ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.30 「佐久」
Traveling alone with jimny.
広大な雪原を走りに行きたい
銀世界が消えてしまう前に
入山を拒んでいた厚い雪も、季節に合わせて緩んできた。
春の匂いがする雪景色の林道を行く。
SPECIAL THANKS/荒船パノラマキャンプフィールド arafune-camp.net
Photo & Text : 山岡和正
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。
ウェブサイト:http://kaz-yamaoka.com/
SNS:Facebook
新雪の上をジムニーで走りたい。
今年は関東平野にも少しだけ積雪があり、アスファルト上にもある程度の雪が積もった。そういう状況になると、いてもたってもいられず用もないのに家の周辺をジムニーで走り回ってしまう。
四駆乗りなら共感するであろう「四駆あるある」といったところだ。
そんなことからスノーアタック魂が再燃して、久々に雪山での車中泊をしてみようと思った。とはいえ、ソロでの雪中行軍なのでリスクは高く、何かトラブルがあれば大変なことになる。無理はせず、安全優先で行けるところまで行ってみることにした。
3月後半のスケジュールだったが、豪雪地帯の林道は未だ通れる見込みはなく、
リサーチすると八ヶ岳の北側あたりなら雪が解け始めていて良さそうだ。
上信越自動車道の佐久で高速を降り、食材を仕入れてから、まずは1本目の林道へと向かう。街は暖かく、降ったはずの雪はほとんど消えてしまっていたが、高度を上げて別荘地に入ると急に雪景色へと変わった。アスファルトも消えて、除雪した後に降り積もったであろう雪が圧雪されている。タイヤのトラクションを気にしながら慎重に進み、次の角を曲がればダートが始まるというところまで来たのだが、地図にあるはずの道が無い。ここからの道は峠を越えて反対側の集落へと抜ける未舗装路で、結構な距離がある。その様な道は、別荘地に住む住人にとっては必要ないのだろう。除雪はおろか走った形跡が全く無く、ただただ白いラインが山の奥の方へと続いていた。さらに入り口付近には他で除雪した雪がこんもりと盛られている。
慌てて地図を確認すると、少し大回りで支線の方から林道本線へアクセスできそうだ。来た道を少し戻りトラバースしながら支線の入口へと向かう。20分ほどで到着はしたものの、支線に入ると雪の深さが30㎝ほどある。
今回のスタッドレスタイヤは優秀で、こういったシーンでの走破性が高い。四駆にすればスタックすることなく進んで行くのだが、峠まではまだ2㎞以上ある。1台で来ているという不安感が先に立ち不本意だが引き返して、林道の反対側からアプローチすることにした。
ここまでは山の北斜面で寒く、雪もそれなりにあったのだが、南側に行けばもう少し簡単に進めるだろう。
一度麓に降りてしばらく走った後、南斜面の林道に取り付くと予想外の景観に驚愕した。どこまで登っても、雪が無い。ところどころ残雪が見え隠れしているが、メインの道はダートがむき出しのままだ。
山の北側と南側でこれほど違っているとは思いもよらなかった。
状況は変わることなく、目的地の尾根付近にあるキャンプ場の案内板が見えてきた。北側の林道で少しは雪上走行を楽しめたし、ある程度は納得していたものの、少しばかりがっかり感が漂う。
キャンプ場の受付に行くと「雪が残っているので気を付けて」とアドバイスを受けるが、これまでの行程から予想するとそう深い雪ではないだろう。
敷地内に入ると、思っていた以上に雪が残っている。新雪の上を軽く車体を振りながら、キャンプサイトへと登って行くと、小高い丘を越えたとたんに無辺の雪原が目に飛び込んできた。
表面が溶け軽く締まった雪の上に夕陽が照り返し、オレンジ色に輝いている。
それは、まるで水平線に沈む太陽のように神々しかった。