雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連載中の『林道パラダイス』との連動企画。
2024年6月の下旬、長雨でたっぷり水分を含んだ林道を走ろうと群馬県北部の山塊をナローシエラで巡ってきた。
旅の一部を動画にしたので併せてご覧いただければと思う。
Photo & Text : 赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。
<YouTube赤ぞうチャンネル>
関越道の沼田ICで降りるとガソリンを満タンにする。
霧のような小雨が降る中、国道120号を東へ走り林道赤倉栗生線に入った。事前に舗装されていることは知っていたので狙いは脇道。すぐに折り返すように左折する砂利道を発見した。入って行くと道沿いにはトゲのある枝葉が繁茂。見れば木苺が実っている。窓から手を伸ばして口に放り込むと甘酸っぱい。木苺にしてはかなり旨い方だろう。ところがしばらく進んだところで道は木苺に覆い尽くされてしまい、更なる前進は諦めざるを得なかった。地形図上では道が続いているはずだが仕方あるまい。せっかくなので木苺を存分に味わってから本線に引き返した。
栗生ダムへ通じる道は通行禁止のためスルー。標高1000mを超えた辺りで見つけた脇道は待望の土の道だ。落葉樹の森を熊笹を掻き分けながら標高差にして50mぐらい登ると山小屋があり、車道はそこで行き止まりとなった。
本線に戻り標高1200mほどの名もない峠を越えると道の真ん中にヒキガエルが鎮座。こちらを睨むようにして待ち構えていた。近寄っても微塵も動かない。どかないカエルのすぐ横をナローシエラで通ったが威風堂々とした姿勢を崩すことはなかった。赤倉川まで下ると川沿いに続く林道は車両通行止。ゲートは開いていたがやめておこう。ゲートの手前を右に入る林道山崎線に通行規制はなかったが行く手を阻む倒木はあった。ワイヤーとストラップで倒木を脇へ引きずり寄せてルートを確保。その先は荒れた様子もなく抜けられそうな感じだ。赤倉山の東側をゆっくり登って行くと茶褐色の岩肌が剥き出しになった切り通しに出る。そこからは草木が張り出すように茂っていたが、尖った枝はなくボディーへのダメージは最小限で進んで行けた。だが、ほぼほぼ下ってもうじき県道64号というところでゲート封鎖。
来た道を戻るのかぁと少し落胆したものの、よく見れば鹿よけゲートで鍵はなく県道へ抜け出ることができた。
通り掛かった道の駅川場で昼飯。つけ麺を食べた後に向かったのは雨乞山だ。
リンゴ園を過ぎた辺りで舗装は途切れ鹿よけゲートを開け閉めして山へ入る。杉林の中に続く林道中野線を登って行ったがゲートは閉ざされていた。施錠されたゲートの手前に雨乞山の案内板があるだけに通してもらえないのは非常に残念。引き返す道すがらの脇道にも入ってみたが、橋がない川を渡って登り詰めると伐採跡地に出て行き止まりとなった。
他に目ぼしい道がなかったので一旦下って別の林道に入ってみる。こちらにも鹿よけゲートがあって開閉して奥へ進んだ。車両の往来は少ないようで草の茂り方がジャングル状態だったが、雨に濡れているお陰で草木がボディーを擦る嫌な音を聞かずに進んで行けた。
そこを抜けると草が刈られた真っ当な道に突き当たって安堵。この道ならば雨乞山の方へ行けるかもしれないと登って行ったが、こっちも通行止でチェーンが掛かっていた。仕方なくUターンしていると沢に下る脇道を発見。沢の向こうにも道は続いていて、渡った先は鬱蒼とした杉林だった。危うげな細い道はさらに奥へと続いていそうだが手痛いスタックを仕出かす前に下山するのが賢明だろう。雨の降りが強くなり薄暗くもなってきたので、みなかみ18湯の1つ川古温泉へ向かうことにした。
