「ジムニーで虫を採ってきてください」というFielder編集長の言葉に、最初は「ジムニーでどこかに出かけて、昆虫採集をしてきてくれ」という意味だと思った。ふーん、夏休みだからファミリー企画か…と考えていたのだが、よくよくハナシを聞くとどうも意味が違うようだ。
「ジムニーを使って昆虫採集をせよ」という指令らしいのだ。ジムニーを使って??? ここでようやくあることが思い浮かんだ。昆虫マニアの世界では、『ライトトラップ』という方法を使って虫採りを行うのである。
ライトトラップというのは、フィールドに白い布などを壁のように張って、そこの強力な光を当てて昆虫を集めるという補虫方法のひとつだ。要は、編集長はこの光源としてジムニーを使えと言っていたのでる。
僕も「虫は明るい所に集まる習性がある」から、この方法で虫を集めると思っていたのだが、実は違っていた。夜行性の虫というのは夜間に飛ぶ時に、月や星の光を見ながら自分の姿勢を保って飛行しているのだという。うーん、まるで大航海時代の船のようである。
では、なんで光を当てた布に捕らわれてしまうのか。月や星は非常に遠い所にあるので、安定した角度で飛ぶことができる。ところが、人工の光は昆虫との距離が近すぎるため、ちょっとした角度変化で昆虫は光源が変わり混乱するのである。そして光の周りをグルグルと飛び、その内に近づき過ぎてしまうわけである。これが「飛んで火に入る夏の虫」のワケだ。
さて、問題は虫採りに行く場所だ。小学生以来、虫採りなんてしていないから、どこに“大物”がいるのかなんて見当がつかない。そこで頼るのは「マスメディア界のCIA局員」山岡巨匠である。山岡カメラマンは何だかとても顔が広く、「こんな人いないすかー」とか言うと、大抵は条件に合う人を知っている。歩くフェイスブックである。
昆虫採集のキーワードで、山岡ネットワークですぐにヒット。その人から秩父山中のある「民宿きりしま」をご紹介いただき、早速取材依頼。きりしまのご主人もとてもいい方で、無料でグラウンドを使っていいと言っていただいた。
ということで、僕らはある夏の夕方、ジムニーを走らせて秩父の山中へと向かったのである。