佐久市は上田市と並ぶ東信地区の中心地で、長野県5番目の10万人都市だ。江戸時代は三河の本拠を置いた奥殿藩の領地として、松平家が支配した場所だ。
市内には宇宙ファンにお馴染みの臼田宇宙空間観測所がある他、「日本で一番海から遠い場所」が存在する。農業が盛んな場所だが、最近は大手企業の工場も多く進出しており、急激に人口が増加している。
佐久と言えば、全国的に有名なのが「鯉」だ。本来はこの辺の農家が水田で養殖し、刈り入れの時期になると食べるという風習があった。刺身にしてから氷水で急速に冷やす「あらい」の他、味噌汁の具とする「鯉こく」などが食べ方として知られる。
この鯉が僕は大好物なのだが、山岡巨匠に「食べよう」と言っても「まったく興味がないね」と返された。その後、延々とご当地名物を食べることのくだらなさ論について説かれたので、結局昼ご飯はどこでも食べられるパスタになったわけだが、皆さんはぜひ試していただきたい。
さて、佐久にはおもしろいものが残っている。それは「龍岡五稜郭」だ。日本に2つしかない五稜郭のひとつとして、地元では謳われている。これは幕末に奥殿藩の田野口陣屋として造られたものだ。フランスの指導によって設計された西洋式城郭で、代々宗家の家臣だった大給松平家が、混沌とした幕末の情勢に合わせて古い陣屋を作り替えた。
行ってみると函館のものより小ぶりだが、まさしく五稜郭だ。現在は小学校として使われており、なんとものどかな雰囲気だが、やはり戦闘を前提とした城であることは間違いない。綺麗な石垣と堀を見ていると、日本も戦いに備えていた時代があったということを改めて知らされるのである。
さて、この五稜郭からほど近い場所から、今回のダートドライブは始まる。