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ナローシエラで林道探訪
VOL.001
ナローシエラで林道探訪 Vol.1
ナローシエラで林道探訪 Vol.1


「ナローシエラで林道探訪」が、雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連動するスタイルでスタート。
同誌の発行月(奇数月)は連載中の『林道パラダイス』を再編集し、
偶数月はオリジナルの林道探訪記を動画も交えて綴っていきたい。

Photo & Text : 赤ぞう

七ケ岳林道

2022年の12月中旬、まだ本格的に雪が積もってしまう前に薄っすら雪化粧された林道を走ろうと、福島県会津地方へ向かうことにした。スタッドレスタイヤは、アイスガードSUVに新たに加わった6.50R16。過去に履いていた185/85R16よりも外径が大きいので踏破力の高さが期待できる。

福島県会津地方へは国道121号の山王トンネルを抜けて入った。目指す林道は七ケ岳林道。七ケ岳の山腹を通って会津高原だいくらスキー場方面へつながっている。林道の手前までは路面に積雪がなかったが、林道へ入ると路面は真っ白。今シーズン初のスノーアタックができそうだ。ちょっと残念なのが先行車の轍が刻まれていたこと。雪の抵抗が少なく走りやすいが、このまま突き進んで大丈夫だろうか?という不安感がなく物足りないのだ。それでも雪景色はすばらしい。久しぶりに雪の感触を味わいながら名もない峠の分岐点まで一気に駆け抜けた。スキー場方向へと続く本線には相変わらずくっきりと轍痕があるものの、峠から東へ下っていく林道は轍痕がないまっさらなパウダースノーが続いている。もちろん東へ下る道を選択。60センチを超えるふわふわの雪道を雪煙を上げて快走する。これもスノーツーリングの醍醐味のひとつだ。

いったん下り切ってから古桧峠へ通じる林道へ左折。こちらも先行車の轍が刻まれていない積もりたての雪道だった。気分よくスノーラッセルしながらぐんぐん標高を稼ぐ。植林された森なのだろう、針葉樹ばかりの森で思う存分にパウダースノーを堪能してから下山。宿泊地である只見町の温泉へと向かった。

只見町の林道

只見町の深沢温泉で癒された翌朝は晴れ。近くの只見湖へ向かったところ、湖畔の道は轍痕がないふわふわのパウダースノー。風がなく鏡のような湖面に周囲の雪山が映り込み、何とも美しい風景を作り出していた。
続いて向かうのは伊奈川の支流楢戸沢沿いの林道。こちらにも轍は刻まれてなかったが、路面に流れ込む沢水のお陰でタイヤ1本分は路面を踏める状況だった。雪の抵抗が半減されるのでどんどん行ける。潜水橋という感じの沢をいくつも渡って奥へ奥へと進んだ。ここまで入り込む車両は少ないからだろう。林道を覆うように茂る草木が多くなり、路面に転がり落ちている落石も増えてきた。ここら辺で引き返すことにしよう。

南会津町の林道

隣町の南会津町の林道へ向かったところ、入口には「道路狭し!車両にキズがつく場合があります!」と、実に親切な注意看板が立っていた。もちろん細心の注意を払って走行しますよ。と言い聞かせてトランスファーを4Lにシフトして進むと、雪の重みでしなった木の枝に行く手を阻まれる。こういうときは枝を手で揺すれば解決。雪は落ちて枝がすくっと立ち上がり道は開けるのだ。標高が上がるにつれて雪の深さは増していく。前進後退を繰り返してのスノーアタックでエンジンに高回転の負荷を掛けていたら、焦げ臭い匂いが漂ってきた。完全にオーバーヒートしてしまう前に更なるアタックは断念。過度な頑張りは禁物だ。

