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ジムニー車中泊・ひとり旅
VOL.022
ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.22
ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.22


ジムニー車中泊ひとり旅 Vol.22 「南会津」
Traveling alone with jimny.



そろそろ秋も終わりを迎え
山奥へと続く林道も冬季閉鎖になるのだろう
鮮やかな紅葉を見に行こう、ゲートが閉まる前に

SPECIAL THANKS/奥会津昭和の森キャンプ場

Photo & Text : 山岡和正

塩原温泉郷の温泉街にあふれる人達を尻目に、塩原街道を走っていた。
この先を左に曲がると、鬼怒川温泉へと延びる「もみじライン」があり、関東有数の紅葉スポットとなっている。色づいた木の葉が落ちてしまう前に暖色の森の中を走りたくて旅に出たのだが、観光客の賑わうエリアでは落ち着かないし「ひとり旅」らしさがないので、もう少しだけ北へ走り静かな森へ入ってみようと思う。

目的地とした「玉川林道」は、南会津町の先にある昭和村との境界線付近から始まる。この林道は南と北を走る国道を真っすぐにショートカットするような比較的走り易い道なのだが、途中から縦横無尽に伸びる支線の距離が長く、走りごたえのある林道でもある。

最後の集落を抜けて林道南側の入口に到着した時、予想外の展開に自分の目を疑った。なんと「通行止」のゲートが設置してあるのだ。結構メジャーな林道で、これまでも通れなかったことは一度もない。リアルタイムで道路状況を調べてから来いと言われれば、身も蓋もないのだが。
気を取り直して、西側から「玉川林道」へ通じる支線の「堺林道」を経由してアプローチすることにした。移動中、横を流れる川の対岸には無残ながけ崩れの跡が点在しており、おそらく林道の通行止めの要因もそのあたりにあるのだろう。

支線の入り口までは舗装路が続くが、アスファルトを覆い隠す落葉とずっと先まで続く明るい紅葉の森は美しく、その中を走るのは例えようもなく心地よかった。そのまま暫くはワインディングを走り「堺林道」の入り口まで来ると、そこは取り付く島もないほど草木が生い茂り廃道状態になっている。陽も影ってきたのでそこに分け入っていくのは諦めて、野営地へと向かった。「玉川林道」は明日、北側からトライしてみることにしよう。

野営地であるキャンプ場に到着すると先客が2人いて、それぞれソロキャンプを楽しんでいるようだった。少し離れた場所にジムニーを止め、寝床の準備をしてから薪に火を入れる。それにしても寒い。暗くなってからはさらに気温が下がり、風も強くなってきたので早々に車内に逃げ込んで寝袋に滑り込んだ。

凍える夜を越え、翌朝はゆっくりと出発して目的の林道北側から南下して行く。玉川の清流を横目に走る秋の森は明るくて、少しだけ開けたウインドウから入ってくる冷やりとした風が心地良い。MTタイヤの弾いた落ち葉たちが、ドアミラー越しに踊っているのが見える。

2キロほど走って、もしかしたらこのまま南側まで抜けられるのではと思った次の瞬間、右コーナーの先に侵入を拒む「通行止」の標識が現れた。残念だが、やはり災害などの影響で物理的に通行できないのだろう。
しかし、絶望することはない。右手に分岐する駒止湿原への道は行けそうだ。アクセルを踏み込んで落葉の急坂を登って行く。しばらく進み道が平坦になると、急に視界が開けて広く明るい針葉樹の森に出た。紅葉した葉の隙間から見え隠れする太陽が眩しく輝いている。
風の音を聞くためにヨシムラマフラーが奏でる低い音を止めると、ジムニーはゆっくり森に溶け込んでいった。

森は色彩で溢れていて まるで絵画の中にいるようだった

落葉の絨毯と赤や黄色に色づいた 紅葉のトンネルを行く

メインルートが通れずに仕方なく通った迂回ルートだったが、そのおかげで色彩豊かな美しい道を走ることができた。予想外の出会いや偶然は旅の醍醐味でもあるのだと思う。

「玉川林道」南側入口付近の清流で、予想外の通行止めに途方に暮れつつ珈琲ブレイクタイム。時間と距離のロス、そして紅葉の写真が撮れるのかという不安から珈琲の味が全くしない(笑)

山間部の夜、厳しい寒さに凍える

日中は日差しも強くジャケットを着ていると汗ばむほどだったが、夜になると一変して凍えるほど寒く車外にはいられない。冷たい風が山から吹きおろし、いつもは心強い焚火の炎もあたりをむなしく照らすだけだった。

加水なし、掛け流しの濁り湯に酔う

源泉は青緑色だが鉄成分が酸化することで赤くなる薬効成分の多い温泉。保温効果も高いので、湯あたりには十分注意したい。

ライタープロフィール

山岡 和正

雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。

ウェブサイト:http://kaz-yamaoka.com/
SNS:Facebook

ダート脇に流れる「冷湖の霊泉」は天狗伝説が残るパワースポット。以前来た時は真夏だったので一面緑に覆われていたのだが、今回の霊泉は周囲の草木も枯れ物静かな雰囲気が漂う。それでも湧き出す水は名水の名に恥じることなく、冷たく透明で凛としていた。