その企画は突然降って湧いたかのようにやってきた。レッツゴー4WDとアピオのコラボ記事で林道を走るというものだったが、光栄なことに僕と山岡“巨匠”カメラマンのご指名だった。
山岡巨匠はTVでも紹介されたことのある「林道の達人」なので、軟弱編集者の僕など恐れ多いカップリングである。一応、そういうことにしておきたい。ただ、山岡巨匠の林道の経験値はホンモノだ。1か月の内、一体どれくらい林道に撮影に出かけているのだろうか。達人というよりは、もはや鉄人に近い。いや、林道の神と言ってもいいのではないだろうか。
だが、この神は面倒くさい。つまらない林道だと、全然ノラないのである。生欠伸を繰り返し、やる気がないオーラを全開にする。だから、組む編集者はまず、林道選びの時点で緊張することになる。林道と言ってもご存じの通り、現代の日本では「絶滅危惧種」だ。舗装がどんどん進み、ダートでもゲートでシャットアウトしている道が増え続けている。
その上、冬季は閉鎖する林道がほとんどで、ゲートが開いている路線を探すのは実に手間がかかるのだ。
それはさておき、林道を探すのは大変だ。それに加えて、せっかく探しても「ええ〜、そんなクソみたいな林道」のひと言で、神に却下されることもザラだ。レッツゴー4WDでの初連載ということもあって気合いを入れたかったが、3月ということもあって、地域が限定されてくる。千葉と静岡方面を探していたところ、ふと頭にあるキーワードが浮かんだ。
「桜エビ」
林道の神はまったく興味がないようだが、僕はご当地のグルメが大好きだ。特に旬のものは最高である。3月下旬になると、駿河湾では桜エビ漁が解禁になるはずだ。ということで、桜エビのメッカである静岡県由比町の付近で林道を探し、それにかこつけて桜エビと温泉で贅沢をすることにした。