高原を独り占め 静けさと白樺の森に癒される
暑さも峠を越えた9月。空もずいぶんと高くなり、秋の気配を感じるようになってきた。
肌寒くなってくると恋しいのは温泉である。今まで数えきれないほどの温泉に入ってきたが、その中で湯田中温泉の「よろづや」旅館をふと思い出し、歴史ある桃山風呂に無性に入りたくなった。そういえば、そこからは人気のキャンプ場「カヤの平高原」も近い。「思い立ったが吉日」とばかりに早々に準備して長野県北部にあるキャンプ場へと出発した。
長野道を降り、国道から「カヤの平高原」へと続く狭い山道に入ると急に空気が変わってきた。ジムニーのウインドウをおろし冷たい外気を呼び込みながら走ると、草や木の匂いが鼻をくすぐり何故か懐かしさを感じる。気が付けば周りは白樺の森に変わっていて、青空と白樺の白く光る樹皮とのコントラストが例えようのない美しさを放っている。森を抜けると急に空が広がり、その先に草原の広がるキャンプ場が見えてきた。
キャンプ場には到着したものの、不思議なことにまったく人の気配がしない。周りを見てもテントはおろか人も車もなく高原はひっそりと静まり返っていた。とりあえず案内所へ行き管理人さんに聞くと、今日は他のキャンパーの予約も無いので自由にやってよいという。なんと、広々としたサイトが貸し切り状態である。更には、夕方になると管理人さんもいなくなるので「カヤの平高原」に一人ぼっちということだ。予想外の状況に気を良くしながら、高原の端に堂々と立つ大木の傍らにサイトを展開することにした。
夕方になると空を覆い始めた雲の隙間から黄色い太陽がこちらを眩しく照らし始めた。今この瞬間、白樺とブナの原生林や視界に入る全てを独り占めしているということに、たとえようのない幸福感を感じた。夜になると霧雨が舞いはじめ、すぐ側にあるジムニーが見えなくなるほどの濃い霧が辺りを覆った。おそらく高原全体が雲の中に入っているのだろう。このままなら早朝に幻想的な景色が見られるかもしれないと期待しながら眠りについたが、あれほど濃かった霧も翌朝には幻のようにどこかへ消えていた。
EXTRA SHOT
丸山林道このエリアではよく知られたスタンダードな林道で、整備もしっかりとされていて走りやすい。東側は白樺の原生林を見ながら走り、西側は広葉樹で少し暗めの森となる。この林道は重要度が高いのか既に整備済みだったが、周囲の林道は昨年の台風の影響が残り未だ工事中のようで支線などを含めほとんどが立入禁止になっていた。
湯田中温泉 「よろづや」登録有形文化財に指定されている純木造伽藍建築の「桃山風呂」が圧巻の老舗旅館。地元の食材を使う懐石料理と天然温泉、そして「おもてなし」は絶えることなく2百年以上も続いている。泉質はナトリウム塩化物・硫酸塩温泉で無色透明、関節炎・神経痛・疲労回復などに効果がある。
※コロナ過での対策のため、現時点(2020年10月)での日帰り入浴は利用できません。
カヤの平高原キャンプ場志賀高原の北に位置し、樹齢300年を超えるブナと白樺の原生林に囲まれた、アクセスの良いキャンプ場。標高は1500mあり、ニッコウキスゲなどの高山植物がみられる湿原や、白樺林の遊歩道も素晴らしい。
当日は曇っていたが、晴れていれば満点の星空も見られるだろう。草地のサイトは車の乗り入れもでき言うことなしだ。
黒毛和牛のハンバーグ(ごはん処じょうや)
SOTO スライドガストーチ ST-480

山岡 和正
EXTRA SHOT
丸山林道
白樺林のエリアは白い砂利が敷いてあり爽快に走れるが、フラインドコーナーも随所にあるので速度は控えめに。
ごはん処じょうや・清潔感のある店内と、料理の綺麗な盛り付けに好印象がもてる。
カヤの平高原キャンプ場(管理棟)
カヤの平高原キャンプ場(炊事棟)
カヤの平高原キャンプ場を取り巻くブナの原生林
湯田中温泉よろづや・「桃山風呂」の他にも「庭園露天風呂」など6つのお風呂があり、3つの自家源泉を持つ柔らかな湯はもちろん掛け流しだ。
湯田中温泉よろづや・ロビーから部屋に至るまで空間に余裕が伺え、「和」のテイストが心地よい。仲居さんをはじめスタッフの対応も素晴らしく、リピーターが多いのもうなずける。
涼しくなると車内で過ごすのも快適になる。森の絵画が飾られた美術館のような車内で珈琲を飲みながら過ごすひと時は至福の時間である。