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ON THE STREET BURGER
VOL.046
ハンバーガー号最後の冒険~Googie's Cafe [長野] 後編
ハンバーガー号最後の冒険~Googie's Cafe [長野] 後編

最終回拡大版もいよいよ後編。
フラットヘッド代表・小林昌良さんのインタビュー、
そしてラストを飾る特別ゲストも登場!


※記事中に登場する店の名称、営業内容、場所等は全て事実に基づく正しい情報ですが、登場する人物の行動については全てフィクションです。

長野へ行ったらぜひ見ておきたい、夜の「Googie's Cafe(グーギーズカフェ)」――信州三大夜景に認定したい。

フラットヘッド

グーギーズ南長野店は席数45席。出来た当初は店一軒すべてレストランだったが、今は半分をアパレルショップ「DESSERT HILL'S MARKET(デザートヒルズマーケット、DHM)」にしている。両店は中で繋がっており、料理を待っている間に服を見たり、買物後にお茶したりも自由だ。

DESSERT HILL'S MARKET 長野店

この楽しい空間を創り出したのは、今や日本を代表するアメリカンカジュアルメーカーである「FLAT HEAD(フラットヘッド)」の代表・小林昌良さん。DHMは小林さんが社長を務めるアパレル販売「グローバルユニット」のセレクトショップ。小林さんはグーギーズカフェを経営する「グーギーズ」の会長であり、そして創業者、"founder"である。


グーギーズの前身は長野駅前の「キャディラックランチ」というバーだった。もっと多くの人が集まれる場所をと08年に現在地へ移転。この場所は長野市の外れ、千曲市から見れば川向う。立地はよくない。商売が絶対に上手く行かない場所と言われたが、「クルマで行きやすいところ」「50台以上停められるところ」を探してココに決めた。理由は「県外から来る"遊び場"と考えれば、どこにあろうと関係ない」から。


"遊び場"……11年前に始めたビッグイベント「SUPER WEEKEND」も、このグーギーズカフェも、儲け云々より「まずは遊び場を作ること」「カルチャーを作るためのもの」、それがコンセプトだと小林さん。食べるところと言うより楽しむところ。「遊び」に行く感じの場所。グーギー様式も「みんなが楽しくなれるんじゃないかな」との思いから取り入れた。

長野から世界へ

フラットヘッド2017年春夏新作展示会にて。下がDJ DRAGON さんのブランド「HARD BIRD」

フラットヘッドの製品はすべて「MADE IN JAPAN」、国内生産である。皮製品は千曲市内にクラフトの工場を持っている。「見えないところにいくつこだわるか」というその職人的な追求は精緻を極める。売り場に立つと、商品の輪郭からステッチから、すべての作りがカチッとシャープなのが何より印象的だ。


その商品ひとつひとつに施された技や工夫を、また販売スタッフが、説明できるのが嬉しくってしょうがないといった口ぶりで、楽しそうに教えてくれる。「この二度縫いは……」「ここの糸は……」とまた説明が微に入り細を穿って、じ~つに細かい。聞いたこちらも何だか覚えてしまう。そしてつい人に話したくなる。


ジーンズや革製品に懸けるものづくりの思いとまったく同じものをグーギーズのフードにも見ることができる。


噂のフローズンヨーグルトは「砂糖と脂を徹底的に排除して」それでもおいしく食べられるものを作ろうと3年かけた。牧場探しから始めて試作と試食は200回超。GAO隊長はある時その開発秘話を2時間にわたって拝聴したという。

フラットヘッド小林社長と最終回特別ゲスト、DJ DRAGON さん

欧州のクラフトマンシップでなく、日本の「本当の匠の技」を作りたいと小林さん。王侯貴族のためのものでなく、一般庶民が末永く使うことを前提に作られた製品・技術。日本人の感性を持って作る、日本人にしかできないMADE IN JAPAN を――それこそが本当の匠の技なのだと。それをやりたい。ここ長野でやりたい。ここ長野から発信したい。


