「ジムニーって軽自動車だし、クロカン4WDだから車中泊は向いてない」と思ってるあなた、それはちょっと間違い。今回は、コンパクトなジムニーで、でっかく快適なオートキャンプをするテクニックを伝授します!
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最近の軽自動車、とくにトールワゴンタイプのクルマでは珍しくないが、フルフラットシートは車中泊時に実に便利な機能だ。「ええ、車中泊なんてするの?」という方もいるかもしれない。だが車中泊できれば、釣りや登山などで前入りして泊まれるし、そうなれば朝早くから1日を有意義に使うことができる。
深夜通してのロングドライブの時も、フルフラットシートなら脚を伸ばしてゆったりと寝ることが可能だ。単にシートを倒して寝るのとでは、疲労の回復度も全然ちがう。
で、ジムニーなのだが、実は同車にはフルフラットシート機能が標準で付いているのだ。①前後シートのヘッドレストを外して、②後席の座面を外し、③前席をちょっとズラせば、フラットにすることができる。1人の時なら、助手席だけ倒しておけば起きてすぐにクルマで移動するなんて使い方も可能なのだ。
ただし、この時にちょっと気になるところが出てくる。それは、荷室だ。
せっかくシートの部分はフラットなのに、荷室の部分のみ1段低くなってしまうのだ。この面を後席の面とツライチにできたら、もっと手足を伸ばせてできるにちがいない…。そう考えたアピオの賢いスタッフが作ったのが「荷室フラットデッキ・タイプ3」。ボルトオンで誰でも簡単に付けられる。不器用な僕でも、横で山岡巨匠に“付け方が違う”と文句言われながら作業して、15分で装着することができた。
なんだか車内の見た目がメカニカルになる上に、荷室まで車中泊空間にすることできるのだ。僕も山岡巨匠もデカいので、このアイテムがあれば頭部が“半落ち”といった状態で寝なくても済む。
ちなみにこのフラットデッキは金具ひとつで跳ね上げることが可能で、その下はウェスやら何やらと小物を収納しておける。イザとなったら、スタックした時に使うサンドラダー代わりにもなりそうだ(そういう使い方はアピオは推奨していないと思うのですが)。
さて、これで安眠安眠と思いきや、まだちょっと問題があったりする。
大抵のクルマでこういう現象が起きるのだが、フルフラットと言っても、家のベッドや布団のように平面ではないのだ。シートは運転する時に身体にフィットするように設計されているので、倒すと弧のような形になってしまう。“スタイリー”とかなら背骨が伸びて気持ちいいのだが、寝る時は身体が反って辛い。
そこで、このシートの凹凸をいかに消すかというのが、安眠のポイントになる。一番いいのは、ポンプで膨らますようなエアマットを車内に展開することだ。これなら凹凸なんてまるで関係なくなる。だが、ジムニーの車内サイズに合うエアマットというのがなかなかないし、膨らますのもしまうのも大変である。
一番現実的なのが、キャンプ用のマット。これなら持っていくのに大した邪魔にならないし、展開もしまうのもラクだ。キャンプ用マットにはクローズドセルタイプとインフレータータイプの2種類が昨今ではメインだ。これ以外にも、昔ながらクルクル丸める銀紙マットがある。
アコーデオン式のクローズドセルタイプのマットが登場してからは、銀紙マットは日陰の身になってしまった。EVA製で、軽量かつソフト、しかも小さく畳めるという利点を持つため、昨今の登山家の間ではベーシックなアイテムになっている。
一方、インフレータータイプは、マットに空気を入れて使うため、さらに快適で断熱性が高い。こちらはコンパクトになるという点で、前出のマットよりも劣るが、まあクルマで持ち運ぶことを前提にすれば、重さ、大きさとも十分。
こうしたマットを使えば、かなりシートの凹凸を解消することができる。もうひとつ、僕がオススメしたいアイテムは、キャンプ用の空気枕だ。車内では衣服などを畳んで枕にしている人が多いが、空気枕があることでさらに快適な睡眠が得られる。
頭の高さを調整できれば、多少シートの凹凸があっても我慢することができるし、背中の痛みを和らげることができる。キャンプ用の空気枕は1000円前後とリーズナブルなので、1個、ジムニーの中に常備しておきたい。
これに加え、フロントガラスの日よけシートや吸盤で張る日よけも用意しておきたい。街灯などの光を遮ることができるし、車内のプライバシーも他所は守ることができるだろう。こちらは100円ショップで売っているので、すべての窓を埋めても1000円もしないはず。
