ジムニー車中泊ひとり旅 Vol.23 「奈良井宿」
Traveling alone with jimny.
自然の中を旅するのは楽しいが
その場所の文化にも触れてみたい
往時を偲ばせる奈良井宿へ
SPECIAL THANKS/奈良井宿観光協会
※奈良井宿の集落内に許可なく車の乗入れはできません。
Photo & Text : 山岡和正
これまでの「ひとり旅」は林道を中心に自然の中の冒険的な旅だったのだが、目的地周辺には自然の他にも素通り出来ない名所がたくさん存在していて、それは旅の重要な要素の一つでもある。今回、長野県の木曽エリアを旅するにあたり、外すことができなかったのが「奈良井宿」であった。木曽は林業が盛んなためなのか、林道も数多くあるので期待が持てる。
最終地点を「奈良井宿」に決めて、まずは周囲の林道から攻めてみることにしよう。
朝から降り続いている小雨と路肩に残った残雪の雪解け水で、林道はあちこちぬかるんでいた。天気も良くないし、沢の水は濁っていて、美しい林道の風景に出会うこともない。おまけに行き止まりや、工事中などでピストンを余儀なくされることが多くストレスは溜まるばかりだった。
これで最後だと峠越えの林道に入り込んでみると、これまでの林道とは違ってハイペースでぐんぐん高度を上げていく。そして、集落を過ぎたあたりから急に残雪の量が増えはじめた。
その後もコーナーを曲がるごとに雪は増え続け、峠を越えるころには深い場所で積雪20センチを越えてきた。
もはやスノーアタックである。
退屈な林道巡りがアトラクションに変わる瞬間だった。チェーンも持参しているが、雪質的には履いているスタッドレスと四駆のローギアで十分進んでいける。時折、リアを振り、ハンドルを取られながらもゆっくりと進んで行くジムニーを操るのは楽しく、軽量四駆の醍醐味だなとしみじみ思ったりもした。峠を過ぎて下り始めても雪はまだ深く、楽しいプチスノーアタックは暫くの間続いた。
枯れた針葉樹の隙間から麓の民家が見え隠れする所まで下って来ると、雪は消えて、地面が現れてきた。
路面がアスファルトに変わったので2駆へシフトした直後、前方の道がアイスバーンになっていることに気がついた。さらには、表面が中途半端に溶けかかっていて余計に始末が悪い。これにはスタッドレスタイヤもABSも無力だろう。幸い道路脇までは凍っていなかったので、片輪を路肩に乗り上げてゆっくりと進み難を逃れることができた。
一般道に出ると「奈良井宿」はもうすぐそこだ。国道を逸れて現在と過去を区切る結界のような中央本線の踏切を乗り越えてタイムスリップする。
夕刻、通りには観光客の姿も消え、静かに明かりの灯り始めた宿場町が、私を優しく迎え入れてくれたのだった。
山岡 和正
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。