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森の光と黒蔵の旅 / 写真家・瀬尾拓慶
VOL.007
黒蔵と未知の旅
黒蔵と未知の旅

どれだけこの世界は面白いのだろう。
未だ見た事のない、一本先の道へ入って行く高揚感。
知り尽くす事など出来るわけがない。
降り注ぐ光はいつも、そんな旅を美しく演出してくれる。

未知と危険と喜びと

落石により歪んだガードレールと、奥は土砂崩れ

森へ行く度に発見がある。
以前訪れた時には気がつかなかったのか、もしくは森の様子が変わったのか。
一週間ずれただけで驚くほど変化するときもある。
未知が更新されて行くのだ。
だからこそ、いつも通っている林道だからと侮ると痛い目にもあってしまう。
ここ最近の台風などの被害で土砂崩れなどが目立っているが、林道へ赴く際に最も警戒しなければならない事の一つがまさにこれである。
落石一つで命を落としてしまうのに、土砂崩れなど耐えられるものだろうか。
わずかな変化にも警戒を、そして天気の状況や土の状態を見分ける知識が必要がある。
土地が乾きすぎていても崩れやすい、なかなか難しい。
兎にも角にも、未知を楽しむ為には安全対策をしっかりせねばとここしばらくのニュースから思い直すばかりだ。

凛々しい黒蔵

ニュースといえば、最近気になっている事がある。
新型ジムニーの発売だ。
実に興味をそそる、乗ってみたいという欲求が生まれる。
しかしながら、現在私が乗っているジムニーはすでにアピオカスタムになっている為、林道での走破性は最高なのだ。
一つ一つ必要だと思ったパーツをつけていくというのはなんとも楽しい。
確かに新型になったジムニーがすごく気になるところではあるが、私は黒蔵の限界に挑戦してみようと思っている。
なにより、黒蔵のあのボディーには愛着がある。
アピオカスタムによりフロントバンパーや足回りがグレードアップされ、安定した運転が出来る為非常に満足している。
だから「頼りにしているよ」と黒蔵に伝え、これからも限界まで森を一緒に旅する約束をした。

こっちを見る熊

そんな頼りになる黒蔵はいつも林道をしっかり走破してくれる。
新しい道であっても、新たに赴く森であっても、まずは黒蔵と一緒に入って行く。
車内にいるという安心感は写真を撮影する上でもとても大切な事なのだ。
もちろん徒歩で森の中に入って行くときも頻繁にあるが、私は決して危険を冒したいわけではない。
可能であれば黒蔵にいつでも乗り込める状況にしておきたいのだ。
森には多くの動物が生息している。
日本の湿度を帯びた森は美しく、野生動物も豊富だ。
森の光の中で生きている彼らの姿は美しく、力強い。
森に人間が入った時から、多分彼らはこちらの存在を察知するのだろう。
ほとんどは彼らの方から避けてくれるが、予想しない出会いも時にはある。
車でいつものように林道を進んで行くと、前方に黒い何かがいた。
まだ成獣になったばかりだろうか。
真っ黒い獣、ツキノワグマが目の前にいた。
警戒心の強い彼らは本来であれば真っ先に逃げるのだが、この個体はそうではなかった。
10分ほどであろうか、しばらくの間目の前でうろついていた。
これが徒歩であったならばどれだけ危険だろうか。
写真は近づかず、望遠で撮影。
ゆっくりと車を進めながら様子を伺う。
野生動物との接触は御法度、近づきすぎてはいけない。
森は未知、自分たちの常識が通用しない危険が多々存在している。
それと同時に、多くの美しい光景や喜びが落ちているワンダーランドのような世界でもある。

夕暮れと黒蔵

夕方になり、日が沈んでゆく。
辺りには深い霧が出てきた。
何かの歩く音、冷えた冷たい空気。
美しい青い世界が広がってゆく。
ヘッドランプの先に何か生き物が映るのではないかとドキドキしながらゆっくりと林道を進んでゆく。
ジムニーのシートに座った瞬間、未知なる冒険への欲求が湧いてくる。
自分の知らない世界、更なる美しい森を求めてアクセルを踏み込む。
この瞬間が、心の底から楽しくて仕方がないのだ。
さあ、次はどこの森へ行こうか。

林道を進む黒蔵
緑生い茂る、奥深い林道
怪しいキノコ、食べたくはない
更なる冒険へ
黒蔵と霧の夜