前回のエンジンのパフォーマンスアップの解説に引き続き、
今回もジムニーの心臓部をアップグレードする方法をお伝えします。
簡単な方法から、マニアックで楽しいスープアップまで、いろいろご紹介していきましょう。
皆さんもご存じの通り、現代のクルマはコンピューターで動きが制御されています。これは、自動車の出す排気ガスや燃費、ドライビングフィールを向上させるためです。
クルマのコンピューターのことを「ECU(エンジン・コントロール・ユニット)」と言います。ECUはエアフロメーター(空気吸入量を測るセンサー)やスロットルポジションセンサー、O₂センサーなどからクルマの情報を集めて、その時に最適だと思われるエンジンの燃焼状態に制御しているのです。
例えば、標高の高い山道を走る時、平地よりも酸素が薄くなります。酸素は薄くなるのに、平地と同じ燃料をエンジン内に噴射してしまうと混合気が濃くなりすぎて、エンジンが吹けなくなってしまいます。そこでECUが酸素の量を判断して、インジェクションから噴射する燃料の量を自動的に減らし、点火タイミングも変えているのです。
とは言え、ECUが自由に判断してエンジンの燃焼を決めているわけではありません。ECUには、燃料を基本的にどのように噴射するかを決めた「データマップ(二次元曲線)」が書き込まれています。この燃料噴射のデータを基に、ECUが様々なセンサーからの情報を判断して、多少の“アレンジ”を加えるわけです。
よく自動車で「コンピューターチューン」という言葉を聞きますが、基本的にそれはこのデータマップを書き替えたECUに交換することを言います。サブコンピューターと言って、純正ECUに疑似信号を送って燃料噴射を変えるというものもありますが、主流は「フルコンピューター」という交換する方法です。
JB23ジムニーに限らず、純正のECUは排気ガス対策やエンジン保護にマージンを持たせているため、エンジンパフォーマンスがMAXになるまでのデータになっていません。ユーザーが物足りなさを感じたとしても、排気ガスが汚かったり、極端に燃費が悪かったり、エンジンが壊れてしまうよりはマシというわけです。
特にJB23型ジムニーのデータマップは、かなり緩めに書き込まれていると言われます。そのため、発進直後の吹け上がりが妙にタルかったり、吹け上がりにスムーズさがない…などと言った声をよく聞きます。
アピオの「TOTSUGEKI ECU 642」は、こうしたJB23型の弱点を解消するために造られた「フルコンピューター」です。アピオとECU専門家が十分に解析・検証を行い、K6A型エンジンに最も適切と考えるデータマップを作成しました。純正のデータマップは燃料の噴射がされない「谷」が多いのですが、TOTSUGEKI ECU 642はデータ上で谷を無くしてなだらかな曲線にし、スムーズでパワフル&トルクフルなエンジン特性にしています。
また「REVリミッター」「スピードリミッター」「スピードリミッター点火カット」「スピードリミッターブースト」を、純正よりも高めのマージン設定にしています。これにより、モータースポーツなどでエンジンのパフォーマンスを十分に引き出すことが可能となりました。
誰もが驚くほどフィーリングが変わるコンピューターチューン。その満足度も高い手法です。
ECUチューンの効果は抜群ですが、ドライブフィールを変えるなら「マフラーチューニング」という手も忘れてはなりません。マフラーとは、エンジンが燃焼して出す排気ガスを外に出すための排気系の一部です。排気系はいくつかの部位に分かれています。
まずエンジン直後を「エキゾーストマニホールド」と言い、「エキマニ」「タコ足」という別称もあります。ジムニーのエンジンは3気筒ですので、3つのシリンダーから排出されたガスをエキゾーストマニホールドで1本に集合させます。
その後、排気ガスを浄化する「キャタライザー(触媒)」を通り、サブサイレンサー(消音器)を持つ「センターパイプ」、「メインサイレンサー(テールエンド)」を通って車外へと出されるわけです。
