雑誌『レッツゴー4WD』とのコラボレーションで掲載中の「ダートトリップ」。
山崎&山岡「マウンテンペア」が向かったのは、山梨県の韮崎市。
ここには素晴らしい林道が多くある、という情報を聞いて急行。
林道だけではない、素晴らしいジムニー旅が待っていました。
TS 4で山梨県に向かった、お馴染み山崎&山岡のダブルマウンテン。「ん、山梨県ってこの間行かなかった?」と思った読者の方は、相当なアピオヘビーユーザー。そうなんです、実は山梨はついこの間、フィールダーの方で行ったばかりなんです。
で、山梨と言えば、因縁の馬刺…。(詳細は「ビヨンド・ザ・フィールダーvol.13」を参照)目的地の韮崎インターが近づいてきたので「ちょっと、美味い馬刺でも食べていきますか?」と言うと、「ん? いいね〜」と撮影を始める時には決して見せないクイックレスポンス。間違いなく、前回のことを根に持っている…。
とは言え、訪れる店は口コミの高さで選んだので、どうにも自信がない。しかも、そこは飲食店ではなく、精肉店。いや、お肉屋さんだからこそ、まずい馬肉なんて置いていないはず。自分を奮い立たせ、韮崎インターから5分ほどの所にある「根岸精肉店」にジムニーを駐める。
だが、店構えはお世辞にも綺麗とは言えない。たしかに大きいお肉屋さんだが、あまり流行っているようには見えない(失礼)。午前中だから、お客もいないようで、店内で「こんにちは〜」と奥に声をかけた。すると、非常に愛想のいいご店主登場。
「馬刺を買いに来たんですが、ありますか?」と尋ねると、「ありますよ〜」とそこからウンチクスタート。何でも、山梨県内でも流通しているのはほとんど熊本県産で、地元産というのは珍しいらしい。このお店のは敷島の牧場で大切に育てられた馬の肉で、全国から買いにやってくるという。こういう時、山岡巨匠だとすぐにつっこみを入れそうなので、店外で外観撮影をしてもらっていて助かった。
ひとしきり話を聞いて、「じゃあ、200gください」と言うと冷蔵庫から肉を持ってきた。こ、この色は間違いなく生だっ! 「店内で食べながら写真撮っていいですか?」と聞くと、「どうぞどうぞ、皆さんに宣伝してくださいね〜」と上機嫌。醤油とニンニクも用意してくれるという。
巨匠の撮ってもらった写真が上。まあ、肉質に関係なくシズル感あふれる写真を撮るのだが、心なしか気合いが違う気がする。で、早速ひと口。「ぐーウマ!」肉の適度の歯ごたえがあるんだけど、まるで魚の刺身のように柔らかいのだ。しかも、臭みがまったくなく、肉の旨味しか残らない。
感動している僕の横で、ガバガバ食べている巨匠。しきりにうなづいているところを見ると、相当満足しているらしい。これで、この間の“恨み”も解消されたはず。旅のさい先も良く、我々は山へと向かった。
ここだけのハナシ、全国に林道は数あれど、写真写りが良くて走れる林道というのはそうそうない。西日本にはまだまだいい林道があるようだが、時間や予算を考えるとそんなに遠くまで行けないというのが実情なのだ。
今回掲載した林道は、僕が懐でヒヨコになるくらい温めてきた1本。それが金ヶ岳林道だ。金ヶ岳は名峰・茅ヶ岳の続きにある山で、登山が趣味で仕事である僕も、今年の春先に登った。その山をグリルと回るように通っているのが、この林道だ。
金ヶ岳に向かう前に、まずは茅ヶ岳に行ってみることにした。ここにもいい林道があることを、春に登山をした時にチェックしていたのだ。基本的には登山口に向かう道だが、結構複雑に入り組んでいる。いつもならこの林道でも十分に1本の記事ができるのだが、今回は美味しいメインディッシュが待っているのだから、業界で言う「押さえ」でとりあえず撮影。