車中泊をする時に、意外と問題となるのが「荷物をどこに置くか」ということ。まあ大きな荷物はバッグにでも入れて運転席の足元にでも置いておけばいいのだが、携帯電話とかメガネとか様々な小物をきちんと整理しておくのは意外と大変だ。そこでオススメしたいアピオグッズが2つ。
まず最初のアイテムは、12月に発売予定の「タクティカルシートジャケット(1万7500円/枚・税別」。見ての通り、特殊部隊などが着用している軍用のベストを摸したシートカバー。純正シートを汚れから守りドレスアップをする、だけの商品ではありません。なんと軍用と同じMOLEシステムを採用し、様々なものを取り付けることができるのだ。
MOLEシステムとは軍の装備で広く使われているもので、同規格サイズのベルクロベルトによって、ポーチなどをベストに装着できるというもの。これをシートジャケットに使っているのだ。
これを使えば、車内を雑然とさせることなく、スマートに様々なアイテムをシート後ろに付けることができる。素材も日本の某防衛組織などで使っているものを採用しているので、リアルで丈夫。ミリタリーファンでなくとも、思わず欲しくなる逸品だ。
もうひとつは、YKKのスナッドという商品を活用したシステムだ。スナッドというのは、樹脂製の大きなスナップホックのことで、この商品はスナッドのメス側に両面テープ、オス側にはナイロンベルトが付いている。
メス側を車内のどこかに貼り付ければ、ベルトをホックで固定できるというモノ。どうやって使うかというと、例えばポーチやボトル、小袋などをベルトで固定すれば、車内の壁などに物を付けておくことができる。
このスナッドベルトシステムとタクティカルジャケットシートの両方を使えば、車内の整理整頓はバッチリ。例えば車内で寝ながら「耳が掻きたいなぁ」と思ったら、スナッドで固定したポーチからすかさず綿棒! メガネを外しても、シートジャケットに付けておけば、翌朝どこに置いたか分からなくなる心配なし!
ちなみにシートジャケットは、両方のシートを倒したら下になってしまうので悪しからず。
さて上の見出しのようなことになぜコダワるかというと、オートキャンプをする場合にクルマをタープに下に駐めると、就寝スペースである車内と、リングスペースである外との往き来がラクになるからだ。
一般的には大きなタープを持って、それを建てれば問題ないのだろうが、ジムニー乗りとしてはスマートではない。またサイドオーニングを付けるのもの大げさだ。登山やトレッキングなどに使うウルトラライトなタープを1枚用意しておき、それを場所に合わせてサッと使うのが、イマドキ風でスタイリッシュ。
ウルトラライトタープは大抵、重量を抑えるためにポールが付属していない。持っているトレッキングポールを代用するものが、ほとんどだ。しかし、ポールなんて落ちてる樹の枝などを代用すればどうにかなる。問題は、どうやってクルマとタープを合体させるかなのだ。
そこで揃えたアイテムが、カラビナ、S字フック、ネジ調整付きフック、吸盤付きフック、磁石付きフックである。お約束通り「S字フック〜」とドラえもん調で言いながら袋から取り出し、富士山から吹き下ろす乾いた風のような山岡巨匠の失笑を買ったところで、各アイテムの使い方を説明しよう。
クルマとタープを合体させるには、タープでクルマの一部分を覆ってやればいいのだが、小さめのタープではあまりクルマにかけてしまうと、居住空間がなくなってしまう。となると考えられるのは、タープのコードをボディで固定するということだ。そうすれば、居住空間が広く確保できるし、雨天時にドアを開けた時に濡れずに中に入ることができる。
さて、前述のグッズを使って固定する実験を行ってみた。まず出入りするドアと反対のドアからコードを入れて、グリップハンドルを使ってカラビナやS字フックで固定する方法を試した。カラビナは大きさによっては通らないサイズがあるので、ちょっと面倒だ。価格が高いのも難点だ。クライミングをするユーザーならいいかもしれないが、S字フックのほうが自由度があって使いやすい。
ただし、どちらを使うにしても最終的には長さ調整をしなければならない。で、ここで根本的なことに気づいたのだが、車内のグリップハンドルを使うなら、直接ハンドルに結び付ければいいわけである。誌面には書かなかったが、これはかなり盲点だった…。
さてボディに固定する場合に便利なのは、吸盤付きフックと磁石付きフック。巨匠と一緒にいろいろ試したが、結局は両方を使うのが一番がっちり固定できるという結論に達した。
吸盤はちょっとでも面に凹凸があるとテンションが抜けるため、やはりガラスで使うのが一番いい。ジムニーの場合はガラス面が広いので、なかなか有効なアイテムだ。ボディで固定する場合は、やはい磁石付きフック。ただし、安くて力の弱い磁石ではダメ。風が吹くと外れたり動いたりする。手では簡単に外せない強力磁石付きのものが売っているので、迷わずこれを選びたい。