さて排気系もまた、純正は排気ガスや騒音のことを考えて造られています。もちろんエンジンフィーリングのことも考慮していますが、やはり万人向けのセッティングで、誰でも運転しやすいフィーリングを目指して排気系もセッティングされているのです。
ではどのように排気系を変えるといいのでしょうか。排気ガスが各パーツを通る時、排気抵抗というものがあります。排気系は真っ直ぐ1本の管ではなく曲がっているので、そのカーブしている所を通る時に排気ガスが減速するわけです。川の水の流れと同じですね。
この排気抵抗をいかに無くすか、というのが排気系チューニングの目的です。排気がスムーズにできるということは、吸気もスムーズになり、エンジンの燃焼効率が良くなるというのが一般的な理論だからです。
ですが、排気抵抗がゼロになればいいというものでもありません。排気抵抗が無くなってしまうと逆にエンジンのトルクが無くなり、力のないスカスカのレスポンスになってしまうのです。
排気系チューニングは排気効率を減らしつつも、トルクアップをさせる必要があります。これは各部位の形状によって大きく変わるため、各パーツメーカーの腕の見せ所となっているわけです。
本格的な排気系チューニングだと、エキゾーストマニホールドやセンターパイプまで交換するのですが、第一段階としてはメインサイレンサー、いわゆるテールエンドを交換するだけでも十分な効果があります。
これを交換することでエンジンフィーリングが変わるだけでなく、排気音やリアの見た目も変えることができ、非常に満足度の高いチューニングが可能となります。
アピオでは「静香御前」や「アピオヨシムラマフラー」などをリリース。ふたつの違ったフィーリングとデザインで、パワー&トルクアップを目指すことが可能です。そろそろ愛車に飽きてきた…、フィーリングを改善したい…という方は、ぜひマフラーチューニングを考えてみては?
皆さんは、「スープアップ」という言葉をご存じでしょうか。ジムニー用パーツのカテゴリーとしても、よく使われています。基本的には「チューニング」と同意語です。ただ、エンジンのボアを上げたり、内部のパーツを交換したりと、エンジン本体をイジるチューニングとは区別して使われていることがほとんどです。
エンジンをイジらないチューニングとは、どういうことでしょう。前でも説明しましたが、自動車メーカーがクルマを設計する時、万人受けがするようにセッティングしていきます。静粛性だったり、燃費だったりを優先し、エンジン本来の持つポテンシャルを抑えていることがほとんです。これを「デチューン」と言います。
例えば、吸気系のパイプなどは吸気の際の騒音が出やすいため、音が出にくい形状を純正では採用しています。エアクリーナーボックスからエンジンに向かっているパイプや、インタークーラーからターボチャージャーに向かっているパイプなどです。これらの形状や材質などを適正なものに変えてあげることで、エンジンがパフォーマンスアップすることがほとんどです。
また熱対策も有効なチューニングのひとつです。エンジンルームの中は、熱をいかに逃がすかの戦いです。熱は様々な影響をエンジンに与えます。例えば、燃焼するための空気。空気は熱で膨張するため、エンジンルーム内がヒート状態になると、理論上はエンジンに入る空気密度が下がる=薄くなってしまいます。
JB23のエンジンには、これを防止するために「インタークーラー」が付いているわけですが、オフロードなどで全開状態が続くと十分とは言えません。さらに各パーツも熱膨張を起こし、様々な弊害が発生してしまいます。こうした影響の出るパーツを交換してやることで「熱ダレ」しにくいエンジンにすることができるのです。
ラジエターやインタークーラー、オイルクーラーをはじめ、様々な熱対策アイテムが巷では販売されているので、いろいろ組み合わせてみるのもいいかもしれません。ただし、必ずしも純正が悪いというわけではないので、ショップでよく相談してから装着を決めた方がいいでしょう。
<文/山崎友貴>