ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.35 「立科」
Traveling alone with jimny.
八ヶ岳~ビーナスラインの向こう側
雪に閉された森で、雪中キャンプに興じる
大寒を過ぎ冬本番といったところだが、今季はまだ雪を見ていない
ジムニーで行くスノートレックや、極寒のキャンプを楽しんでみた
Photo & Text / 山岡和正
SPECIAL THANKS/姫木平ホワイトバーチキャンプフィールド:公式ホームページはこちら
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。
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スノーキャンプは楽しい。
零下の中で凍え、装備は濡れ、何をするにも通常のキャンプよりひと手間かかってしまう酷寒キャンプ。しかし、雪の造形物や小動物の足跡、ウインドウに現れる氷の結晶など普段見ることのできないシーンにたくさん出会えるのである。
そこで重要となってくるのが場所の選定であるが、これがなかなか難しい。白銀のフィールドで思い切りキャンプしたいとはいえ、雪が多すぎると森に入って行けないし、少ないとただ寒いだけの普通のキャンプと同じだ。リサーチしてみても、雪質や量などリアルな雪の情報は現地に行ってみないと分からないというのが実情だ。とはいえ、いつまでも地図を見ていても仕方が無いので、長野県の小諸市から立科あたりを漠然と目標に決めた。後は行き当たりばったり的に、狙いの雪を探しながら彷徨ってみることにした。
上信越道を走り小諸市エリアに入ってはみたものの、周辺に雪は無かった。遠くに見える八ヶ岳や、微かに噴煙を上げる浅間山は銀嶺の装いを見せているが平地を見る限りは普段の街並みだ。空を見上げれば厚い雲が覆っているし、雪があるのかも怪しくなってきた。気分は最悪だが、とりあえず林道に入り高度を上げてみれば何とかなるかもしれないと、街を離れて山の中へと入って行った。
林道を進み高度が1000mを越えたあたりから、少しずつ雪が現れ始めた。麓での心配をよそに、雪の量はコーナーを抜ける度に増えてくる。山の北斜面では割と深い場所も出現してきたが、今回の相棒であるJB64はマッドパターンよりのスタッドレスを履いているので、雪を掻きながらぐいぐいと頼もしく進む。メインルートは新雪が積もっているとはいえ、数日前に通ったようなタイヤ痕がうっすらと見える。それに比べ、支線と思しき道は車が通らないようで、雪に覆われて雪原の様相だ。
国土地理院の地図では明確に道が記されているし、道の痕跡はあるのでリスクを承知で少しだけ新雪の森の中を走ってみようと思う。雪の深さは10~15cmくらいだろうか、装着しているスタッドレスで問題ないと思うが、何分一人なので危険回避のために装備していた新型のチェーンを巻いた。
やはりチェーンの効果は絶大で、がっちりと地面をとらえ進んで行く。積もった雪をパウダースノーに変えながら、白い林の隙間を縫ってゆっくりと走る。その時、そのアドベンチャーな気分は最高潮に達していたと言ってもいいだろう。
森を抜けると眼下に集落が見えた。このまま行くと麓の県道に出そうなので、引き返してメインルートに戻った。山の中腹をトラバースしながら進み、林道わきの広場で小休止する。ふと温度計を見るとマイナス4度の表示。まだ14時半だというのに、寒すぎる。これ以上寒くなる前にと、野営地へ急いで向かった。
白樺に囲まれた美しいキャンプサイトは、スノーキャンプに最適の空間だった。寝床の準備を整えて、簡単な夕食を済ませる。極寒の中で焚火を熾す気力はなく、そそくさと寝袋の中へと逃げ込んで、そのまま眠りについた。
翌朝、眩い陽の光に照らされて目を覚ました。車外に出ると、輝く宝石のようなダイヤモンドダストが宙を舞い、キラキラと森全体を包んでいた。