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ON THE STREET BURGER
VOL.039
最愛の恋人へ~GRANNY'S CAFE [静岡・三ヶ日]
最愛の恋人へ~GRANNY'S CAFE [静岡・三ヶ日]

浜名湖一周のちょうど真ん中、
天浜線・三ヶ日駅の駅舎のカフェは
グラニーが「愛」をこめて作ったバーガーで大人気!

「なに? 浜松に志願者? 明朝7時、××海岸の灯台で待ってるって??」


前回、静岡「Tequila's Diner」で桁違いにワイルドなテキーラ氏の冒険譚を聴いていたところへ本部より一報が入り、われわれAPIOジムニーコンプリートカーTS7「ハンバーガー号」一隊は、夕暮れの東名高速を一路浜松へと向かったのであった――。

朝日の特訓

翌朝、指定の灯台へと向かう一隊。APIO河野司令が駆る指揮車・ジムニーシエラコンプリートカー「ルミノックス号」を先頭に、ハンバーガー号が続く、その前を走るもう1台のジムニー……。


果たして彼が志願者その人だった。APIOジムニーコンプリートカー「バンビー号」に乗るその男の名は中津川敬。WEB制作集団「ギガント」を率い、さらにロードバイクチーム「ジャンクフードブラザーズ」を結成して浜松一帯にその名を轟かせている。静岡エリアのバーガーパトロールは「ぜひ自分に」と志願してきた次第。


 「おう、まずはお手並み拝見と行こうじゃねぇか」と何とも柄悪く絡む河野司令。
 「わかりました!」と必死の中津川氏。


それぞれのジムニーに飛び乗る二人。走るバンビー号。追うルミノックス号……。

朝の砂浜で河野司令の「鬼のしごき」が始まる

 「おらおらおら! そんなんじゃ空飛ぶハンバーガーの攻撃をかわせないぞ!」
 「わかりましたっ!」
 「もっと腰入れろ!」
 「わかりましたっ!!」
 「また口開いてる!」
 「うるせー! くそじじいー!!」


太平洋より昇る朝日を背に受け、砂塵を上げて疾駆する2台。うなるエンジン。きしむサスペンション。2台は溶けてバターになるほどに、砂の上をいつまでも輪になって駆け回った。


 「ふぅ……フゥ……フゥ……なかなかやるな、お前」

あまりに陳腐なセリフである。

 「……よし、あの灯台まで競走だ!」

あまりに遠い青春である。


かくしてAPIOハンバーガー隊静岡エリア・中津川支部長が誕生した。さぁいよいよ支部長の初仕事! 本当のお手並み拝見はここからである。目指すは浜名湖北岸、三ヶ日(みっかび)。みかんの産地として知られる陽当り良好・風光明媚な土地である。

駅舎のカフェ

浜名湖に沿って走る天竜浜名湖鉄道天浜線(てんはません)」は、駅舎の一部を店舗として貸し出しており、喫茶店、ベーカリー、中華料理店など、それぞれ異なる店が収まっていてユニークだ。


そんな天浜線・三ヶ日駅の駅舎を改装して「GRANNY'S CAFE(グラニーズカフェ)」を始めたのは佐藤晴美さん。東京は赤坂生まれの晴美さんは2003年、ご主人とともに三ヶ日に移住。別荘地を見に行った際、「マリーナもあるし、プールもあるし、テニスコートもあるし、ここだったら」と移住を決めた。富士五湖・河口湖畔の別荘地に移住して店を始めた「MOOSE HILLS BURGER」の浜名湖版である。


「飲食店やろうなんてこれっぽっちも思ってなかったんですよ――」。

東京ではバリバリのキャリアウーマンだった晴美さんの初めての田舎暮らし。主婦を3年やってみたものの、やがてため息をつくようになり、一転マクロビオティックの資格を取って自宅で料理教室を始めた。


さらにレストランを開こうと古民家物件を当たるが、手直しにとんでもなく費用が掛かることが判明。そこへ三ヶ日駅が店舗として貸し出されていることを知る。


見に行くと中は物置き状態。壁と天井を塗り替え、床を張り替えして全面改装。ビビッドでカラフルなカフェに生まれ変わらせた。唯一残したのは駅員用の食堂にあったテーブル。食卓。店内奥の6人掛けがそれである。