韮崎市は山梨県内でも賑わった場所だが、山に入るといきなり鄙びた感じになる。ブドウ畑の合間を縫う舗装路から、金ヶ岳林道へと入る。記事にも書いたが、ここは非常に整備されており、まるで舗装路のようなダートだ。ジムニーユーザーには「荒れていないと満足できない」という人が多いので、そういった向きにはオススメしないが、4WDでドリフト走行などを覚えるにはうってつけの道だ。
入口からしばらく走ると、眼前にドドーンと八ヶ岳が鎮座している。今回のハイライトということで、仕事のテンションもMAX。「山があると喜ぶのは山崎だけなんだよ〜」と巨匠は嫌味を言うが、このダイナミックな景観の中を走って喜ばないのは、血糖値の低い巨匠だけだ。
金ヶ岳林道は林道観音峠大野山線へと向かうが、林道観音峠大野山線の途中が崖崩れで通行止めになっているため、林道奥山線で一度国道へと下りることにした。そろそろ昼時なので、人間にも燃料補給が必要だ。
ところが、この辺には目立った集落はなく、仕方がないのでダム湖である「みずがき湖」のレストハウスに行くことにした。実は取材中、巨匠から「ROCKのカレーが美味いんだよ〜」というハナシを散々聞かされていた。ROCKなんて店は知らないというと、桃太郎が鬼を10匹まとめて波動拳で倒した時のようなドヤ顔で、そこのベーコンカレーがいかに美味いかをとくとくと聞かせてきたのだ。
そんなカレーの王子様に洗脳された僕の舌は、すっかりカレーになってしまっていたと言っても過言ではない。で、カレーののぼり旗を見て寄ったのがみずがき湖ビジターセンターなのだが、ここはいかにも行政がやってます的な匂いがプンプンする施設。大抵、こういう場所の食べ物は美味しくないと相場が決まっている。
券売機に近寄ると、よりによって「ベーコンカレー(1000円)」の文字が。どう見ても、ちょっと離れたROCKにあやかっているとしか思えない。ダムなんだから、ダム湖カレーとか出せばいいのにと毒づく僕を無視して、巨匠は「何にしようかな〜」と真剣に悩んでいる。巨匠はグルメなくせに胃が弱くて小食だ。あれだけ人にカレーのハナシをしておいて「蕎麦にしようかと思ったんだよね」と、すべてがなかったことになっている。
結局、二人でベーコンカレーを頼んだのだが、なかなか出てこない。これはレトルトカレーではなさそうだ。ベーコンの焼けるいい香りがしてきたかと思ったら出てきたのが写真のカレー。見た目は大したことがないが、味は想像以上に良かった。
施設はまったく税金の無駄としか思えない造りで、中も謎の空間がいっぱいあるのだが、名誉のためにカレーの味は悪くなかったと記しておきたい。
みずがき湖から林道松平線に向かうと、そこには瑞牆山のダイナミックな姿があった。瑞牆山は日本百名山のひとつで、ゴツゴツの岩でできた美しい山だ。それを観ながら走れるというのは、実に贅沢だ。そんな状況下で、巨匠は「もう林道は飽きたな」とひと言。えっ、えええ〜。常々思うのだが、たまにマジで恐いことを言うな、この人は。
まあ陽も赤くなってきたので、林道を下りて、今宵の宿に向かうことにした。今日は、ガンにも効くと評判の増富ラジウム温泉に。そもそも放射性物質のラジウムが含有している温泉に入っていいのかという素朴な疑問が浮かぶが、信玄の時代から湯治に使われてきたというのだから、やはり秘められたパワーがあるのだろう。
ちなみに…。放射能泉はラジウム温泉の他に、ラドン泉やトロン泉などまるで怪獣大集合みたいだが、入浴すると当然ながら被曝する。それが健康にいいという説と、身体に悪いという説があることを付け加えておきたい。