木伏椿平林道

旅のラストに走ったのは南会津町の木伏椿平林道だ。標高1000メートル近い尾根を越える道を椿沢側からアタック。木々に覆われた沢沿いルートのため、路面に積もった雪は割と少なく調子よく登っていく。風が吹くたびに枝に積もった雪が舞い散り幻想的な情景が現れる。ところが、標高800メートルを超え右に大きく曲がる急坂に差し掛かった途端に登れなくなってしまった。状況を確認するため降りようとしたが、雪を押し除けるようにしないとドアが開かない。かなり深い雪だ。無理やり降り立つと雪の下はカチコチのアイスバーン。スタッドレスでは歯が立たない。タイヤチェーンを巻けばいいのだろうが薄暗くなってきたこともあり引き返すことにした。その場でUターンしようと前後にもがいているうちに、右後ろのタイヤが側溝に落ちてしまった。抜け出そうにもタイヤは滑るばかり。こんなときは電動ウインチの出番だ。近くにあったカーブミラーの根本にストラップを巻いてウインチワイヤーをシングルラインでセッティング。スイッチを入れると軽々と巻き上げてくれ溝から脱出できた。道の真ん中まで引き上げてからワイヤーを格納し、勾配が緩くなるところまで慎重に後退させてからUターン。ほどよくウインチングも楽しませてもらい無事に下山することができた。

このツーリングでは6.50R16のアイスガードSUVの踏破力の凄さを確認できた。デフ下は高ければ高いほど雪の抵抗が減るのでタイヤ外径が大きい方が有利だからだ。
なお、会津地方のこれらの林道は12月の積もったばかりの雪だから楽しく走れたのであって、本格的なシーズンに入ると積雪量がさらに増えてしまい、走行困難な状況になるであろうことを申し添えておきたい。

ナローシエラ誕生秘話

それは2018年12月のこと。日本ジムニークラブ神奈川支部の忘年会ツーリングで尻焼温泉に泊まったときの河野さん(アピオ社長)との何気ない会話から始まった。

自分は当時、新型に代替わりしたばかりのJB64に乗っていたが、それまで十数年に渡りJB43に乗ってきた経緯を知っている河野さんから、なぜ今回はJB74ではなくJB64を選択したのかを問われたのだ。JB74を購入するつもりでカタログをめくったところ、車幅が45ミリも拡大(JB43が1600ミリだったのに対してJB74は1645ミリ)してしまったのに愕然としたこと。林道は落石や倒木で極端に幅が狭い場合があり、その45ミリの差で通れないときもあるので、今回はJB64を選択したことを話した。

ではどうしてJB64で満足できなかったのか?それは排気量の違いから生まれるトルク感の差と言えばいいのかもしれない。実は過去、JB23に7年乗ってからJB43に乗り換えていて、排気量が大きいだけで、こんなにも乗りやすくなるのかということを身をもって経験している。また、足回りにも差があって、スプリング類の取付位置は同じだが、JB74の方がホーシングは長くタイヤが外側にあることで、モーグルなど前後のタイヤが捩れるような場面では実質的なサスペンションストロークが大きくタイヤの路面追従性が高いのだ。

その夜、JB74のインセット+5のホイールを、+20のJB64用に交換するだけで片側15ミリ減となり、両側で30ミリ狭くできる。その幅に合わせたオーバーフェンダーを作れば、JB43並みの車幅に抑えることが可能になるなどと語り合ったのだった。そして2021年6月、満を持してナローシエラが誕生。その第1号車を自分は手にしたのだ。

なお、写真の「AKAZO EDITION」エンブレムはナローシエラを購入した者だけに贈呈される限定品。もしもナローシエラを購入したのに受け取ってない場合はアピオへ問い合わせてもいいだろう。ちなみにペンネームの「赤ぞう」は象好きに由来しており、このエンブレムのデザインにも関わらせていただいた。

ライタープロフィール

赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。
ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。

YouTube赤ぞうチャンネル
https://www.youtube.com/@akazosan

轍が刻まれていた七ケ岳林道を行く。
七ケ岳林道では幹の曲がり具合が雪深さを物語っていた。
すばらしい雪景色が続く七ケ岳林道から東へ下っていった林道。
只見湖畔のパウダースノーを走る。
楢戸沢沿いの林道は、路面に沢水が流れ込んで雪が解けているので走りやすい。
楢戸沢沿いの林道で引き返した地点。
手で枝を揺すれば、雪が落ちて枝が立ち上がり道は開ける。
南会津町の林道を行く。
木伏椿平林道の入口付近。木の枝に積もった雪が美しい。
スタックして電動ウインチで脱出。