長野駅前の会場で開かれていたフラットヘッドの春夏物の新作展示会で、GAO隊長の盟友・DJ DRAGONさんと会った。DRAGON さんは武田真治さん・小林社長とともに「HARD BIRD」というブランドを展開している。さらにGAOさんが発行する『ON THE ROAD MAGAZINE』の執筆者の一人でもある。


「ウェアって着こなし的な話がメインになって、技術的なところって意外と語られないんだけど、小林さんの話ってすごく革新的で面白くないですか? 」

旅の終章

旅先で知り合いに会えてホッとした。もうパトロールも十分した。本当はグーギーズ千曲店もグーギーズファームも見たかったが、そろそろ日も暮れてきた。また次にしよう……次はもう無いのか。


思えばハンバーガー号は、オフロードも街乗りも、都心のど真ん中も郊外も、雨の日も雪の日も、どんな狭くて細い道でも、臆さず恐れず、常に進んで走ってくれた……何が「一緒に走りたくないと言ってます」だ、あの社長秘書め。本部で信じられるのはイノウエ隊員だけだな。

旅はいつもジムニーと一緒だった。APIOジムニーコンプリートカーTS7。スピードはさほど出ないが、小回りが利くので、通れない道はまず無かったし、迷ってもすぐUターンして引き返せる敏捷さがあった。周りのどの乗用車よりも高い位置から見る眺めが好きだった。甲高いエンジン音が好きだった。


きっとこれが最後のパトロールになるだろう。日の入り前ギリギリの薄明りの中、最後の記念撮影をした。場所は川中島の古戦場だった。ここで昔、武田真治とDJ DRAGON が戦った……違う、武田信玄と上杉謙信だ。

§§

川中島古戦場(八幡原史跡公園)にて

 「帰ろうか」

隊長の声を合図にハンバーガー号に乗り込み、そのまま上信越道に乗った。

 「ですが隊長、どうして僕の居場所がわかったんですか? レシーバーはじめ装備一式、通信機器もすべて本部に置いて来たっていうのに」
 「それでもわかるようになってるんだよ」とGAO隊長。

どこかに発信機が取り付けてあるとでも言うのか……先月、歯の治療をした、まさかあの時……いや、まさか。結局この謎だけは今もってわかっていない。

松代から千曲へ進む、向こうの空が明るい。そこへ通信が入った。

 「こちら本部、司令の河野だ。ハンバーガー号応答せよ」

これがパトロール中の最後の報告である。言い慣れたいつもの決まり文句を今日も口にした。

 「こちらハンバーガー号、異常なし」


(完)


< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

Googie's Cafe 南長野店 [長野・篠ノ井]

所在地: 長野県長野市篠ノ井小森字福王寺572-2
アクセス: 上信越自動車道・長野ICより県道35号線経由10分
駐車場: 50台駐車可
TEL: 026-293-3005
URL: http://www.googies-cafe.jp/
オープン: 2008年5月9日
営業時間: 11:00~22:00(LO21:00)
定休日: 水曜日(要確認)

夜のグーギーズカフェ、拡大版
その昔は「ピンクのあやしいところ」と恐れられた
斜めに張り出したガラス窓、銀ピカのフレーム、石材の使用など、随所に古き良きカリフォルニアの趣きが窺える
DHM店内。ここにも石材が使われている
DHM長野店店長・小林正人さん。何でも懇切丁寧に教えてくれます
社長の小林さんはオレンジでなく紺の糸を使っていることを力説。ポケットのマークは先端の先端まで縫製が
2005年より始まった夏の一大イベント「SUPER WEEKEND」。写真は2008年の模様
戻って、これがグーギーズカフェ南長野店の個室にある小林さんのコレクション。どれも博物館級の逸品
購入したマグカップの「キープサービス」もやっている
DJ DRAGON さんのサインもある
川中島古戦場(八幡原史跡公園)にてハンバーガー号、最後の記念撮影