増富温泉でとった宿は「不老閣」という旅館。老舗らしく、洞窟風呂がここの自慢だ。早速、巨匠と連れ立って洞窟風呂に向かう。結構な山道で、ちょっとした登山だ。10分ほど歩くと、山の中腹に小屋が。中に入ると、その様相は想像とまったく異なり、部屋の片隅にちょこんと岩風呂がある。洞窟じゃない…。
神棚を遥拝して、20℃という浴槽の中へ。第1回の時に入った冷泉の悪夢が甦る。まず温かい風呂で十分に身体を温めて、勇気を出して洞窟風呂へ。その瞬間が、上の写真。最初はきっついが、ジッとしていると徐々に慣れてきて、そのうち気持ち良くなってくる。
この時の僕は登山のひどい筋肉痛を患っていたのだが、わずか5分の入浴で嘘のようにそれが消えていた。
ここには3つの風呂があって、内風呂も何だか効能がすごい気がする。温かい風呂と、源泉の冷たい風呂がるのだが、ここの入浴の雰囲気は独特だ。普通、温泉の大浴場というと、みんなリラックス気分でだら〜んとしているものだ。ところがここは、よく効く、特別な泉質、という触れ込みが脳内を支配しているのか、みんなやけに神妙だ。
「失礼つかまつる」みたいな感じで浴場に入ってきて、風呂に浸かる。湯に入っている時もじっと目を瞑り、まるで修行僧のように黙っている。そしてしばらく浸かると、また「御免つかまつる」みたいな感じで出て行くのだ。その光景が何ともおもしろくて、僕は入っているおっさんばかり観察していた。
不老閣には貸し切り風呂というのもあり、ハナシの種に入ってみることにした。巨匠と入るというのは忸怩たるものがあるが、まあ仕事だから仕方がない。小さいながら、ここにも温かい浴槽と冷たい浴槽があって、これを交互に入浴する。温かい方の湯口には水晶が置いてあり、この波動がまた身体にいいらしい。
この水晶の横には「波動が乱れるので触らないでください」という張り紙があったのだが、例によって巨匠が触り始めた。きっと…と思っていたら、案の定、積んであった水晶が崩れて浴槽の中に落ちてしまった。
「だから触らないでって書いてあるじゃないですか〜」とたしなめると、「いや、オレが積んだ方がいい波動が出るね」とまったく悪びれない。国が違えば、きっとこういう人が独裁者になって、僕のような善良な民を粛正していくんだと思う。
ラジウム泉の効果なのか、夜10時から朝6時まで爆睡した我々は、朝風呂を浴びて朝食を摂った後、林道観音峠大野山線に入った。途中で通行止めとは分かっていても、行ける所まで行きたくなるのがオフローダーの性というものだ。
林道観音峠大野山線の北側は、ゲートからしばらく舗装路が続くのだが、やがてダートに入る別なゲートがある。これが本線だと思ったのだが、実はこちらは支線である木賊平線の入口。この林道は路面にうっすらと草が生えており、まるで緑のビロードの上を走るような道だ。
ここを数㎞ほど走ると、やがて開けた場所に出る。最近、樹木を伐採したばかりのようで、それが素晴らしい景観を造りだしていた。瑞牆山、そして金峰山の尾根が向こうに見え、その中を走り回る。荒れている楽しい支線が周辺にいっぱいあるのだ。そこはまさに、オフローダー天国。
ちなみに林道観音峠大野山線の開通は未定で、おそらく来年度も難しいかもしれないということだ。南側か北側のどちらかしか通ることはできないが、それでも走る価値は十分ある。
この旅では、多くの素晴らしい林道を見つけることができた。山梨県の林道はその多くが通行止めの憂き目に遭っているが、この地域は林業が盛んなためか、どれも立派に機能している。そして、どれも非常に気持ちがいい。あと少しで冬季閉鎖になってしまうが、この週末は紅葉でも観に走りに行っていただきたい。
文/山崎友貴 写真/山岡和正
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