これをそれぞれ2つずつ用意しておけば、大抵のタープは合体できる。樹の多い場所なら、もう一方は樹木に固定すればいいし、樹がない場合はペグを使えばいいだろう。ペグが打てないようなアスファルトの場所なら、飲料水などを入れる水タンクをいっぱいにして重りにして、その取手にコードを結べば、台風でもない限りは飛ばされない。
重りを使う場合は、風が吹いた時のリスクヘッジが必要だ。風の力は想像以上に強いため、重りごと飛ばされる場合がある。十分に注意していただきたい。
さて今回のロケ中、巨匠は取材用に買うザックのことが気になって仕方がない様子。僕が撮影用のアイテムを詰め込んで持っていた愛用のザックを見て、「俺もこれにする!」とネットショッピングをし始めた。「おーい、写真撮ってくださいよー」と言う僕も放置で。
さて、僕は趣味が登山なので、日帰り用、宿泊用のザックをそれぞれ持っている。今後は2泊以上のために、70ℓ以上のザックも購入する予定だ。
ザックの主用途がタウン用と言う人ならあまり関係はないと思うが、ある程度荷物を入れて、長時間背負うという人には、ザックに様々なスペックを求めるようになってくる。
まずは構造だ。アウトドアでは、様々なモノを機能的にしまえることが必要になる。しかも行動中に、それがサッと出せなければ意味がない。つまりポケットがたくさん付いているだけではだめで、どうアプローチできるかが大切になる。
重量も大切なファクターだ。ザック自体が重いと、大した荷物を持っていなくとも疲れてしまう。ただし、重さと快適性はトレードオフの関係にある。これは後で説明しよう。
使っている生地が丈夫かも見逃せないポイントだ。外ではザックを地面に置くことが当たり前。そんな時、デリケートな生地だと、すぐに傷が付いて見た目が悪い。また耐久性も心配だ。
最後に、身体へのフィット感。これが一番大切で、いいザックというのは子泣きじじいのように、背中にぴったりとくっついてくる。激しい動きをしようと、背中で振られることが少ない。
昨今では人間工学を駆使した設計デザインが当たり前になって、フィット感が高いというのが多くのザックの謳い文句になっている。しかしだ。僕はこれまで多くのメーカーのザックを試してきたが、なかなか難しいのがフィット感。メーカーサイドが言うほど、良くないものが多い。
これまで使ったブランドは、アークテリクス、カリマー、グレゴリー、ロウアルパイン、オスプレー、ブラックダイヤモンドなどだが、快適なザックを選ぶポイントが見えてきた。まずショルダーとヒップベルトの厚み。ベルトに厚いウレタンが入っていて、クッション性の高いものは、重いモノを持った時でも付かれにくい。特にヒップベルトがしっかり出来ているかをチェックをしたい。
背中が当たる部分はできればメッシュでできていて、通気性が高いものが望ましい。ただし、こうしたメッシュ構造のものはフレームが入っていることが多く、その分重量が重くなってしまう。
ザックの中にはクライミングを考慮した軽量のものがあるが、こうしたモデルはベルトや本体生地を軽くする以外に軽量化ができないため、それらを犠牲にする。つまり軽量なザックは、身体へのフィット性や快適性が低い傾向にある。
最後にポケットだが、上や横、下からアプローチできるザックが使いやすい。アウトドアでは携行するモノの使用頻度が異なるものだが、どんなモノでもすぐに取り出せるということが結構重要だ。だから、様々な方向からアプローチできるのが望ましいのだ。
いま、一番気に入っているザックは、巨匠も購入した「オスプレー・アトモスAG」だ。以前はオスプレーというブランドは、いかにも意識高い系のアウトドアズマンたちが使っている感じで嫌いだったが、試しに使ってみると実に勝手がいい。人はアウトドアでどのようにザックを使うのか、というフィールドテストが十分にできている。
デザインは好き好きだから何とも言えないが、身体へのフィット感は抜群だ。とくにAGという記号がついたザックは、背中の長さが変えられ、ベルトのウレタンもビックリする厚い。荷物が重くなっても、ウレタンが緩衝材になって当たる部分の痛みを感じさせず、吸い付くようにフィットする。
長く背負うという使い方なら、ザックは購入時に必ず実物を試したほうがいい。ザックが身体に合わないと、肩などの痛みで披露を増幅させてしまうからだ。また丈夫なザックは命を助けてくれる。僕は八ヶ岳で背中から6mも落ちたのだが、ザックがあったお陰で身体へのダメージがなかった。ザックに小さな穴は開いたが…。
皆さんも自分に合ったいいザックを巡り会って、楽しいアウトドアライフをおくってください。
<文/山崎友貴、写真/山岡和正、APIO>