男のジムニー車中泊ひとり旅 Vol.9
Men alone travel by jimny
7月、雨は降り続き収束する気配はない。
以前に比べ的中率の上がったはずの天気予報もあてにならず、
空は分単位で違った顔を見せる。
微妙な天気の中、アピオジムニーシエラJB74と富士山麓の本栖湖へと向かった。
Photo & Text : 山岡和正
このところの雨続きには参る。天気予報も毎日変わり、出掛ける予定も立てられない。しかし、雨のキャンプもそう悪くはなく、タープに当たる雨の音などは聞いていて心が和んだりするものだ。そこで、降水確率は気にせず富士山麓にある本栖湖を目指すことにした。それは土壌が火山灰で水はけが良く、キャンプや林道走行に大して支障がないと思ったからだ。もちろん巨大なランドマークである富士山を見ながら眠りたいという思いもあった。
出発の日も、いつものように小雨がちらついていた。中央道を西へと走り河口湖辺りまで来てふと見上げると富士山の山頂がちらりと顔を覗かせている。これは期待が持てそうだと心を躍らせながら、先ずは林道へと入り込んで行く。
この林道の景色は予想以上で、広葉樹の森と原生林が対面しずっと続いていた。玄武岩らしき富士火山の噴出物に苔がびっしりと張り付く景観はとても美しく、空気はひんやりとして暑さなど無縁に思えるほどだ。
もう少し林道を走りたかったが、今回は早々にキャンプ場へ向かわなければならない。降り続く雨の影響で水位が上昇している湖畔のキャンプ場はキャンプサイトがいつもより狭くなっているため、遅くなれば良いキャンプサイトの確保が困難になるからだ。到着すると、予想通りサイトの選択肢はすでに限られていた。何とかジムニーを湖畔の近くに止め富士山が現れるのを待ったが、いくら待ってもそんな気配は全く無く結局その日はそのまま日没を迎えた。
翌朝、早く起きてまだ薄暗い時間から富士山が現れるのを待つ。そして辺りがようやく明るくなり始めた頃、流れる雲のわずかな隙間からゆっくりと富士山がその姿を覗かせたのだ。それはいつもの様相とは違い、限りなく青く神々しかった。しかし、感動している間もなく次々と押し寄せる厚い雲の中へ沈むように掻き消えてしまった。
その後も再び現れることを願いながら待ち続けたが、霊峰富士は沈黙したまま纏った雲を振り払うことは無かった。
以前は林道天国だった富士山周辺も、舗装や入山規制により走れる林道は減少している。しかし、長距離は望めないものの起伏や景色のバリエーションが豊富で、経験値に応じた選択もできる。広大な荒野を連想させる魅力的な道も存在するが、立入禁止の危険なエリアも多々あるので注意が必要だ。
本館の外観だけ見ると歴史ある老舗旅館のたたずまいだが、その周囲には大きな水車や釣り堀、紅葉のテラスなど玄人はだしのご主人の手によって作られた建築物が犇めき合う。渓谷が見下ろせる露天風呂やエントランスへ続く遊歩道にいたるまで手作りで、あちこち見ているうちに時間を忘れてしまうほどの楽しさがある。
富士山北西に位置し、透明度が高く深度の深い本栖湖の湖畔にある。正面には富士山が見え、千円札の裏側に描かれていることで知られているエリアだったが、最近では人気アニメ「ゆるキャン△」に登場したことで知名度がさらにアップした。常識あるキャンパーが多い印象で、好感の持てる素敵なキャンプ場だ。
下部川の清流を眼下に眺めながらお蕎麦をいただける。注文を受けてから打つので時間はかかるが蕎麦の香りとサクサクの野菜の天ぷらが絶品だ。当日は快晴で気温も高かったため蕎麦を食べることしか頭になかったが、地元山梨の名物「ほうとう」もかなり評判が良いらしく次回は必ず注文すると心に刻んだ。
KLEAN KANTEEN/クリーンカンティーン
地球に優しくあるためのステンレスボトル
使い捨てのペットボトルを削減するために考案されたマルチなステンレス製のボトル。インスレートモデルの保温性能や耐久性は素晴らしく、キャップを含めたデザインもシンプルで秀逸。ビールやコーヒー好きには要チェックのブランドだ。
山岡 和正
雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。