況なのかは分かりませんが、五感を使うことも大切です。

もし、ブラックバーンなどの凍結路面で車両が滑り出してしまった場合、今度は思い切りブレーキペダルを踏みましょう。なぜなら、思い切りペダルを踏むことでABSが作動するからです。ブレーキを自分でコントロールするよりも、ABSに任せた方が短距離で停止できる可能性が高くなります。「ヤバい!」と思ったらブレーキペダルを全力で踏む。これを身体に覚えこませましょう。

もしスタックしてしまったら…

雪道走行には様々なリスクが潜んでいますが、そのひとつが「スタック」です。スタックとは、深雪に入り込んだ際に、タイヤの空転によって前進・後退ができなくことをいいます。例えば、駐車中に大雪が降り、翌朝出発しようとしたらスタックといったケースも。

いずれにせよ、スタックしても慌てず対処することが肝要です。まずスタックをしてしまったら、携行しているスコップで、車両の前後の雪を取り除きます。前進したいなら前方の、戻りたいなら後ろの雪を車幅分だけどけましょう。

さらに、車体下にある雪がスタックの原因になっている場合は、その雪も丁寧にどけましょう。大抵の場合は、大量の雪が抵抗となって前進できなかったり、車両下に雪が詰まっていることで「カメの子」状態になり、タイヤが路面に接地していないことがスタックの要因です。ですので、大抵は除雪することでスタックから脱出できます。

もし、側溝や大きな穴などに落ちていることが原因の場合は、牽引してもらう必要があります。この場合は、牽引してくれるクルマを探すか、ロードサービスを呼ぶしかありません。

スタックした際に、スコップを持っておらず、しかも自車しかいないという時は、「もみ出し」というテクニックを使ってみてください。これはタイヤが数cmでも動くというのが前提の脱出方法です。

まず前でも後ろでも、タイヤが少しでも動く方向にクルマを動かします。一般的には前進から始めるのがいいでしょう。動かして空転が始まったら、すかさずそれまでとは逆方向にクルマを動かします。そして、またクルマが止まったら逆。この前後運動を続けることで、やがて振り子運動が大きくなり、スタックから奪取できることがあります。雪国のドライバーには一般的なテクニックですので、ぜひ覚えておきましょう。もみ出しは、オフロードの泥濘地などでも有効です。

雪道ドライブは、経験値が物を言います。ですから、たくさん走ることによって上手になっていくのです。経験の中には、失敗や事故なども含まれるかもしれませんが、そういう蓄積によって「勘」が生まれ、より安全に雪道を走れるようになっていきます。

多少、雪道に慣れてきたら、「テールスライド」や「タックイン」といった技術を使って走ると、よりスノードライブを楽しむことができます。それについては、また別の機会にお話したいと思います。