ジムニー車中泊ひとり旅 Vol.12
Men alone travel by jimny
暖かくなり、上着はジムニーのバックシートで小さくなっているが、
山奥の林道は冬季閉鎖のままで春はまだ遠いようだ
しかし、太平洋に近い富士山周辺の林道なら今でも走れるかもしれない
新たな林道を求めて、富士山麓をグルっと一周する旅に出た
Photo & Text : 山岡和正
初春や晩秋などに走れる林道を探すのは難しい。春に冬季閉鎖が解除されるのは基本的にゴールデンウイーク直前だし、ゲートの無い林道には残雪がたっぷりと横たわっていたりする。そのため関東周辺でこの季節に林道を走るなら必然的に南方のエリアになってしまうのだが、今回は地図やネットと睨めっこしても行ってみたいと思わせてくれる林道がすぐには見つからなかった。
ふと、少し前に行った富士山麓あたりの林道を思い出し、ピンポイントで調べてみると良さそうな林道が溢れてくる。総じて短めの林道だがルートをつなぎ合わせると結構な距離になりそうだ。
そして、山中湖付近の富士山北側から反時計回りに林道を巡ってみる事にした。
先ずは富士浅間神社の裏に広がる林道群に入り針葉樹の森を彷徨う。この辺りは熟知しているつもりだったが、一本の知らない支線に入りこむと次々に新たな林道が現れ景色も良い感じで流れていく。あまりにも気持の良い林道だったので小休止に珈琲を淹れ、幸先の良い滑り出しだと気を良くしながら、次の朝霧高原方面へと向かった。朝霧高原への道すがら数本の林道へ分け入ったが、景観は良いもののやはり距離が短い。直ぐに行き止まるか、元の国道へと出てしまうのだ。予想はしていたが、西のエリアは残念な感じで少し物足りなかった。
翌日は天気予報通り未明からの土砂降りで始まった。南から東へと富士山をトラバースするように伸びる国道から側道へ入ると直ぐに未舗装路へと変わる。この林道は結構な距離があり、ダートが途切れる様子もない。加えて霧が森とJB74の周りを包み始め、ゆっくりと周囲の木々がそれに飲み込まれていく。夢の中の林道を走っているような、あまり味わったことのないなんとも不思議な感覚にさせてくれる。
白く幻想的な景色の中を行く林道旅は最後に最高のものとなった。
富士山の北側から東側にかけての走行可能な林道地帯は大半が陸上自衛隊の北富士演習場といってもいいだろう。一部の林間部を除いて大半が広大で荒涼とした荒野となっている。普段は入山禁止だが、恩賜県有財産保護組合で入山鑑札の発行手続きを行えば指定日に限り立ち入ることができる。
西側にはクローズドのオフロードコースがいくつかあるものの、自然のオフロードは数少ない。麓から富士山へと続く林道も今ではほぼ舗装されてしまったようだ。支線のような道を時折目にするが、樹海の自然を荒らしてしまうようで入るのを躊躇してしまう。
林道脇に聳える巨大な杉林が圧巻の快走路。1本当たりの距離は短めだがエリア内の入り組んだ林道群を繋ぎ合わせればまずまずの距離になるだろう。気を付ければ乗用車でも問題なく走行できるほどフラットで締まった道なので、スピードの出しすぎには注意したい。
御殿場市街から程近いわりに、森へ入ると一変して静かな原生林となる。狭い用水路のような道も多くJB74だと気を遣う場所も多い。年間を通して水分が抜けることは無く常に苔や濡れた落ち葉に覆われているが、晴れた日に光が差し込むと光を帯びた苔の絨毯がなんとも言えず美しい。近年では道路や公園の整備が進み、少しずつエリアが狭くなってきた。
山岡 和正
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。