森は、春を迎える準備をしていた。
きっと今頃、熊もフキノトウを探しているのだろう。
溶け始めた森の雪が名残惜しいが、早く春の森を旅したい。
皆様
いつもご覧いただきありがとうございます。
この度、瀬尾拓慶初のオリジナル音源 CD付き写真集「Dear Silence 静寂の森」を出版する運びとなりました。
それに伴い、出版記念写真展を開催いたします。
黒蔵(ジムニーシエラ)と共に森で過ごし撮影した、美しい光の写真をご覧頂けます。
下記が概要、詳細です。
深い森の中、光を追い求めて撮影したカラー作品約50点を展示。
写真・空間デザイン・文章・ピアノによる自作曲で構成された美しい森の写真展です。
写真展開催中、写真集出版記念として、サイン入り写真集の販売や、作家自身によるピアノの即興演奏も行います。
写真集出版記念写真展「静寂の森」
リコーイメージングスクエア新宿 ギャラリーI&II
〒163-0690 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービルMB(中地下1階)MAP
℡03(3348)2941
・開催日時
2018年4月11日(水)-4月23日(月) 定休日(火)
10:30~18:30(最終日16:00終了)
・ギャラリートーク
4月14日(土)・4月15日(日)・4月21日(土)・4月22日(日)
各日とも13:00〜 / 16:00〜(参加無料 予約不要)
トーク開始10分前より、即興ピアノ演奏を行います。
・瀬尾拓慶ホームページ
→ takumichi-seo.com
・リコーイメージングスクエア新宿ホームページ
→ http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/community/squareshinjuku/2018/04/20180411.html
・3/20日発売のカメラ雑誌「フォトコン」にて、7ページの特集(p.156-p.162)と写真展情報(p.29)を掲載していただきました。
フォトコンホームページ
→ http://www.photo-con.com/
ついにこの季節の到来。
暖かく、時に寒い。
そして花粉が漂う季節。
黒蔵にも、黄色く忌々しい粉がこびりついていた。
この時期はなかなか旅に出れず、森を思い出して感慨にふける。
冬の終わり前、森は新しい季節のために準備を始めていた。
まだ少し、春というには早い季節だ。
木に積もっていたはずの雪はいつの間にか消え、涼やかな風が木々の間を吹き抜けた。
林道にはまだ雪が残っており、ゆっくりと注意しながら進んでゆく。
美しい光を眺めていると、遠目に狐の走り去る姿を見つけた。
その姿は、精悍さに溢れていた。
そういえば、まだ狐をしっかり撮ったことがない。
鳴き声やその生態すらも知らないが、ここ最近は狐の美しさに触れる機会が増えてきている。
山奥でくらすその姿を、美しい光とともに切り取りたいという欲が出てくる。
頭上を飛んでゆくムササビも、親とはぐれてさまよう子鹿も。
駆け抜けてゆく兎に、餌を探すのに夢中でこちらに気づかない穴熊も。
彼らをもっと撮ってみたい。
朝まずめの鳥の声、光を浴びて輝く木々。
荒れ果てている林道も愛おしい。
森へ行きたいという衝動が押し寄せてくる。
しかし、そんな愛おしい森でも、決して嬉しくない出来事が過去にはあった。
森の中での恐怖体験の一つ。
とある暖かい日の夜。
私はいつものように、相棒の黒蔵(ジムニーシエラ)の中で睡眠をとっていた。
森の中で寝るときは周りを気にすることもなく、車体に目隠しもつけないで寝ている。
すると「コンコンコンッ」とふいに、窓を叩くような音がした。
睡眠から覚醒しかけ、ふと目を開けると窓の外に人影が。
夜の森の中で顔はよく見えないが、男性のようだ。
理解が追いつかず、恐怖がこみ上げてくる。
換気のために少しだけ隙間が開いている窓から問いかけられた。
「ねえ、何してるの?」
鈍く、ゆっくりとした声。
とっさに自分は写真家で、森の写真を撮っていることを伝える。
「そうなんだ。ドア開けて、話そうよ。」
ここは森の中、地元の人間でもこんな夜中にここにいるはずはない。
私はパニックになりながらも「さすがに怖いので」と拒否の意を示した。
しばらくの間を置いて、その人物は何かをつぶやいてガサガサと何処かへ行ってしまった。
時間を確認すると、夜中の三時過ぎ。
森のこんな深い場所で?
理解しきれない、疑問や恐怖を帯びた感情が行き交う。
ここから移動するべきなのか、しかし夜中の森を移動するわけにもいかない。
その日は眠ることができず、窓に目隠しを着けて明け方まで図鑑を読んでいた。
余談だが、朝起きると鹿が車の真横にいたこともあった。
至近距離で目が合い、お互いびっくり。
鹿は慌てて逃げて行った。