源泉掛け流しの川古温泉でゆっくり休んだ翌朝は近くの林道から探索を始める。
川古温泉から北へ続く道には通行止ゲートがあったので、茂倉沢に沿って奥へ伸びる林道へ向かった。集落を過ぎると砂利道となり、山菜狩りをしていたジムニーJB23乗りに軽く会釈しながら進んだもののゲートは閉ざされていた。ゲートの先にも轍は刻まれていたので、鍵を持つ車両が結構な頻度で入っているようだが引き返すしかない。
続いて目指したのは仏岩。県道270号を東へ進み仏岩トンネルの少し手前を右に入る。走り始めてすぐの水溜まりは濁りがなく透き通っていた。この日はまだ1台も入り込んでない証だ。滑り気味の土の感触を楽しみながら仏岩の案内板に導かれるままに進む。やや荒れた道を登って行くと沢に出る手前で車道は終点。その先は登山道のようだ。遠目にも仏岩を見ることはできなかったが仕方がない。せっかくなのでこのエリアを走り尽くそう。戻って南へ向かったが草木が茂り過ぎて道とは思えない。
引き返して西へ向かうと送電線の線下に出た。草が刈られていて所々にワラビが生えていたので食べる分だけ採取。そこから先は通る車両が激減するようで道は草木に覆われ始める。ゆっくりと草を掻き分け倒木を乗り越えて進み県道に抜け出るまで残り500mぐらいに迫ったが、その先は路肩が脆そうに見えたので引き返すことにした。
最後に訪ねたのは関越道の下牧PAの近くから三峰山へ分け入る林道だ。
舗装路を登って乗馬クラブを過ぎると右方向への狭路を見つけた。沢まで下ると折り返すように登った先は水田。水田脇に続く道を通って山へ入る。軽トラのタイヤ痕を辿って滑りやすい土道を登って行き、太い倒木をくぐり抜けると轍痕は少なくなり伐採跡地に出た。ボンネットの高さほどに茂った草を押しのけながら登ったものの標高700mぐらいで行き止まり。戻って本線を進むと斜め左に分岐する道があった。入って行くと神社。柱が太い割には背が低い可愛らしい朱色の鳥居が立つ神社だ。旅の安全を願って手を合わせる。
そこからは土道となりタイヤは空転気味。登って行くと送電線の鉄塔に突き当たった。このエリアに来てからというものときどき足首にチクっと感じる。ヤマビルに咬まれるのだ。ハイカットの靴を履き虫除けスプレーを吹き付けていたが効き目はないようだ。本線に戻ると草木の茂り方が酷くなり緑のトンネルのような状態になってきた。車体の引っかき傷を覚悟して前進あるのみ。掻き分けながら登って行くうちに舗装は途切れ、いつの間にか草木の繁茂も治まってくれた。三峰山の案内板に従って右折。三峰山登山口を通り過ぎても道は続いて下り勾配となった。地形図にない道だが麓まで通じているのかもしれないと淡い期待が湧いてきたが、ほどなくして一般通行禁止の看板があり引き返すことにする。
本線へ戻る途中で大柄な鹿が悠然と左から右へと横切った。この山塊にはヤマビルが多いわけだ。地面をよく見ればヤマビルがうごめいているのが分かるほどに多い。車外に出なければ襲われないのだが、撮影するためには降り立つしかないのだ。次に現れた脇道も右折方向。広々とした伐採跡地を通り過ぎて熊笹を掻き分けるように進む。その先は道が崩れ気味で怪しくなってきた。ヤマビルだらけの場所でのスタックは勘弁なので退散。本線に戻り杉の苗木が植えられた植林地帯を抜けると県道265号へ出ることができた。
それにしても今回はヤマビルに咬まれ放題だった。乗り込む前には欠かさず足元をチェックしていたつもりだが見落としてしまう。帰宅後にソックスを脱いで気付いた血まみれに潰れたヤマビルも含め全部で20ヶ所ぐらい咬まれてしまった。次回に備えてもう少しましなヤマビル対策を準備しておかねばなるまい。