ジムニー車中泊ひとり旅 Vol.10
Men alone travel by jimny
山は黄色く色づき始め、キャンプには最適な季節
暑くて湿った寝苦しい夜からも解放される
涼しく澄んだ空気を感じながら温泉、そして焚火を楽しもうと
ブナの原生林と白樺の森、カヤの平高原へとJB74で向かった
Photo & Text : 山岡和正
暑さも峠を越えた9月。空もずいぶんと高くなり、秋の気配を感じるようになってきた。
肌寒くなってくると恋しいのは温泉である。今まで数えきれないほどの温泉に入ってきたが、その中で湯田中温泉の「よろづや」旅館をふと思い出し、歴史ある桃山風呂に無性に入りたくなった。そういえば、そこからは人気のキャンプ場「カヤの平高原」も近い。「思い立ったが吉日」とばかりに早々に準備して長野県北部にあるキャンプ場へと出発した。
長野道を降り、国道から「カヤの平高原」へと続く狭い山道に入ると急に空気が変わってきた。ジムニーのウインドウをおろし冷たい外気を呼び込みながら走ると、草や木の匂いが鼻をくすぐり何故か懐かしさを感じる。気が付けば周りは白樺の森に変わっていて、青空と白樺の白く光る樹皮とのコントラストが例えようのない美しさを放っている。森を抜けると急に空が広がり、その先に草原の広がるキャンプ場が見えてきた。
キャンプ場には到着したものの、不思議なことにまったく人の気配がしない。周りを見てもテントはおろか人も車もなく高原はひっそりと静まり返っていた。とりあえず案内所へ行き管理人さんに聞くと、今日は他のキャンパーの予約も無いので自由にやってよいという。なんと、広々としたサイトが貸し切り状態である。更には、夕方になると管理人さんもいなくなるので「カヤの平高原」に一人ぼっちということだ。予想外の状況に気を良くしながら、高原の端に堂々と立つ大木の傍らにサイトを展開することにした。
夕方になると空を覆い始めた雲の隙間から黄色い太陽がこちらを眩しく照らし始めた。今この瞬間、白樺とブナの原生林や視界に入る全てを独り占めしているということに、たとえようのない幸福感を感じた。夜になると霧雨が舞いはじめ、すぐ側にあるジムニーが見えなくなるほどの濃い霧が辺りを覆った。おそらく高原全体が雲の中に入っているのだろう。このままなら早朝に幻想的な景色が見られるかもしれないと期待しながら眠りについたが、あれほど濃かった霧も翌朝には幻のようにどこかへ消えていた。
このエリアではよく知られたスタンダードな林道で、整備もしっかりとされていて走りやすい。東側は白樺の原生林を見ながら走り、西側は広葉樹で少し暗めの森となる。この林道は重要度が高いのか既に整備済みだったが、周囲の林道は昨年の台風の影響が残り未だ工事中のようで支線などを含めほとんどが立入禁止になっていた。
登録有形文化財に指定されている純木造伽藍建築の「桃山風呂」が圧巻の老舗旅館。地元の食材を使う懐石料理と天然温泉、そして「おもてなし」は絶えることなく2百年以上も続いている。泉質はナトリウム塩化物・硫酸塩温泉で無色透明、関節炎・神経痛・疲労回復などに効果がある。
※コロナ過での対策のため、現時点(2020年10月)での日帰り入浴は利用できません。
志賀高原の北に位置し、樹齢300年を超えるブナと白樺の原生林に囲まれた、アクセスの良いキャンプ場。標高は1500mあり、ニッコウキスゲなどの高山植物がみられる湿原や、白樺林の遊歩道も素晴らしい。
当日は曇っていたが、晴れていれば満点の星空も見られるだろう。草地のサイトは車の乗り入れもでき言うことなしだ。
開店の時間に合わせて到着したものの、すでに満席だったほどの人気店。何をオーダーするか迷ったが、中でも皆が絶賛している黒毛和牛のハンバーグをチョイス。ジューシーでふっくら、評判通り納得の美味さであった。定食の種類は多く、ご飯とみそ汁はおかわり自由というオマケつき。
SOTO スライドガストーチ ST-480
着火時の強い味方
炎の温度が1,300℃あり風にも強く、火口が7cmほど伸びるので安全性も高い。燃料は充填式でライターガスの他、コンビニで入手できるカセットガスも使用可能だ。
山岡 和正
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。