2009年春オープン。マクロビとは「真逆」のハンバーガーを売りにしたカフェ。土日限定1日10食の駅弁が大人気だった時期もあるが、今はやっていない。グラニーとは晴美さんのこと。お孫さんにそう呼ばれているそう。

笑顔の補給所

浜名湖一周のちょうど真ん中に当たるため、バイカーやサイクリストに人気が高い。中日新聞に「笑顔の補給所」と紹介された。

時にはドドドドドドド……と何台も連ねてバイクがやって来る。「どんどん来るの。23台でしたね。みんな嵩張ってるじゃない? オートバイの方はヘルメットからして嵩張ってるでしょ? でブーツ履いて。入ってくるだけで『嵩張ってるな』って」。この時は駅の待合室も使って待ってもらった。


と言いながら晴美さん、実はちょっとしたクルマ好きである。ページ下部"ギャラリー"の写真に愛車歴を添えておいたので参考に――。


そんな晴美さん自慢のハンバーガーは全7品。プレーンバーガー580円~と安めのスタートで、目玉はブランド牛肉・みっかび牛使用の「三ヶ日バーガー」1,280円。


パティは2種類。三ヶ日牛バーガー以外のパティは豪州牛50g。三ヶ日牛バーガーのみっかび牛パティは130g。つなぎに挽肉1kgに対して1個の卵。フライパンでグリル。


最初はバンズも焼いていたが、追い着かなくなって、今はなんと鎌倉のパン屋から取り寄せている。焼くまでに手間を3工程かけた上でオーブンで焼き込み。かっちり硬めに締まった食べ口。パティも硬めの結着。


カレー屋の友達から「ハンバーガーはソースが決め手だよ」と教わり、開発した自家製ソースはマンゴーをベースにした甘口。その陰でマスタードがピリッと辛味を利かせている。チーズはチェダーとモッツアレラの2種、極上卵の目玉焼き、ベーコン、キャラメリゼしたオニオン。クラウン(上バンズ)の上にピクルス。ヒール(下バンズ)の上にはマッシュポテト。サニーレタスとトマトは三ヶ日産。


味のベースはソースの甘味。ケチャップ・マスタードも入って、味も見た目もカラフルでワイワイにぎやかな豪華版。

我々が訪問する前週に「断食」の道場から帰ってきたばかりの晴美さん。10日間かけて徐々に体を慣らしながら断食し、また戻す――そんな断食の会に参加した結果、あらためて「この店やって行こうと思ったの。もっと健康的な食生活していいんだよってことを教えたいな。男の人も最近細いですよね。みんな食べない」。


「大量生産のお店になくて、グラニーズにあるのは『愛』ですね。私はバーガーをひとつひとつ、最愛の恋人に食べてもらう気持ちで作っております」――後日APIO本部に送られてきた晴美さんからの手紙はそう結ばれていた。


§§


 「旅で連れて来るんだったらここ一番いいね。特に女の子とか連れてドライブに。意外性あって。『どこ連れてくの?』『ハンバーガー食べに行こ』って言って……三ヶ日(笑)。『ホントにあるのこの先に?』『あるよ』……(笑)」
 「河野司令、お気をつけください! 読者が見てます……」
 「って、見せてるのはお前だろっ!」

(つづく)

< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

GRANNY'S CAFE [静岡・三ヶ日]

― shop data ―
所在地: 静岡県浜松市北区三ヶ日町三ヶ日1148-3
アクセス: 東名高速・三ヶ日ICより8分
駐車場: 駅舎の前に4台以上
TEL: 053-525-0830
URL: http://grannys.hamazo.tv/
オープン: 2009年4月
営業時間: 10:30~16:30
定休日: 水曜日・木曜日(要確認)

河野司令乗車のルミノックス号(左)と中津川さんの愛車バンビー号(右)
浜名湖SAより
グラニーズ前で3台揃い踏みの図
天竜浜名湖線・三ヶ日駅。昭和11年築。登録有形文化財に登録されている
手前が「唯一残した」という駅員用の食堂にあったテーブル
花ざかりな店内
テラス席もカラフルに飾られている
「グラニーズバーガー」1,080円。パティ50gも厚くて大きいベーコンが入ってガッツリ
店主・晴美さん。モーリスミニ1300→ボクスホール ビバ→スカイラインGT→コロナマークⅡ→VW カブリオレと乗り継いで、現在の愛車はベンツのステーションワゴン。買い出しに便利!